Chapter7 第二幕の閉演
「第二幕の開幕だっ!」
「『黒獅子』キリュウ……。まさか本当にいるなんて」
とあるプレイヤーの一人の言葉に少し苛立ち、顔を顰めてしまうが正体を隠して生活してきたのは俺の方なのであんまり深く突っ込まないようにする。
そんな男性プレイヤーよりも警戒しておかなければいけない相手がいる。
ミラマッドネス――。
これまでは少量ずつだが確実にダメージを与え、遂にはレッドゾーンに突入するまでにダメージを蓄積させることは成功させたのだが、これからはどうなるかわからない。
ミラマッドネスからは俺と似たような匂いがするんだ。
生活感が同じとかそういう類の匂いじゃなくて、体を使って成長していく、そんな行き当たりばったりな雰囲気がこいつにはある。
「なんか、嫌な予感がするな。アーサー、そいつら守っておいてくれよ。『鉄壁』の名に恥じないようにな」
「うるせぇよ。そっちこそ、とっととケリつけてしまえ」
トラスト騎士団の鉄壁と言えば、アーサーの名しか出て来ないぐらいにこいつは有名だ。
エリュシオン・オンラインきっての防衛。おまけに愛用している武器が槍なので盾との併用も出来る。武器の相性的な意味でもスキル的な意味でも最良株ってとこだな。
猛攻撃を生業とするモンスターとの戦闘では、こいつの防御力と防衛センスが頼もしく思えるぐらい映えるよ。
対して俺は、そんなに強くはないと自負しているプレイヤーだが、アーサーとは正反対のスキルと武器構成にしている。
『覇者のプライド』によって強化された身体能力、盾が付いていない片手剣。とどう考えても防御に向かないセットだ。
「……どうして気づかなかったんだよ。俺は」
「どうしたんだ?」
アーサーとの会話を終えたころ、後ろの方で男性プレイヤーが対話をしているのがわかった。
「白いフードで隠している間もおかしいとは思っていたんだよ」
「おい、だから何がおかしかったんだって……」
「盾無しの片手剣が、だよ。そんな武器構成、普通なら不可能なんだ」
自分から正体を晒しておいてよかった。あのまま戦っていたとしても、いずれにせよ正体がバレるのであれば本気を出して戦った方が悔いもないし、すっきりするもんな。
「盾無しの片手剣、黒のコート。で覚えてしまっていたからだろうが、少し勿体ないことをした気分だ」
おそらく盾無しの片手剣なんて愛用しているのは俺くらいだろうな。
大抵の片手剣は盾がセットで付いていることが絶対的条件。片手剣というジャンルは初心者にオススメする唯一の武器だ。なので、どんな状況でも平均的にこなせるよう設定されている。盾が付いているのも急な攻撃に対処出来るようにだ。
それなのに俺の片手剣には盾が付属されていない。ただし、これはゲームの不具合などではない。 俺に元から付いていた『エネルギー換算』。これを使った構成になっている。
エリュシオン・オンラインの中で幾度の困難を俺は片手剣一筋で越えてきた。片手剣には向いていないダンジョンも中にはあったが、片手剣一本でクリアして行った。それでも、俺は盾を一度も使わなかったんだ。
敵の攻撃を弾くのはすべて剣を用いた防御方法。
初めはそんな行為が可能なのか心配していたが、杞憂に終わり簡単に成し遂げてしまった。
そんなことが出来てしまうと、盾の価値が完全になくなってしまう。そこで思いついたのが『エネルギー換算』スキルを使った効率的な装備構成だ。
片手剣の盾を排除し、その盾に使う分のエネルギーを剣に回す。
すると、盾を装備することで得られる防御力はなくなってしまうが、その力の要領分を攻撃力に回せるという作戦だ。
「さぁて、火力厨の実力を舐めんなよ」
俺の言葉に返事するように遠吠えをするミラマッドネスだが、様子が変だった。
前触れもなくボス部屋の壁を殴り続けたのだ。自分の大きな手からは血が出ているのにも関わらず、同じ場所を殴り続ける。
なんて言えば適切なのか、わからないのだが……。
(暴走状態って言えばいいのかな。手当たり次第に物に当たりたいってことか?)
そんな余裕な態度を保てたのはここまで、次の瞬間には余裕のよの文字も出なかった。
何度も同じ場所を殴りつけた影響で、壁は順調に凹み始め、壁の中から何か変な物体が顔を覗かせていた。
(……く、鎖?)
壁に鎖がめり込んでいる意味が俺にはわからなかったが、あれを取らせては不味いと本能が悟ったのだろう。
頭で考える前に敵に突撃して、一気に決めようと決意する。
「とどめだっ!!」
飛び上がり上空から攻撃を畳み掛けようと剣を振りかぶる俺。
思えば隙だらけな体勢だけど、ミラマッドネスは何かを取り出そうと必死なため反撃には出られまい。
「これならいける! 一気に叩いてしまえ!」
「あれは……っ!? キリュウ君、逃げて!!」
外野の意見が真っ二つに別れる。
このまま攻めてしまえという攻撃的な考えと、アルティナの保守的な考え。
どちらが正解かなんて、今の俺にはわからない。だが、一つだけ言えることはある。
(――ここまで来たら止めらんないよ)
地面に足が着いていないんだ、ここから退避することも攻撃を止めることも出来ない。
「……喰らえっ!」
アルティナが何を持って逃げてって言っているのかどうかは理解出来ないけど、これで決めてしまえば同じことだろ。
一発目と同じように『ブラストオブウィンド』を発動させ、ミラマッドネスを一閃するように切り裂くが、HPゲージを全部削ることは出来なかった。
そして、その攻撃にぶち切れたミラマッドネスは全力を使って壁から鎖を引っ張り出し、何もない壁から刃を出現させて俺に向かって直進させる。
「なっ!? ……っと、と」
いきなりの出来事に慌てて距離を取り、避けることに成功し安心しきっていた俺の背後から気配を感じた。
「キリュウ君、後ろ!!」
壊れかけたロボットのようにギシギシと振り向くが、見たくないものというのは実際にあるものだとわかった。
そこにいたのは俺目掛けてすでに刃を振っていたミラマッドネスの姿だった。
「くっ」
どうにかしてガードをしようと体を捻るようにするが、完全にキレたミラマッドネスのスピードには追いつけない。
脇腹に強烈な一撃を貰ってしまい、勢いを殺すことなく壁に打ち付けられる。
「ぐはっ!」
脇腹と背中に強烈な衝撃を受け、HPが一気にレッドゾーンまで突入した。
……ミラマッドネスと壁による追加ダメージだけでレッドゾーンかよ。これはマジで死にゲーじゃねぇのか。
「キリュウっ!!」
「しっかり、キリュウ君!」
パーティーを組んでいるため、お互いのHPがわかる位置にいるアーサーやアルティナ達が助けに来てくれた。
本格的に不味いと思ったから助太刀に来てくれたのだろう。
「……わ、悪い。ドジ踏んじまった」
「いや、お前は悪くない。俺達がエリュシオン・オンラインのときと同じ要領だと思っていたのが悪いんだ」
「とりあえず距離を取るわよ。アーサー、彼を後ろに運んであげて。ティナは私と一緒に時間稼ぎよ」
このエリュシオン・オンラインではよりリアル感を楽しんでもらえるようにとの配慮で、痛みなどのプログラムも正常に組まれている。つまり、ここで受けた痛みを直接受けることになるのだ。
強力な攻撃を受けたことにより、本当に無駄なプログラムを組んでくれやがったなと開発者達を怨む俺だった。これは超痛いです。背骨とか折れててもおかしくないんじゃないか。
そんな痛みに悶える俺を丁重に背負って、だいぶ距離を取った場所に俺を降ろすアーサー。
「……サンキュー。後でもう一回戻るから、回復するまで時間を稼いでくれ」
インベントリから回復薬を取り出し、口に含みながらアーサーに話しかける。
「わかった」
背中に着けている槍と大きな盾を手に持ち、ミラマッドネスに突撃するアーサーの姿に注目する。正しく言えば、アーサーではなくミラマッドネスの姿に、だが。
何を喰らって吹き飛ばされたのか脳が理解しきっていなかったので、武器を視界に入れておきたかったのだ。
次々とプレイヤー達がミラマッドネスに攻撃を仕掛ける中、敵は鎖が付いていて、それでいて鎌状の刃が付いている鎖鎌で応戦をする。武器の中でも鎖鎌は特にトリッキーな武器の一種だ。鎖を自在に動かせば鎌を変幻自在に動かすことも可能だ。
「……なるほど、壁の中にあった鎖鎌を俺にぶつけてきやがったのか」
さっきの攻撃のタネがわかってしまえばこっちのもんだ。
刃の部分が脇腹を抉ったのにも関わらず血まみれで倒れてないのは、ここがそこまでリアリティのあるゲームじゃないからということだろうな。
「どうりでこの身体能力が活かせないわけだ」
見えない物を避けようとするなんて出来るわけがない。
どこからともなく飛来する物体を避けろと言われているようなものだし。
「も、もうダメだ……」
「黒獅子でも瀕死になるようなモンスター相手に勝てるわけねぇ……」
俺が後方に運ばれて来ることにより、チームメイトの士気が下がっていった。
これがあるから正体を明かすのを躊躇ったのだ。人というのは自分よりも優れている人を無意識に頼ってしまう癖がある。そしてその頼り切っている人がやられてしまうと自分が戦っても勝てないと決め付けて戦いを避けようとする。
だから、パーティープレイは嫌いなんだ。
強い味方に依存して、自分は寄生虫のように強者にくっ付くだけで楽をしようとする。そんな輩が多く存在することになるから仲間を作りたくない。どうせ役に立たない仲間なら元からいない方が経験値もより多く入ってお得だ。
「お前ら、ちゃんと戦え! 何でもかんでも黒獅子だかなんだかしらねぇ野朗に任せっきりにしてんな」
最初にいちゃもんをつけてきた男が士気を上げるために怒声を上げる。
「……へぇ」
文句しか言わないロクデナシ男かと思いきや意外に性格は真人間っぽかった。最初の印象だけで性格が合わなさそうだなと思っていたが、これは考え方を変えなければいけないみたいだ。
「認めんのもいやだけどな。口だけのお前らよりはこいつの方が良く戦ってるさ」
「口だけだと……」
「文句があるなら行動で示せ」
ボス相手に着実にダメージを与えながら、戦意喪失しているプレイヤー達を叱咤する男性プレイヤー。
悔しいが彼の言った通りだったのだろう一緒に行動していたチームメイトの中に黒獅子がいて、そんな有名プレイヤーがいるなら全部任せても問題はない。そう思ったんだろうな。
「……アンタ、そこまで言う必要はないよ」
静かにゆっくりと立ち上がりつつ、叱咤していた男性プレイヤーに向けて言葉を発する。
「現にこいつは強い。だから、本当に戦う気がないやつは出てってくれても構わない」
地面に転がっていた俺の剣を拾い上げ、敵地に挑む兵士のように歩みを進める。
俺は口だけの人間ではない。俺には成し遂げないといけない任務がある。こんなところで立ち止まっていられない。
「いいのか? これ以上、メンバーが減ったらかなりきついぞ」
「気にしない気にしない。出て行ってくれたら攻撃をする人も限られて、経験値がより手に入るからな」
「……おまえなぁ」
「それに、死人が増えるよりマシだから――」
男は俺の言葉が気になったのか、「えっ?」と聞き返してくるが無視してミラマッドネスに突っ込む。
他のプレイヤーに攻撃を仕掛けることを第一としていた敵は俺の行動に反応することが出来ず、俺の攻撃を喰らったが少しふらつく程度だった。
「ちっ……。やっぱりこの程度じゃあ無理か」
攻撃を加えたら即座に距離を取る。こいつの攻撃パターンがまだまだ理解出来てないので、回避優先で戦うことを重視していこうと思う。
「キリュウ君、危ないっ!!」
「さすがに二回目ともなると、わかってますよっと」
俺を取り囲むように鎖と鎌を自在に使い逃げ場を防いだつもりだろうが、さすがに一回目の予想外な場所からの攻撃と違って、場所さえ把握出来れば避けれるんだよ。
地面を滑るように鎖の下を潜り抜け、後に軌道変更させた鎌をジャンプして避ける。
「……す、すごい」
「次はこっちの番だぜ」
――とは言え、俺個人の攻撃じゃあ、隙を突くことも出来ないし、見えないバリアみたいな物があいつを守っているから大ダメージを与えることが不可能なんだよな。
ここはパーティープレイの長所の見せ所か。
「アーサー、アルティナ、ジュリア。少しの間、協力してくれ」
「いつでもいいぜ」
「わかった」
「了解よ」
口々に心地良い返事を返してくれる仲間を頼って、みんなで勝たないと。
一人で勝てない敵でもみんなでなら勝てる、か。
「手順は簡単だ。とりあえず俺が突っ込むから、ジュリアとアルティナは攻撃してくる鎖や鎌をどうにかしてくれ」
「どうにか……って」
どこかぶっ飛んでいて、あまり作戦と言えない作戦だが、これ以外に考えられないのも事実だ。
「私はキリュウ君と一緒に突っ込むけど、ジュリアは双銃使いだからある程度離れててもいけるよね」
「ま、まぁ、そうだけど」
「アーサーは……言わなくても何となくわかってくれるよな」
「おう」
アーサーとはたまにパーティーを組んで一緒に敵を狩りまくっていた時期が何度かあるだけに、俺の考えていることはある程度理解してくれているだろう。
「ザックリとした作戦が決まったところで」
俺のやりたい事が通じたのだろう。アーサーはゆっくりと槍を取り出し、バットの用に持ちその場で振り回す。
「ちょ、ちょっといきなり何を……」
「行くぜ、キリュウ!!」
「おう!」
タイミングを合わせてジャンプをし、アーサーが振り回している槍の上に立つ。
「さっそく急襲と行きますか!」
そして良い感じに勢いが付いたと同時にアーサーは槍を今までで一番大きく振り、俺はそれに合わせてミラマッドネスに向かって飛び出す。
鎖鎌の長所と言えるトリッキーな動き。しかし、それを行うために必要なのは鎖だ。
鎖の動きを制御することによって先に付いている鎌を相手に当てることが出来る。鎖が長ければ長いほどよりトリッキーな動きをするが、長いと鎖を手繰り寄せるのに時間がかかる。
今から向かって走り出したんじゃ、絶対に戦闘態勢に入ってしまう。だが、これなら時間を短縮出来るし、勝てると思ったんだ。少しハチャメチャな作戦ではあるけども。
「……喰らえ」
一気に距離を詰めた俺は、体ごと回り威力を高めた攻撃をミラマッドネスに当てるが、敵のHPゲージは少し減る程度。
「ちぃっ、これでもダメか」
「キリュウ、避けなさい!」
背後から聞こえる女の声に反応し、転がるように左側へ避ける。
そんな俺を見届けた直後に無数の弾丸がミラマッドネスの図体に減り込むことになった。
無数に撃った銃弾なのに一撃たりとも当たっていない銃弾がないことに驚きつつ、これでもダメなのかと絶望にも似た感情が俺のなかで生まれ始めた。
「……まだよ!」
「これなら、どう!!」
両手に持っている銃を何発も撃ち込むジュリアの邪魔をしないように気を配りながら、敵に向かって走り出すアルティナ。長年、一緒のギルドで共闘していただけのことはあるな。チームワークが完璧だ。
敵の近くまで来たアルティナは銃弾によって出来た穴目掛けて槍を突き刺し、即座に武器を片手剣に切り替え、さらに別の傷口に差し込む。
さすがにそれは堪えたのだろう。絶叫のような鳴き声を上げるミラマッドネス。
「今よ!! 行きなさい、アーサー」
「了解だ」
いつの間にか俺の上空を跳んでいるアーサー。
彼は空中でスキルを立ち上げながら、ミラマッドネスに向かって攻撃を仕掛けた。
しかし、攻撃場所がわかっていながら、その攻撃をみすみす喰らう敵じゃない。
AIのようなものが強化されているのであれば、この敵はおそらく中盤ランクだろう。ここまで戦えるボスは最初の方にいるべきじゃないのだから。
「……自由にさせてたまるか」
ミラマッドネスにスキル攻撃を回避されたことにより、少し硬直時間があったにも関わらず意地で体を振り回し強引にアーサーは攻撃を当てに行く。
「ありえねぇ……」
その所業を目の当たりにしてしまった俺はアーサーの異次元さというか馬鹿さを改めて知ら占められた。
アーサーの攻撃を喰らったミラマッドネスは、最終防衛手段であるバリアが壊れたことに驚愕している。そして偶然にも吹き飛ばされたミラマッドネスはこちらに向かっている。
自由に体を動かせない敵、スキルを立ち上げる時間もある。
「決めちゃいなさい!!」
「キリュウ君っ!」
「いっけーー!」
仲間達の声援を耳に入れながら、剣を強く構えスキルを立ち上げる。
(こんな隙だらけの技、使わないと思っていたんだけどな)
これも隙をカバーしてくれる仲間の存在があるからこそ、出来ることかな。
「とどめだぁーーっ!!」
剣を豪快に真横に振り切り、ミラマッドネスの体を真っ二つの切り裂く。
“やった”と思った反面、思っていた感触と違った感触を受けた俺は正真正銘のとどめを刺すべく、地面を強く蹴り、高く飛び立つ。
「大人しく死んでろ!」
剣先を真下にいるミラマッドネスに向けて急降下する。
予想していた通りに意識はまだあるのだろう鎖を俺に目掛けて振るミラマッドネス。
そいつの攻撃によって俺のHPゲージガリガリと削られていくが、ここまで来たら関係ない。ここで決めないといけねぇんだよ。
剣先が自身の図体を貫通したと共にミラマッドネスは大きな鳴き声をあげ、体が結晶の破片みたいになり消えていった。
「……はぁはぁ」
疲れが溜まりすぎて勝ったかどうかの判断すら遅くなった俺だが、目の前に『レベルアップ』という文字と経験値やドロップ素材などの情報が表示されたことにより、ようやく勝ったんだという実感を得る。
ここに入る前は7レベルだったにも関わらず、倒した今のレベルは10。どんだけレベルが上がったんだと思いながらも、息を整えることがやっとこさ出来たので、剣をゆっくりと直し立ち上がる。
「やったな」
「おう」
パーティーメンバー全員の下へ向かおうとした俺の前にアーサーが現れ、手を出してきたので力強くハイタッチをして他のメンバーの下へ向かう。
「やっぱり私が思っていた……以上の強さだね」
「おめでとう、キリュウ君」
「ありがとう、二人とも。……でも、二人のアシストがなかったら危なかったよ」
二人して手を差し出して来たので、優しくハイタッチをする。
「じゃあ、帰るか。街に」
こうして街へ帰った俺達。
鏡の迷宮は攻略済み認定となり、いつでも突入することが出来るようになった。
攻略済み認定となると、危険なモンスターハウスが取り除かれ、より安全な冒険が出来るようになりボスと戦うことは出来ないが、強いモンスターと戦うことが出来るのだ。つまりはレベルアップに最適ということ。
次から当分の間はここをレベルアップのために使わせてもらおうと心の隅で思いながら、街へと足を進める。
――後日、一部のプレイヤーが作っている新聞に書かれている記事に対して怒号を上げるキリュウの姿があったらしいがこれはまた別の話。
彼が見ていた新聞の見出しには、こう書かれていた。
『黒獅子<キリュウ>鏡の迷宮のボスを倒し、この世界の真相へ近づく』と。