表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法が使えない落ちこぼれの俺だが、解析スキルで魔法学園の戦闘を支えてます ~最強じゃないけど、いないと困る~  作者: 天城ユウ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

32/40

第32話 試験運用要請

 その日の放課後、解析運用班は再び会議棟に呼び出された。


 今度は小会議室ではない。

 学園長代理の執務室――つまり、学園としての「正式な話」だ。


 部屋に入った瞬間、空気の質が違うと分かった。


 視線が多い。

 しかも、教師のそれとは決定的に違う。


          ◆


「紹介しよう」


 学園長代理が、机の向こう側を示す。


「王国軍・第三戦術研究部隊の代表、ハーグ准将だ」


 壮年の男が、一歩前に出る。

 無駄のない立ち姿。礼儀正しいが、柔らかさはない。


「話は聞いている」


 低く、はっきりした声。


「魔法の失敗を“事前に止める”解析。非常に興味深い」


 アルトは、何も答えなかった。

 興味、という言葉の裏にあるものを、感じ取っていたからだ。


「単刀直入に言おう」


 ハーグ准将は、続ける。


「我々は、この仕組みを実地で試したい」


          ◆


 沈黙。


 学園長代理が、補足する。


「小規模な実地演習だ。戦場ではない。だが、学園の外だ」


 セリアが、思わず口を開いた。


「学生が、ですか?」


「そうだ」


 ハーグ准将は、即答した。


「実際に使うのは、若い兵だ。学生に近い方が、データとして価値がある」


 その言い方に、ミナが小さく身を強張らせる。


 ――データ。


 人を、数字として見る視線。


          ◆


「条件は?」


 アルトが、静かに問い返した。


 ハーグ准将は、少しだけ目を細める。


「三つある」


 指を立てる。


「一つ、解析は警告のみ。判断は、我々が行う」

「一つ、結果に対する責任は、軍が負う」

「一つ、失敗した場合でも、解析の欠陥として扱わない」


 一見、好条件に聞こえる。


 だが。


「……つまり」


 アルトは、言葉を選びながら言った。


「俺たちは、止める判断に関われない」


「正確には、不要だ」


 ハーグ准将は、淡々と返す。


「判断は、訓練された者が行う」


 アルトの胸に、静かな違和感が広がった。


          ◆


 ローディアスが、腕を組んだまま言う。


「解析運用の思想とは、相容れないな」


「承知している」


 ハーグ准将は、否定しない。


「だが、現場では速度がすべてだ。迷いは、死を呼ぶ」


 正論だ。

 戦場においては。


「これは、採用の話ではない」


 学園長代理が、釘を刺す。


「“試験運用”だ」


「理解している」


 ハーグ准将は、アルトを見る。


「だからこそ、君の意見を聞きたい」


 全員の視線が、アルトに集まる。


          ◆


 一瞬、前世の記憶がよぎる。


 数字を出せ。

 結果を出せ。

 過程は問わない。


 失敗した理由は、後で考えればいい。


 ――同じ匂いだ。


「……即答はできません」


 アルトは、はっきりと言った。


 ハーグ准将の眉が、わずかに動く。


「理由は?」


「俺の解析は、“止めるため”のものです」


 一拍置く。


「止める判断に関われないなら、意味が変わる」


 沈黙。


 拒絶ではない。

 だが、肯定でもない。


          ◆


「返答の期限は?」


 アルトが問う。


「三日」


 短い。


「それまでに、学園としての結論を出してほしい」


 ハーグ准将は、それだけ言って立ち上がった。


          ◆


 来客が去ったあと。


 部屋には、重たい沈黙が残った。


「……思ったより、早かったな」


 ローディアスが、低く呟く。


 学園長代理が、アルトを見る。


「断ることもできる」


「はい」


「だが、断れば――」


「外で、別の形で使われますね」


 先回りして答えた。


 否定は、されなかった。


          ◆


 会議室を出たあと、解析運用班は無言で歩いていた。


 最初に口を開いたのは、セリアだった。


「嫌な話ね」


「はい……」


 ミナの声が、かすれる。


「でも、避けられない気もします」


 ガルドが、歯を鳴らす。


「使われるなら、俺は中にいたい」


 全員の視線が、アルトに集まる。


          ◆


 アルトは、立ち止まった。


「三日、考える」


 それだけ告げる。


 答えは、まだ出ていない。


 だが、一つだけ確かなことがある。


 この話は、

 「参加するかどうか」じゃない。


 ――どんな形で、関わるかだ。


 学園の外で、

 解析がどう使われるか。


 それを決める分岐点に、

 今、自分たちは立っている。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、

ブックマーク や 評価 をお願いします。


応援が励みになります!


これからもどうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ