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初めての小説です。
名前を決めるのが苦手で、
適当に書きはじめたら、役に名前が合っていない感が…。
3歳の頃、流行り病に罹った私は長く高熱が続いた。
その最中、私の中に前世の記憶が甦った。全てではない。ただそれから、何かの切欠でふと思い出す。引き出しの中からずっと無くしていたものが見つかる時みたいに。
私の今の名前はキャサリン・ドーソン。ドーソン侯爵家の長女、13歳である。
今日は王太子殿下の婚約者候補としてお茶会に招かれた。初めての顔合わせだ。
正直、王太子妃、そしていずれは王妃なんて私には無理だと思うけど、隣国との均衡など様々な事情から、国内から花嫁を迎える事になったらしい。
侯爵家という高位貴族に生まれ、物心がつく頃から王妃になるに相応しい教養を、と何人もの先生について勉強してきた。
私は身分、年齢からも最有力候補なのだ。
王太子が誰か他の候補を強く希望するか、よっぽど嫌われるかしなければ、私が選ばれる事になるだろう。
そう、仕方がないことで、私には選択権も拒否権もない。
この世界は、私の前世の記憶での中世ヨーロッパに近いのではないかと思う。地球にはなかった国。
これは所謂転生もの。なのだろう。
前世では私も異世界トリップとか転生とか悪役令嬢転生とか沢山読んだ。でもそれはお話の世界で現実にはあり得ない。私も色々考えた。
元の世界で眠っている私の夢じゃないか?とか。
でも、あの流行り病から今まで生活して生きてきて、やはりここは夢なんかじゃない。現実なんだってわかった。
そういえば、ドレスはコルセットで腰をキュッと絞ってふんわり広がったものが主流。私はハイウエストで胸の下からふわりとしたエンパイアドレスに憧れてたので残念だ。
「キャサリン、着いたぞ」
考え事をしているうちに王宮に着いたようだ。
お父様に続いて馬車を降りる。
ほえーと口を開けて見上げたくなるようなキラキラした天井の廊下を進み中庭に来ると、既に招待客が集まっている。今日は候補者だけのお茶会なので人数は多くない。
お父様に気付いた人が何人か挨拶に来たので話していると、王宮から王妃様が歩いてくる。後ろにいる男の子が王太子様だろう。
頭を下げて待っていると、美しくそして優しい大人の女性の声がした。
「皆様、今日はようこそ。どうぞくつろいで、ゆっくりしていってくださいね。」
その声に皆それぞれ雑談に入り、王妃様へ挨拶に向かう。上位貴族からなので、今日は私達からだ。
お父様に続いて私も挨拶をした。
「本日はお招き下さりありがとうございます。
キャサリンと申します。」
「まあ、可愛らしいわね。顔を上げて。息子を紹介するわ。ジェフリーよ。」
顔を上げて、初めて王太子様の顔を間近で見る。
さらさらの金髪に碧眼、正に王子様!という容姿にどこか既視感を覚える。頭がチリチリと傷んだ。
挨拶を終えてテーブルに着くとお父様がこっそりと、聞いてきた。
「どうしたんだケイト?体調でも悪いのかい?」
眉間に皺を作っていたらしい。失敗失敗。
「ごめんなさい、お父様。少し緊張しただけなの。王妃様も王太子様もとても美しい方なのね。」
「そうだね。だがお前も美しいよ。皆が挨拶を終えたら、あちらのテーブルで、子供たちだけでのお茶会となる。父様たちはこのテーブルにいるから、緊張せずに楽しんで来なさい。」
お父様の言葉に頷きながら、私はまた、記憶の引き出しが空くのを感じた。
王太子ジェフリー、キャサリン侯爵令嬢、15歳から入学するダリス王国学園・・・まさか。
転生したことをやっと受け入れたのに。まさかここが乙女ゲームの世界で、私は悪役令嬢とか、そんなまさか、でしょう!?
私は意識が遠のくのを感じた。