第五章 野球ボールと夜の公園
・・・すいませんっ!!><
この前の章では、「次回予告です」・・なんて、調子乗った事を書いておきながら、全然違う感じになってしまいました!(;_;)
本当にすいませんでした!
・・・・それでは、もし、読んでいって頂けると、本当に本当に嬉しいです!
ほんと、すいませんでした・・><
・・・目覚ましのけたたましい音が、私の耳元でジリジリと鳴り響く。
「・・・・。う~ん・・・・。」
あまりのうるささにさすがの私も目を覚まして、それからスイッチを切った。
それからもう一度寝ようと思って、布団の中に潜り込む。
・・・そしてそのまま深い眠りにおち・・・
「涼香ーーー!!・・ちょっと降りてきてーーー。」
・・・・何てタイミングの悪い声・・・。
お母さん、何で今なんだ・・・。
そう思いながら渋々階段を降りて行く。
リビングに着くとお母さんがいつもと違う服装をしていて、香水の匂いをプンプンさせていた。
「・・・・何、話って・・・。」
不快感を思いっきり漂わせた声で聞いてみる。
すると、お母さんが
「はい。」
といって何かを渡してきた。
・・・それは一枚の白い紙だった。
「・・・これ、宜しくね。お母さん、今から仕事行くから。」
・・・渡された紙には、黒い字で「児童講習会」と書いてある。
「・・・・?」
頭の上にハテナマークを浮かべながら首を傾げるとお母さんは、
「・・満の塾の講習会よ。・・涼香、今日暇でしょ?」
と言った。
・・・ちなみに、満というのは私の弟だ。
今、中学一年生で「孔明琴金」(こうめいきんじゅく)という偏差値70ぐらいの頭を持った人達がぞろぞろしている所に行っている。(私達は略して「孔塾」と呼んでいる。)
「・・・・・・え~・・。塾の講習会って・・・。しかも孔塾でしょ~~?」
露骨に嫌そうな顔をしながらそう言ってみる。
お母さんはそんな私を見てこんな提案を出した。
「大変だろうけど、お母さんも今日用が入っちゃったのよ・・。・・・あ、そうだ、ちゃんと聞いてきてくれたら帰り道に何か買ってきてあげる。」
・・・私の耳が小さく動く。
お母さんはその瞬間を見逃さなかった。
「・・・。それじゃあ、涼香。お母さんはもう出るから。朝ごはんは適当に自分で作って頂戴ね。」
そう言うとさっさとドアを開けて外へ出て行ってしまった。
(「うん」なんて言って無いのに・・。)
そう心の中で文句を言いながら、とりあえず今貰った紙に目を移す。
「集合場所は孔明金塾です。13:30~16:30まで行います。」
その文字と一緒に小さな地図がそえてある。
・・「あ~あ・・。」
ため息に近い声で一人、呟いてみた。
それから近くにある椅子に座り、傍にあった食パンに手を伸ばす。
「何たってこんな休日に塾に行かなきゃ行けないわけ~・・・?」
誰も聞いてはいないけど、そんな言葉を発してみた。
でも、お母さんがいない今、そんな事を言ったって何にも変わりはしない。
私は仕様が無く・・・いや、強制的に塾に行く羽目になった・・。
ーーー・・・
・・・ちろりと時計に目を向けると、長い針は12を、短い針は11を指していた。
(そろそろ、出ようかな。)
そう思った私は外に出て、薄い青の自転車に跨る。
それから、ほんのり湿気を含んだ春の風を切り裂く様に、ペダルのスピードを上げていった。
・・・孔明金塾は隣の市にあり、自転車で駅まで大体15分、電車に5分乗って後は徒歩10分程度の場所にある。
そこに毎週五回も行き始めた弟は、すでに中2の私の上の、さらに上の学年の勉強までしているらしい。
この前、ちょっとテキストを覗いてみたが、やはりチンプンカンプンな内容だった。
それなのに、何故か弟はスラスラその問題を解いていき、
「こんなの基礎中の基礎だって。」
何てほざきやがっていた。
・・全く持って、嫌味にしか聞こえないその言動に、私は
「人生、勉強ばっかじゃやっていけないよ。」
と、ちょっぴり負け犬気分を味わいながら言ってみた記憶がある。
・・・何て考えている内に、さっきまで静かだった道から、少しずつ人の声の混じった道に変わっていた。
・・・さらに進んでいくと、より音が濃くなり、人の量も増えていった。
これ以上ペダルをこいでいると人を引いてしまいそうな気もしたので、私は自転車を降りて近くの駐輪場に止めた。
それから、駅に行って、切符を買い、電車に乗り込む。
しばらくすると、「○○駅~○○駅~お出口は~右側です。・・ご乗車、有難うございます・・・」
という駅員さんのアナウンスが流れて来た。
電車から降りた私は、小さな人ごみの中をくぐり抜けて、外にでた。
電車の中とは違う、爽やかな空気を肺いっぱいに吸い込んで、私は孔明金塾まで歩き始めた。
ーー・・・私の目の前に、「孔明金塾」と筆の様な字で書かれた看板が立ちはだかる。
(・・・やっと、着いた~。)
私はそう安堵の溜め息を吐いて、少し重たいドアをゆっくりと押した。
------・・・・
「保護者の方々、本日はお集まりいただき、有難うございました。これからも、お子様の勉強を・・・・・」
・・塾の先生の話しがやっと終わり、私はこれで16回目となるあくびを一つした。
時計を見ると時刻はピッタリ16:30。
さすが、という感じだ。
私は、せっかくの休日をこんな形で終わらせてしまった事に小さな溜め息を吐きながら、行きと同じ様に重い扉を押した。
外は、綺麗な夕焼け空が広がっていて、まるで私の疲れを癒すかの様に太陽の光が優しく照っていた。
・・大きく大きく伸びをした後、私はのんびり歩き出した。
電車に乗り込んだものの、出発するまでもう少しかかりそうだったので、窓越しから空を見てみた。
少しずつ暗くなっていく空の色がとても綺麗で、その絶妙な色合いに、目を奪われた。
それから、確かこういう瞬間の空の事を、「ゴールデンアワー」というと、昔誰かが言っていたのを思い出す。
その瞬間は、一日に一回しか無くて、それもたったの数分で、だけど、確かに存在するものなのだと言ってもいた。
・・そんな事を思っていると、電車の中に駅員さんの声が響いた。
「誠に申し訳ありませんが、ただいま、ふみきり付近で不審な行動をした人物が居る、という様な情報が入った為、発車時間が変更されました。ただちに○○○の○○号が見に行きますので、今しばらくお待ち下さい。・・皆様の貴重なお時間を取ってしまう事を・・・」
それを聞いた私は、ケイタイを開いて、
「電車が止まったので少し帰ってくるの遅いかも。」
と、簡潔な文をお母さんに送った。
そしてまた、視線を空に移した。
・・しばらくしてから、また駅員さんの声がして、電車はやっと動き始めた。
私はもう一回お母さんへ
「今、動き始めたから。」
というメールを送った。
・・空はもう暗くて、さっきまでの美しい色も、優しい太陽の光も、暗闇に包まれていた。
だけど、所々に星がパラついていて、それもまた、さっきとは違う美しさがあった。
どこの家からも、オレンジ色の光が灯っていて、何と無く、早く家に帰りたくなった。
・・人混みと一緒に電車から降りて、私は少し足早に駅を出て、自転車を取りに駐輪場へ向かった。
・・自転車を取って、少しこいで行くと、さっきまでのにぎやかさはなくなっていて、私は少し心細くなりながらペダルを強く踏んだ。
・・・誰も居ない、暗い道路。
それとは反対に、近くの家々からは明るい笑い声が家越しにかすかに響いていた。
・・・そんな笑い声を背にどんどん進んでいく。
公園まで来た時に、その声とは違う音が私の耳に飛び込んできた。
・・・おそらく、それはボールの音だろう。
ポーン、、ポーンと、一定のリズムを刻み、絶える事無く投げつづけている様だ。
(誰が、投げているんだろう・・?)
少し気になって、何と無く身体が公園の方へ向かう。
自転車を止めて、音の方向へ歩いて行った。
・・・音の正体は、歩き始めてからすぐに見つけられた。
・・・その人は、電灯の明かりの下で、小さなボールを投げていた。
手にグローブをはめて、振りかぶり、しなやかに腕を滑らせては、指先からボールを放つ。
・・ボールは、まるで生き物の様に指先から飛び立ち、真っ直ぐに空を切り、壁に反射して、また、グローブの中に納まる。
それを何回も何回も繰り返して、・・それでも休む事無く同じ様に空を切り裂いては、壁に反射して、グローブの中へ滑り込んで行った。
・・私は、ついその動きに見とれて、その場に立ち竦んでいた。
・・夜の公園の、電灯の下で、私はその人のフォームに目を奪われていた。
・・そして、これが、これから芽生える想いの、最初のきっかけ。
それは、まだ、桜が散り始めた春の出来事。
まだ、「恋」を知らない、中学二年生の頃。
・・・すいません、最後の方、けっこうムリヤリ終わらせた感じになってしまった気も・・(汗)
・・とりあえず、次の章こそは、恋愛ものっぽくしたいです><
ここまで読んで下さって、本当に・・っ!有難うございました!!