転生者マリアの王宮ウォッチ
第一章 婚約破棄は突然に
――あ、これ知ってるやつだ。
マリアは広間の端で、グラスを持ったまま内心つぶやいた。
金色のシャンデリア。着飾った貴族たち。やたら芝居がかった間。
「皆さま、本日はお集まりいただきありがとうございます!」
高らかに声を張り上げたのは、セッセだった。
薄桃色のドレス。涙を浮かべた瞳。完璧な被害者ポジション。
――はいはい、来ました。
「この場をお借りして、私は……重大な決意を表明いたします」
ざわり、と空気が揺れる。
マリアは隣にいたイーサンに小声で言った。
「ねえ、これさ」
「ええ。来ましたね」
「断罪イベント?」
「九割九分」
正面では、マルコが一歩前に出て胸を張っている。
「俺は……メリンダとの婚約を、ここに破棄する!」
どよめき。
当のメリンダは、何も言わず立っていた。
表情は硬いが、泣いていない。
――ああ、このタイプか。
「理由は明白だ!」
マルコが声を荒げる。
「彼女は、セッセに対して陰湿ないじめを行っていた!」
「……ひどい」
セッセが小さく肩を震わせた。
「私、ずっと黙っていました。でも、もう……耐えられなくて……」
すすり泣き。完璧な間。
マリアはジョニーの方を見た。
彼は苦笑しながら肩をすくめる。
「派手だねぇ」
「声量で押し切る気満々」
「証拠は?」
「出ると思う?」
イーサンが即答した。
「出ません」
マリアは小さくうなずいた。
――知ってる。これ、だいたい出ない。
「メリンダ、言い訳はあるのか!」
マルコの問いに、視線が集まる。
メリンダは一拍置いて、静かに口を開いた。
「……ありません」
ざわっ。
「ちょ、ちょっと待って」
セッセが慌てたように言う。
「反論しないの? ほら、ほら、何か……」
――あ、誘導してる。
マリアは内心でツッコミを入れた。
「しておりません」
メリンダの声は低く、淡々としていた。
「私は、セッセ様をいじめたことはありません」
「で、でも……!」
「それ以上、言う必要はありません」
空気が一瞬、止まる。
そのとき。
「――これは、随分と乱暴な話だな」
低く通る声が広間に響いた。
ジョセフだった。
ゆっくりと前に出て、マルコを見据える。
「婚約破棄は、そんな感情論で行うものじゃない」
「じょ、ジョセフ様……!」
「証拠は?」
短い一言。
マルコは口を開き、閉じた。
「それは……その……」
マリアはグラスを置いた。
――ここから、流れが変わる。
イーサンが小さく囁く。
「介入、しますか?」
「まだ」
「まだ?」
「もう少し、泳がせよ」
マリアは静かに笑った。
――だってこれは、
――“私が主役の物語”じゃない。
でも。
物語の外側に立ってるからこそ、
見えるものも、あるのだ。
第二章 「婚約破棄って、聞いてないんですけど」
「おい、ちょっと待て! マリア、落ち着けって!」
「ジョセフ、無理! 聞いたのよ、聞いちゃったのよ!」
マリアは手に持った書類を振り回しながら、廊下を小走りで駆ける。ジョセフは必死で追いかける。
「で、何を聞いたの?」
「婚約破棄宣言よ! イーサンが、イーサンが!」
「え、俺?」
「そうよ、あなたが王子に“婚約を破棄する”って言ったんでしょ?」
イーサンは頭をかきながら苦笑する。
「違う違う、俺じゃなくて、向こうの王子が…いや、正確には第三王子のジョニーが…」
「ちょっと待って! ジョニーって誰!?」
その瞬間、ドアが勢いよく開く。ジョニーが現れた。
「俺ですか?」
「はい、あんたです!」
「え、俺、何かしたっけ?」
メリンダが口を挟む。
「いや、あんたの顔がまず悪いんだよ。悪役顔すぎて、見るだけで婚約破棄されるレベル」
マリアは膝から崩れ落ち、ジョニーは固まる。イーサンは小さく笑う。
「助けて、セッセ! 説明してよ!」
「え、俺? いや、たぶん……マルコが何か言ったんじゃない?」
「マルコ!?」
「俺、なにも言ってないってば!」
ブリューゲルが壁際で静かに観察していた。
「……この国の婚約破棄って、会話だけで成立するのか?」
誰も答えられず、廊下はしばらく無言が支配する。
「えっと……とにかく落ち着こう!」
ジョセフがマリアを抱き上げて言った。
「いや、落ち着くとかのレベルじゃないわよ!」
こうして、王族でもないはずの私たちの平穏は、一瞬で粉々になったのだった。
第三章 「婚約破棄の真相? いや、ただの勘違いですって」
「ふん、絶対に真相を暴いてみせるわ!」
マリアは廊下で拳を握りしめた。婚約破棄の噂を耳にしてから、彼女の頭の中は「謎解きモード」になっている。
「まず、イーサンに話を聞こう。」
廊下の角を曲がると、イーサンが王座の前で書類に目を通していた。
「ねえ、イーサン。婚約破棄って、本当なの?」
「え、違うってば! 俺、ただ書類整理してただけだし……」
「じゃあ、ジョニーは?」
「え、ジョニー? あいつ、今日も王子の馬車の中で寝てたよ。多分夢の中で婚約破棄したんじゃない?」
マリアは思わず眉をひそめた。
「夢で婚約破棄……?」
その瞬間、ジョニーが通りかかる。
「俺ですか?」
「はい、あなたが婚約破棄の元凶です!」
「え、違うってば……でもなんかみんなに怒られてると面白いな」
メリンダが横からにやにやしながら口を出す。
「ねえ、マリア。婚約破棄って言葉自体、最近の流行語らしいよ。私の聞いた噂だと、ちょっと“気まずいことがあったら使う便利な単語”らしい」
「なんですって!」
「だから本当の破棄じゃないんだよ。ほら、セッセ?」
「え、俺? いや、マルコが言い出したんじゃ……」
混乱は続く。ブリューゲルは壁際で、両手を組んで観察していた。
「……この集団、会話が成立してない気がする」
小声でつぶやくブリューゲルに、マリアは振り向く。
「ブリューゲル、あんた、何か知ってるでしょ?」
「いや、俺は静観してるだけです」
そのとき、マルコが颯爽と現れた。
「俺ですか?」
「そうよ、あなたが婚約破棄を広めたんでしょ!」
「え、俺はただ、“あの二人は仲が悪くなる”って言っただけです」
「十分じゃない!」
「いや、意図的じゃないから!」
マリアは頭を抱える。
「みんな、全員が何か言ってるけど、誰も本当のことを言ってない……」
「それ、ただのカオスですやん」
イーサンが笑いながら言う。
そこで、ジョセフが深刻な顔で割り込む。
「落ち着け、マリア。真相は簡単だ。王子の婚約破棄の噂は、完全に“向こうの王宮のゴシップ”だ」
「え、ゴシップ!?」
「そう。誰かが言ったんだ、“マリアとジョニーの婚約はどうなってるのか”って」
「つまり、私たちの勘違いだったのね……」
マリアは膝から力が抜ける。
しかし、メリンダはニヤリと笑った。
「でもね、こうやって大騒ぎしてるのを見るの、結構楽しいよね」
「メリンダ!」
「いや、でも確かに面白い」
マリアもつい笑ってしまう。
ブリューゲルがさらに冷静に一言。
「……この国の婚約破棄、結構ユルいな」
「そ、そうね……」マリアは苦笑した。
そして、マリアは心の中で決意する。
『次からは、ゴシップに惑わされないようにする……!』
だが、その決意も束の間、廊下の奥からメリンダの声が聞こえた。
「次は“王子が幽霊に乗っ取られた事件”よ!」
「いや、勘弁して!」
こうして、平和とは程遠い日常が、また始まったのだった。
第四章 「張本人は誰だ!? マリアの大捜査線」
「よし……次は絶対にゴシップの元凶を突き止める!」
マリアは拳を握りしめ、王宮の広間をうろうろした。先日の婚約破棄騒動で、全員がぐちゃぐちゃに絡み合ってしまったのだ。
「まずはセッセに聞こう。」
廊下の角を曲がると、セッセが紙とペンを持ち、壁に向かって何やらメモしている。
「ねえ、セッセ。婚約破棄の噂、どこから出たの?」
「え? 俺ですか? いや、俺はただ、“マリア、ジョニーに注意したほうがいいかも”ってメモしただけで……」
「それって十分怪しい!」
マリアは大声で突っ込むが、セッセはあっけらかんとしている。
「じゃあ、ジョニーは?」
「えー、俺? 寝てただけだからなー」
ジョニーは布団から伸びた手で指を1本立てたまま言った。
「……寝言で婚約破棄したとか?」
「いや、寝言で“美味しいピザ食べたい”しか言ってない」
その隣でメリンダがにやにやしながら口を挟む。
「ほら、マリア。みんな言い訳してるけど、あなたの騒ぎ方が面白すぎるから、噂がどんどん膨らんだんじゃない?」
「な、なんですって!」
「でも、事実がないと人は動かないものよ」
マリアは拳を振り上げたが、思わず吹き出してしまう。
ブリューゲルは壁際で冷静に観察していた。
「……この国のゴシップ、複雑怪奇すぎて迷宮入りしそうだ」
「ブリューゲル! ちょっと手伝ってよ!」
「いや、俺は静観するのが趣味です」
そんな時、マルコが現れ、笑顔で手を振る。
「俺ですか? いや、俺はただ“王子は怒りっぽいから気をつけろ”って言っただけで……」
「いや、完全に火に油を注いだでしょ!」
「そう言われると、確かにちょっと面白かったかも……」
マリアは頭を抱える。
「全員がちょっとずつ悪いけど、誰も悪くない……?」
そこにイーサンが登場。
「よく聞け、マリア。真相は簡単だ」
「イーサン、あなた頼りにしてる!」
「王宮内の掲示板に、誰かが落書きしたんだよ。“マリアとジョニー、婚約破棄”ってね」
「掲示板?」
メリンダが興奮して身を乗り出す。
「それなら、張本人はすぐ見つかるかも!」
「うん、でも掲示板って結構人通りある場所だよね……」
マリアは早速、掲示板へ駆け出す。
「誰がこんなことを書いたのか、突き止める!」
掲示板の前には、ジョニー、セッセ、マルコが偶然集まっていた。
「俺じゃないって!」
「いや、俺でもない!」
「っていうか、俺も!」
マリアは深呼吸して、証拠探しを開始する。
「よし、足跡、手の跡、インクの種類……」
ジョニーが首をかしげる。
「そこまでやるの?」
「徹底捜査よ!」
そこにメリンダが登場。
「待って、マリア。もしかして、犯人は掲示板の管理人かもしれないよ?」
「管理人?」
「そう、王宮の情報を一番知ってる人!」
マリアは考え込む。
「……それだ!」
そして二人は管理人室へ向かう。
「ここにいるのは……?」
机に向かう管理人は、書類の山に埋もれながら笑顔で手を振った。
「こんにちは! ああ、掲示板の件? 実は僕がちょっと……冗談で書いたんです」
「冗談!? こんな大騒ぎになるなんて!」
「いや、面白いからつい……」
マリアはため息をつく。
「もう……本当に、王宮の人間って……」
ブリューゲルが小声でつぶやく。
「……平和って、結構めんどくさいものですね」
その時、ジョニーがニヤリと笑った。
「でも、こうやってみんなが大騒ぎしてるの、面白いかもな」
「ジョニー!」
マリアは思わず笑ってしまった。
メリンダも拍手して言った。
「ほらね、マリア。結局、騒動を楽しむことが一番の解決策だったんだよ」
「……まあ、そうね」
マリアは肩をすくめながら、心の中で決めた。
『次からは、ゴシップに巻き込まれても、笑い飛ばすしかない……!』
そして、王宮の日常は今日もカオスなまま、続いていくのだった。
第五章 「マリア、ジョニーと意外な共同作戦」
「ジョニー、ちょっといい?」
マリアは廊下の角で、例の婚約破棄騒動以来、やたら距離が近くなったジョニーを呼び止めた。
「ん? マリア? なんだろう、もしかしてピザの話?」
「違う! もっと重要なことよ。王宮内で最近、妙な動きがあるの」
「妙な動き?」
ジョニーは首をかしげながら、髪の毛をぼさっと掻き上げた。
「掲示板の件で気づいたの。誰かがわざと噂を流して、人を混乱させてる……」
「なるほど。ゴシップの魔術師ってわけか!」
「そう! でも、私は一人じゃ調べきれない……」
マリアの目が真剣に光る。
「だから、ジョニー、協力して!」
「ええ、任せて! 俺の得意分野だ!」
ジョニーは得意げに胸を張るが、よく見ると足元にはピザの紙くずが落ちていた。
「……その得意分野って、本当に調査?」
「もちろんだよ、食べ歩きも調査の一環さ!」
とりあえず二人は王宮の秘密通路へ向かう。
「ここを通れば、監視の目を避けられるんだ」
ジョニーは小さな扉を押し開け、マリアを中に招き入れる。
「わあ……本当に秘密通路ね」
薄暗い通路の壁には、蜘蛛の巣と古い油絵がかかっていた。
「ジョニー、ここに来るのは初めて?」
「いや、たまに散歩してるんだ。でも、誰も気づかないようにこそこそ歩くのが楽しいんだよね」
二人が進むと、どこからか小さな声が聞こえてきた。
「……これは……!」
影に隠れたマリアは耳をすます。
「なんてことだ……セッセがまた何かやってる」
「え? 俺?」
突然、セッセが顔を出す。
「いや、違う違う! 今日はただ、壁の落書きをチェックしてただけだよ!」
「それって、私たちを監視してたってことじゃ……」
マリアは小声でつぶやき、ジョニーは吹き出す。
「セッセ、君って本当に面白いね」
そこにメリンダが後ろから現れる。
「ふふ、あなたたち、また秘密通路探検?」
「メリンダ! どうしてここに……」
「あなたたちが騒いでるから、ちょっと見に来ただけ」
メリンダは壁の影からふわりと現れ、まるで幽霊のようだ。
突然、通路の奥から物音がした。
「……誰か来る!」
ジョニーは慌てて壁に隠れる。
しかし、マリアは冷静に耳を澄ます。
「……ブリューゲル?」
小さな声でつぶやくと、ブリューゲルが懐中電灯を持って現れた。
「うーん、迷子になったわけじゃないんです。ちょっと、王宮内の秘密を確認していただけで……」
「秘密を確認って……」
マリアは眉をひそめるが、ジョニーはにやにや笑う。
「マリア、俺たち、もしかして宝探しみたいになってる?」
「そうね……ちょっと、面白いわね」
マリアは心の中で笑った。騒動の真相を追うはずが、いつの間にか冒険になっていたのだ。
二人がさらに進むと、壁に小さな紙切れが貼ってあった。
「これは……!」
マリアは紙を拾い上げる。そこには、先日の婚約破棄のゴシップの元となるメモが書かれていた。
「つまり、この紙が全ての始まりか……」
「ふふ、やっと犯人にたどり着いたね」
ジョニーは得意げに胸を張る。
「でも、犯人が誰なのかはまだわからない……」
その時、紙の影から小さな手が伸びてきた。
「や、やめて! 見つけないで!」
声の主は……小さな王宮の小姓だった。
「え、君がゴシップの張本人?」
「だ、だって……面白そうだったから……!」
小姓は赤面して答える。
マリアは深呼吸し、笑いをこらえる。
「……もう、王宮って、本当に平和なのか混乱なのかわからないわね」
ジョニーは笑いながら、マリアの肩を叩いた。
「でも、こうやって一緒に謎を解くのも、悪くないね」
「ええ、少なくとも一人じゃできなかったわ」
こうして、マリアとジョニーの共同作戦は成功した。
しかし、王宮の騒動はまだ終わらない……
冒険は、まだまだ続くのだった。
第六章 「マリア、王宮内の怪しい影を追え」
「マリア、ちょっと待って!」
ジョニーが廊下の角から飛び出してきた。手には、例の小姓から聞き出した“怪しい影の動き”のメモを握っている。
「何これ、また新しい情報?」
「そう、どうやら王宮内に別の影が潜んでるらしい」
「影って……また誰かゴシップでも流してるの?」
「いや、それが……もっと怪しい。何か企んでる気配だ」
ジョニーの目がギラリと光る。
マリアはため息をつきながらも、興味津々だ。
「ふーん……私、探偵みたいね」
「探偵っていうより、冒険者に近いかも」
ジョニーは腕を組んで、少し胸を張った。
二人は王宮の奥へと足を進める。
「マリア、あそこ見て! 影、影!」
ジョニーが指差した先には、壁に映る不自然な人影。
「……誰?」
二人は息を潜めて近づく。影の主は、どうやらマルコのようだ。
「マルコ、こんなところで何してるの?」
声をかけると、マルコはびっくりして振り向いた。
「うわっ、見つかった! いや、その……ちょっと忍者修行してて……」
「忍者修行?」
マリアは眉をひそめるが、ジョニーは吹き出す。
「マルコ、君は本当に面白いね。忍者って言い張るとは」
しかし、マリアは手元のメモを確認する。
「影の動きと合致してる……これは偶然じゃないわね」
「ふむ、どうやらゴシップの元は、マルコじゃないかもしれないな」
ジョニーも首をかしげる。
突然、通路の奥から足音が聞こえた。
「……これは、イーサン?」
影の主はイーサンだった。手には小さな封筒を握っている。
「マリア、ジョニー……見つかっちゃったか」
「イーサン、その封筒は何?」
マリアは目を細めて訊ねる。
「いや、これ……ただのメモだよ。重要じゃない」
イーサンは慌てて隠そうとするが、ジョニーがすかさず封筒をキャッチ。
「うわっ、重っ! これ絶対なんか入ってる!」
「開けてみて!」
マリアも指示する。
封筒を開くと、中には王宮内のゴシップを書き写した紙がぎっしり。
「なるほど……犯人は複数人で情報を回してたのね」
「ゴシップ連鎖ネットワークだ!」
ジョニーは得意げに叫ぶ。
そこへ、ブリューゲルがふらりと現れる。
「おや、楽しそうだね。僕も混ぜてもらおうかな」
「ブリューゲル……あなたもか」
マリアは頭を抱えつつ、笑いをこらえる。
「みんな、こんなに騒ぎながら王宮を歩くなんて、まるでコメディだね」
「ふふ、そうね。でも、この騒ぎの中で真実を見つけるのも悪くないわ」
マリアは少し誇らしげに胸を張る。
その時、セッセが壁の陰から顔を出す。
「ふふ、皆さん、ここで何してるんですか? また探偵ごっこ?」
「セッセ……もう、君は毎回どこから現れるの!」
ジョニーは笑いを堪えながら叫ぶ。
マリアはふと思いつく。
「ねえ、みんなで協力して、怪しい影を追い詰めよう」
「賛成!」
ジョニーもブリューゲルも小さくうなずく。
こうして、マリア率いる“王宮内ゴシップ追跡チーム”が結成された。
「まずは情報の出どころを突き止める! そのためには、皆で分担して動くの!」
「ふむ、僕は北棟を調べるよ」
ブリューゲルは冷静に役割を決める。
「じゃあ私は南棟を担当」
マリアは決意の表情。
「ジョニーは?」
「もちろん、影の動きを追いながら、面白ポイントも記録するよ!」
「面白ポイントって……調査じゃないでしょ」
マリアは呆れ顔だが、心の中でクスッと笑う。
こうして、王宮内の怪しい影を追う大冒険が再び始まった。
ゴシップ、秘密通路、忍者ごっこ……すべてが絡み合い、マリアたちの一日はコメディとサスペンスの混ざった混乱で埋め尽くされていく。
「ふふ、これは予想以上に面白くなりそうね」
マリアは笑顔で前を見据えた。
ジョニーもその横で、嬉しそうに笑いながらつぶやく。
「マリア、君と一緒なら、どんな騒動も楽しめそうだ」
果たして、王宮内の影の正体は誰なのか――?
コメディと混乱の嵐は、まだまだ続くのだった。
第七章 「マリア、王宮中の秘密集会に潜入」
「さて、今日の任務は……」
マリアは手に持ったメモをじっと見つめる。
「秘密集会の潜入よ、みんな」
「潜入って、忍者ごっこの延長?」
ジョニーは帽子を斜めにかぶり、やる気なさそうに言う。
「いや、今回は本物よ。本物の秘密集会。ゴシップの元を突き止めるの!」
マリアはきっぱり告げる。
ブリューゲルは冷静に腕を組む。
「ふむ……王宮で秘密集会か。面白そうだね」
「面白いって……ジョニーと一緒だと全部コメディになるけど」
マリアはため息混じりに笑う。
「僕、北棟から偵察するよ」
ブリューゲルは得意げに言う。
「じゃあ私は南棟担当」
マリアは決意の顔。
「ジョニーは……あんたは影担当ね」
「影担当? 僕、影じゃなくて面白担当だと思うんだけど」
「……面白担当も兼任ってことで」
マリアは苦笑い。
その時、セッセがひょっこり現れる。
「ふふ、皆さん、秘密集会に潜入するの? いいですね、私も混ぜてもらおうかな」
「もうセッセ……毎回どこから現れるのよ!」
ジョニーが目を丸くする。
マリアたちは王宮の奥へと進む。壁の影に身を潜め、音を立てないように歩く。
「ねえ、マリア、あそこ見て!」
ジョニーが指差す先には、ランタンの明かりに照らされた廊下。影が揺れている。
「……イーサン?」
影の主はイーサンだった。手には小さな封筒。
「マリア、見つかっちゃったか」
「その封筒、何?」
「いや、これは……ただのメモだよ、重要じゃない」
イーサンは焦って封筒を隠そうとするが、ジョニーがキャッチ。
「うわっ、重っ! 絶対何か入ってる!」
「開けてみるわよ」
マリアが封筒を開くと、中には王宮内のゴシップを書き写した紙がぎっしり。
「なるほど……犯人は複数で情報回してるのね」
「ゴシップ連鎖ネットワーク発見!」
ジョニーは得意げに叫ぶ。
そこへ、マルコが壁の影から顔を出す。
「ふふ、皆さん、ここで何してるんですか?」
「マルコ……また忍者ごっこ?」
「いや、本物の情報調査中だよ」
マリアは苦笑しながらも、心の中でクスッと笑う。
ブリューゲルが小声で提案する。
「じゃあ、情報をもとに集会の場所を特定しよう」
マリアは頷き、ジョニーに小声で指示。
「ジョニー、影の動きを追って!」
「了解! 面白ポイントも押さえるよ!」
「面白ポイントはいいから!」
数分後、秘密集会の場所を特定した。
「やっぱり、ここか……」
マリアは廊下の角に隠れ、息を潜める。
集会の扉をそっと開けると、そこにはメリンダとセッセがいた。
「……なんであなたたちまで?」
マリアは思わず小声で呟く。
「ふふ、だって秘密集会は楽しそうだもの」
セッセは笑みを浮かべる。
メリンダはちらりとマリアを見て、眉を上げる。
「マリア、あなたも参加?」
「いや、潜入よ」
マリアは即答し、扉の影に身を潜める。
すると、ジョセフも現れる。
「やあ、皆さん、こんなところで会うなんて奇遇だね」
「ジョセフ……!」
マリアは心の中で叫ぶ。
秘密集会の内容は、意外にも王宮内の食事や衣装のゴシップが中心。
「え、そんなことで議論してるの?」
ジョニーは小声で呟く。
「ふふ、これだから王宮は面白いのよ」
マリアも思わず笑いをこらえる。
しかし、突然、床のきしむ音。
「え、今の……?」
皆が顔を見合わせる。
どうやら床下に隠し通路があるらしい。
「よし、確認するわ」
マリアは決意の目で進む。
「私もついていく!」
ジョニーは嬉しそうにマリアの後ろをついていく。
秘密通路の先には、王宮内のゴシップを操る黒幕の影が……!
「……誰だ……?」
マリアは息を殺す。
影が振り向き、笑みを浮かべた瞬間――
「ふふふ、やっと来たのね、マリア」
その声に、マリアは思わず噴き出す。
「まさか……あなたが黒幕だったの?」
影の主はにやりと笑い、部屋の明かりをつける。
「そう、そして今日の集会はすべて君のためのサプライズだったのだよ」
マリアは唖然としながらも、思わず笑いをこらえる。
「……結局、王宮のゴシップって、全部コメディじゃない!」
ジョニーも隣で笑いを押さえきれず、肩を震わせる。
こうして、マリアの秘密集会潜入作戦は、予想外のハプニングと笑いに包まれたまま終わった。
王宮内の影とゴシップの迷路――マリアたちの冒険はまだまだ続くのだった。
第十章 「王宮のあと、マリアたちの日常コメディ」
秘密集会潜入の大騒ぎから数日。王宮は何事もなかったかのように、いつもの静けさを取り戻していた。
「ふぅ……やっと落ち着いたわね」
マリアは窓際で深呼吸をする。外の庭では、ジョニーが芝生に転がって手足をバタバタさせている。
「マリアー、見て見て! 芝生で新しいゴシックポーズ考えたんだ!」
「……ゴシックポーズ? ジョニー、それただの転げ落ちてるだけじゃない?」
マリアは呆れながらも笑う。ジョニーは誇らしげにうなずく。
ブリューゲルはそんな二人を眺めながら、片手に書類を持つ。
「君たち、本当に騒がしいね。王宮は静かが一番だと思っていたのに」
「でもブリューゲル、あなたも笑ってたじゃない!」
マリアが指摘すると、ブリューゲルは苦笑。
「……認めよう、あのハプニングは面白かった」
廊下の向こうから、セッセとメリンダの声が聞こえる。
「ふふ、マリア、今日の衣装も可愛いわね」
「ありがとう、でもゴシップ王宮の余韻はまだ消えてないのよ」
メリンダは楽しそうに笑う。
「ところで、あの黒幕……どうなったんだっけ?」
ジョニーが急に思い出したように訊く。
「え、もう許してあげたわよ。ゴシップの黒幕も、ただの寂しがり屋だったの」
マリアはあっけらかんと答える。
マルコが遠くからやって来て、紙飛行機を投げながら言う。
「ふふ、みんな、ゴシップもコメディもほどほどにね」
「マルコ、あなたも楽しんでたでしょ!」
ジョニーが叫ぶと、マルコはにっこり笑う。
イーサンは小さな箱を手にして現れる。
「マリア、これ……みんなへのお土産」
「お土産? 今さら何?」
マリアが開けてみると、中には小さな王宮マスコット人形がぎっしり。
「ふふ、黒幕も入れて、みんなの記念にしたんだ」
イーサンは照れくさそうに笑う。
ジョニーは一つ取り上げ、頭に乗せる。
「うわっ、これ僕にぴったり!」
「いや、全員にサイズ合わせてあるから!」
マリアは手を叩いて笑う。
庭に出ると、ジョセフがベンチに座っていた。
「皆、いい雰囲気だね」
「そうね、ジョセフ。王宮のゴシップも、結局は笑い話にしかならないのよ」
マリアは空を見上げ、遠くの雲を眺める。
セッセが小声で言う。
「ふふ、次はどんな騒動が待っているのかしらね」
メリンダも笑みを浮かべる。
「楽しみね、でも今日は余韻に浸ろうよ」
マリアは庭のベンチに腰を下ろし、深く息を吐く。
「……やっぱり、こうやって笑って終われるのが一番ね」
その隣でジョニーがマスコット人形を抱きしめ、にやりとする。
「マリアー、僕の次の面白ポイントも考えてあるんだ!」
「もう、ジョニー……毎日がコメディね」
マリアは思わず肩を震わせて笑った。
ブリューゲルは腕を組み、少しだけ微笑む。
「この騒動が、意外と王宮の平和の秘訣なのかもな」
マルコも頷く。
「ふふ、確かに……笑いが絶えないって大事だね」
陽は庭に優しく差し込み、風は軽やかに木々を揺らす。
小鳥たちのさえずりと、庭の芝生で転がるジョニーの声。
王宮の日常は、騒動の余韻に包まれながらも、ゆるやかに流れていく。
マリアは微笑み、深く息を吸い込む。
「……これで、ひとまず物語も落ち着いたかしら」
隣のジョニーが小さく頷き、イーサンが人形を整え、セッセとメリンダは楽しそうにおしゃべりを続ける。
こうして、王宮の騒動はひとまず幕を閉じ、笑いと余韻だけが残った。
コメディ満載の日常、そしてマリアたちの冒険は、まだまだ続きそうな気配を残して――静かに幕を下ろしたのだった。
終




