表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法が使えない落ちこぼれの俺だが、解析スキルで魔法学園の戦闘を支えてます ~最強じゃないけど、いないと困る~  作者: 天城ユウ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/35

第24話 委ねる判断

 次の実習は、解析運用班にとって、これまでで一番“やりにくい”ものだった。


 危険度は中。

 だが、完全に安全とも言えない。


 そして何より――。


 今回は、解析運用班からの「指示」は出さない。


          ◆


 実習開始前。


 アルトは、参加班の代表生徒を集めて、短く説明した。


「俺たちは、兆候だけを伝える」


 数名の生徒が、訝しげな顔をする。


「止めるか、続けるか。どう動くかは、君たちが決めてほしい」


「それって……」


 一人が口を開く。


「結局、自己責任ってことか?」


 直球の言葉だった。


「違う」


 アルトは、即座に否定した。


「判断材料は、全部出す。見えない部分も含めて」


 一拍置く。


「ただ、“答え”は出さない」


 沈黙。


 やがて、代表生徒が小さく息を吐いた。


「……分かった」


 納得ではない。

 だが、受け入れた。


          ◆


 実習が始まる。


 詠唱が重なり、魔力が結界内を巡る。表面上は、問題ない。


 アルトは、兆候を拾う。


 音の遅れ。

 空気の圧。

 魔力循環の引っかかり。


「……兆候あり」


 声を張りすぎず、淡々と告げる。


「南側供給点。干渉の可能性、中」


 それだけ。


 判断は、現場に返された。


 班の中で、短い議論が起きる。


「止める?」

「いや、出力を落とせば……」

「間に合うか?」


 時間は、刻一刻と過ぎる。


 アルトは、口を出さない。


          ◆


「……出力、下げる!」


 代表生徒が、決断した。


 詠唱が調整され、魔力が緩やかになる。


 空気の重さが、少しずつ抜けていく。


 ――外れた。


 異常は、起きなかった。


 だが、それで終わりじゃない。


「……今度は北」


 アルトが告げる。


「兆候、弱。判断は任せる」


 再び、現場が迷う。


 今度は、続行を選んだ。


 結果、軽い乱れが起きる。

 小さな転倒。

 軽傷。


 致命的ではない。

 だが、“選択の結果”だ。


          ◆


 実習終了後。


 空気は、重かった。


「……俺たちの判断ミスだ」


 代表生徒が、はっきりと言った。


「兆候は、出てた」


 誰も否定しない。


 アルトは、静かに頷いた。


「そうだ。でも」


 視線を向ける。


「次は、もっと早く判断できる」


 それだけ告げた。


          ◆


 ローディアスが、腕を組んだまま近づいてくる。


「事故としては、軽微」


 低い声。


「だが、記録は残る」


「はい」


「……だがな」


 一拍置く。


「今のは、“管理された失敗”だ」


 その言葉に、アルトは目を上げた。


「現場が考え、選び、結果を引き受けた。これは、教育だ」


 初めて、はっきりとした評価だった。


          ◆


 夕方。


 解析運用班のミーティング。


「……思ったより、消耗した」


 セリアが、肩を回す。


「自分で決めるって、疲れるのよね」


「でも」


 ミナが、小さく言う。


「次は、判断が早くなると思います」


 リィナが、腕を組んだまま呟く。


「理論的にも、筋は通ってる」


 アルトを見る。


「あなたのやり方は、効率が悪い。でも」


 一拍置く。


「“残る”やり方ね」


          ◆


 夜。


 アルトは、ログに新しい項目を書き加えた。


 《判断委譲型運用》


 解析は、答えを出すためのものじゃない。

 選択肢を、正しく見せるためのものだ。


 そして、選ぶのは――人。


 今日の小さな失敗は、

 次の大きな事故を、防ぐための代償だ。


 そう信じているからこそ、

 アルトは、書き続ける。


 歯車は、また一つ噛み合った。


 今度は、現場の意思と。


本話もお読みいただき、ありがとうございました!


少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、

ブックマーク や 評価 をお願いします。


応援が励みになります!


これからもどうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ