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エリュシオン・オンライン  作者: 神城 奏翔
第2章 喜びの感情
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Chapter19 子竜の舞、開催


「さぁ、始まりました。『子竜の舞(ドラグナードダンス)』」


 翌日の朝。早い時間から始まったというのに、観覧席でプレイヤー同士の戦闘を一目見ようとしているプレイヤーならびにNPCの皆さんのテンションが常に上昇している。

 その観客に囲まれるようにフィールドに降り立った約二十人ほどの参加者。

 こいつらの中に達人クラスの人間はどれだけいるのだろうか。俺が苦戦するであろうプレイヤーを今、挙げるとするならば当然アーサーと言うだろう。あいつの実力を俺は知っているが、同等の力を所持しているからな。


「参加者二十名、殺傷行為はなしという規則の下、大会の下準備をさせていただきます。参加者の皆さんモニターにご注目ください」


 会場一番大きなモニターに目線を向ける。

 すると、そこには参加者二十人の名前と同時に顔写真も添えられていた。大会の司会者の方でトーナメント表は組んでいたのだろう。


(俺の最初の相手は……っと)


 俺の名前と顔写真は一番左のとてもわかりやすい場所だ。

 そして、その隣に書かれている名前は『クリア』。顔写真を見る限り、強そうには思えない。このゲームがリアルになってから頻繁に強いモンスターのところへ行ってないな。と俺に思わせるぐらいだ。


「第一試合、『リュウキ』選手対『クリア』選手。五分後から試合を開始させていただきますのでご協力とご理解をお願い致します」


 五分後か……。それまでの時間、俺はどうしてようかな。

 ちなみに『リュウキ』というのは俺の大会専用のネームだ。ゲームで使用している名前『キリュウ』、それを少し弄っただけなので人によっては身バレが発生するかも知れないが、俺にはそれ以外の名前が思いつかなかったんだ。


「なぁ、君が『リュウキ』で合っているんだよな?」

「あ、ああ。お前は?」

「おっと自己紹介を先にすべきだったな。おれは、『ロキ』。君が勝ち進んだら三回戦で戦うことになる男だよ」

「……三回戦まで勝ち進めばねぇ」


 こいつは俺を買い被っているのか、あるいはプレッシャーをかけようとしているのかどちらだろうか。

 身バレを防ぐためにフード付きの黒のマントを着用している俺が黒獅子『キリュウ』と結び付くことはないと思うのだが。


「勿論、君は勝ち進むだろう。おれの目に狂いはない。君は強い」

「そこまで言ってもらえると幸運だな。ご期待に添えるように頑張るとする」


 『ロキ』と名乗る青年に背を向け、会場内に設置されていた休憩所へと足を進めることにした。

 ゆったりとした空間で試合までの時間を待つ。体力温存も出来るし、適度な緊張状態で試合に臨むことが可能なので最善だと俺は思う。


『連絡致します。『リュウキ』選手、『クリア』選手のお二人は試合会場へとお向かいください。これより第一試合を開始します』


 五分後に流れてきた放送は第一試合の開始を告げるアナウンスだった。

 それを聞いた後、俺は休憩所を飛び出し、観客に囲まれる賑やかなフィールドへと向かった。

 優勝賞品が『暴竜の延髄』というレアアイテムなんだ、参加者のレベルは相当高い。そう思って大会に挑んでも良いんだよな。俺をガッカリさせるなよ。


「よぉ、お前が『クリア』って奴だな」

「そういう君が『リュウキ』さんで良いんですね?」

「ああ」

「両者共に会場へと入られたようです。では、第一試合を開始します!」


 『クリア』が自前の武器。おそらく三節棍の類の物を取り出し、戦闘準備を開始するのを見てから俺は剣に手をかける。

 最初の一撃、これが何よりも大事になる。

 相手の力量、テクニック、試合の運び方。対人戦で大事なものを一撃目で測れる。相手から何も仕掛けて来なければ相手はカウンター型。少し待った後に仕掛けてくると持久型。相手を待つことなく仕掛けると攻撃型。すべてが第一撃で判断が出来る。


『おおっと、両者一歩も動きません。会場内に緊張が走ります』


(これじゃあキリがないな。でも、わかった)


 俺は敵に合わせたけれども、相手は俺に合わせたというよりかは何かを待っていた風だった。要するにカウンター型だ。

 相手にカウンターの隙を与えることなく、一気に攻め立てる!


「……行くぜ」


 足に全神経を集中させ、跳ぶように相手へと一直線に突っ込む。

 俺の突撃に合わせて敵は三節棍を構え、獲物が近づくタイミングを見計らい一息に振り回す。


「甘いっ!」


 振り回された三節棍の鎖の動きや棒の部分がどのように動くのかを見切り、それらを紙一重で避ける。

 今までの戦闘で培ったスキルを最大限に活かした戦い方だ。


「なにっ!?」

「一気に行くぜ」


 片手剣による連続攻撃スキル『ラッシュ&バッシュ』を俺なりに改造した『ソードスラッシュ』。

 縦横無尽に襲い掛かって来る剣をどれだけ避けられるかな。

 最初は俺の動きを見事なまでに見切り善戦していたが、次第に攻撃について来れなくなっていた。彼の体の所々にダメージエフェクトが付き出したのがその証拠だ。


「くっ。は、早い」

「ほらほら、どうした。全力で掛かって来ないと負けちまうぞ?」


 被ダメージが三分の一になった途端に、もう出し惜しみダメだということを理解したのか、『クリア』の使っている三節棍が光り、スキルが立ち上がっていた。


「喰らえ!!」


 俺の攻撃と攻撃の合間の僅かな隙を狙い、彼は三節棍を横に振るう。

 スキル立ち上がりはフェイクで普通の攻撃を当てるつもりだったのかと脳の片隅で思った俺は、その三節棍を跳びかわすことにしたのだが……。


「なっ!?」


 跳んだ瞬間に三節棍の間の鎖が伸び、途中で軌道が変わった。

 空中へと逃げた俺を追い詰めるかのように三節棍の魔の手が迫る。どうするべきか迷った俺は剣で三節棍の攻撃をガードし、反動で少しだけ止まった時間を狙い済まして三節棍を握り締める。


「捕まえた。さて、これで終わりにするか」


 安心して地面に着地した後に、剣術スキルを立ち上げる。

 基本的なスキルではなく、高レベルの奴しか使えない剣術スキル『エクス・ストリーム』。剣による連続コンボを決める技だ。もっとも俺が自己開発した『ソードスラッシュ』の公式パターンで少し変わっているだけなんだけど、動揺もしくは一気に決めることが出来るだろう。


「な、何をする気だ」

「そりゃあ、鎖があるとすれば……こうやって」


 三節棍を全力で引っ張り、敵を否応なしにこちらへと向かわせる。足の踏ん張りが出来ないように空中へと浮かせたので抵抗は出来ない。出来るのはただ一つやられる覚悟だけだ。


「終わりだ」


 攻撃する手段も持たずに飛び込んできた鼠を処理するのなんて、簡単だ。

 スキルによる全部の攻撃を当てると『クリア』の体力ゲージがレッドゾーンへ突入し、試合終了の合図がなった。

 ちなみにこの試合会場ではレッドゾーンで強制的に止められるようにシステムの管理下にあるらしい。よって、致死量の攻撃を受けた場合でもレッドゾーンで止まるみたいだ。


『勝者、『リュウキ』!』


 観客の割れるような大歓声が会場全体を覆う。

 俺はその歓声をまともに聞くことなく、勝利宣言が入った後、静かに休憩所へと戻ることにした。

 今回の敵は強いというか、トリッキーな戦法を取ってくる奴だったなぁ。と思いながら……。



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