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人生とは死への過程を指す  作者: ray
一章 加減速魔法の使い手
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一章エピローグ

 Side Sakamoto


 畜生、畜生。何なんだあいつは!!

 もともと屑じゃないか、ただちょっと才能があっただけのゴミじゃないか!!

 俺のほうが才能はあった。千賀子もそういったし、あいつを満足させてやった。なのに! どうしてあいつは準優勝なんていう結果を残し、俺は奴に敗れて四位……神谷のくそ野郎にも結果で負けた!!

 ありえない。俺の実力はもっと上だ! すべてはあいつが悪い。あいつさえいなければ、今頃俺は、俺は!!!

 たった二か月だぞ!? もともと単純加速しか使えないゴミ屑だぞ!! 鬼頭教官が付いたところでそんな都合よく事が運ぶはずがない!! そうだ、薬だ! 奴は薬をやってやがったんだ。馬鹿な奴め、このことを告発すれば、奴に居場所はもうない。奴の人生はめちゃくちゃだ!! いい気味だ。裏切り者の子供はやはりゴミ屑だ!! さっさと俺の目の前から消えてしまえ!!


 どういうことだ! 薬の反応は出なかっただと!? 馬鹿なことがあるか、金か? 金で買収したのか!? 醜い真似はやめろ? っは、あんなゴミが俺より優秀なはずがあるか? ないだろう? ないんだよ!! そうだ、ないんだ。だからあの結果は何かの間違いなんだ。はは、せいぜい偶然手に入れた勝利を誇ればいいさ。


 千賀子の奴、俺を馬鹿にしやがって、まあいい、あんなブスは俺にふさわしくなかった。そうだな。どうせなら智代か、明里がいいな。よし、ちょっと声をかけてやるか……。


 調子こきやがって!! 俺が雑魚でたかが知れているだと!! 川平の奴のほうが未来に望みがあるだと!? ふざけるな、あいつは薬を使って俺に勝ったやつだ。卑怯者だ!! 直接戦ったお前らなら十分わかっているだろう!? 第一おかしいんだよ、何段も加速を重ねてあんなに正確な動きなんて人間に出来るはずないだろう!!! 薬を使っていたとしか考えられない!! それが奴の実力? いい加減にしろ!! 今まで単純加速しか使えなかったゴミが、多段加速に思考が追いつくはずがねえだろう!!!


 はは、もういい。だったら思い知らせてやる。俺の力を、奴が薬を使っていたという決定的な証拠をな!!!



 Side Shohta


「どうした、今更呼び出して」

 俺は、対抗戦の翌日に中山千賀子に呼び出されていた。

「―――ごめんなさい。離れてみてよくわかったの。あなたじゃないと私はダメ。もう一度私にチャンスをくれない?」

 ―――来るかもしれないと思っていた言葉だった。ゆえに、返答は当然用意してある。

「いやだね。俺はすでにお前に対して最後の情けはした。俺の中で、お前との話はけりがついている」

 あの日の中庭で、俺はこいつが何を言って来ようと断ると決めていたのだから。

「最後の情けって……いったい何よ」

 語気が強くなっている。下手な芝居だな。

「俺は、二か月前に夕食を食いに行く途中でお前と酒井が中庭に向かうのを見た」

 目を見開く。わかりやすい反応だ。

「何をするのかと多少気になってな。先回りして校舎の上からなんとなしに中庭を覗いてみたらお前と酒井が……」

「―――もういい、そうね。その通りだわ」

 そういって悪い笑みを浮かべていった。

「ここで私が襲われそうになったと大声を出したらどうなるんでしょうね」

 あまりにも稚拙な脅しに思わず笑ってしまった。

「なによ、どうなると思ってるの?」

「―――なに、馬鹿な生徒が大嘘で他人を陥れようとした事実が出るだけさ」

 そういって笑いがこらえきれなくなってくる。

「っく……。

 ―――キャー!! 助けて!! 犯される!!!」

 本当に叫んだ。馬鹿な奴だな。俺がまさか一人でここに来ると思うとは……。

「―――はあ、見ていてばかばかしいわ。そろそろこの茶番を終わらせるわよ」

 そういって物陰から明里が出てきた。

「―――な、あなた…聞いて……」

「当たり前でしょう。むしろ今更こいつがあなたを信用してこんなところまで来ると思う?」

 まあ、実際のところ信用せずに明かりに事情を話してみていてもらったわけだが。

「どうした?」

 現れたのは鬼頭教官。ここでこの人が現れるなんて正直俺も思っていなかった。

「―――こ、こいつが私のことを犯そうとしてきたのよ!!」

 往生際が悪い。俺と明里を共犯扱いしたいのだろうか?

「あー、中山よ……それは本当に起きたことなんだな。嘘ではないな」

 だが、鬼頭教官の俺への信頼は最底辺だ。そう、一か月前までならそうだった。

「そうよ! しかも大森さんまでこいつをかばって……」

「だがな、俺はお前がこいつを呼び出しているところを見ているし、何よりこいつはやってないからな……」

「な、なんでそんな風にこいつをかばうのよ!!」

「いや、こう……一部始終を記録水晶で流しているのが視界に入ってな……信用とかそういう問題以前なんだよな」

 そう、証言ではなく、記録という物証を残す。しかもこの記録水晶の映像は改竄できないことで有名だ。


『ここで私が襲われそうになったと大声を出したらどうなるんでしょうね』

 思わず笑い出す俺の姿。

『なによ、どうなると思ってるの?』

『―――なに、馬鹿な生徒が大嘘で他人を陥れようとした事実が出るだけさ』

 笑いがこらえきれずにくつくつと笑っている俺の姿。妙にアップになっているが気にしない。

『っく……。

 ―――キャー!! 助けて!! 犯される!!!』

 そういってわめきだす中山の姿が映し出される。


「―――これ以上ない証拠だな」

 多分だが呼び出されてからの一部始終がおさめられていることだろう。

「はぁ、面倒なことをしてくれる。来い、中山。しっかりとお灸をすえてやる」

「この、放しなさいよ!」

 そういって鬼頭教官が水晶を明里からもらって去って行った。

「―――何ともあっけなかったな」

「そうね、だから去年『彼女はあなたの魔術特性にしか興味ないからやめときなさい』って言ったのに」

 思わず少し笑ってしまう。

「いや、ほとんど同じようなことを悟志に言われたなと思い出してね」

「つまりそこまであなたが間抜けだったってことでしょう。いつか結婚詐欺とかにあうわよ」

 そういわれて、少し頭をかく。

「うーん、今回で懲りたから明里のお墨付きをもらってからにしようかな?

 ―――いっそのこと明里と……は忠彦さんに叩き潰されるな。やめておこう」

「そうしておきなさい。まだ好感度が足らないから」

 こういう話題が通用するところに本当に安心感を覚える。

「そりゃあ残念。今回は助かったよ。今度なんか礼をする」

「ん、期待しないで待ってるわ」

 そういって俺は男子寮に、明里は女子寮に戻って行った。



 これで一章の終わりです。とりあえずはひと段落といったところでしょうか?

 二章の初めに一章の簡単なまとめを掲示して少し休みます。

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