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王子と勇者の悲恋

作者: 夜乃 凛
掲載日:2026/01/20

「私、アルトリア様の事を愛しています」


「リーリア、俺もだ」


 二人の男女が抱きしめ合っている。服装は貴族の服。

 アルトリアが男、リーリアが女である。


「でも、私たち、報われないのですよね?」


「報われないの定義を教えろ。交われないのがそんなに嫌か」


「嫌です」


「ならば諦めろ」


「そんな……」


「……俺は、来月死ぬ」


「え?」


「寿命だ。呪術師に占いをさせた。どうやら、俺は来月死ぬ運命らしい」


「そんな!!そんな、ことが……」


「幸せになれ」


「……」


「愛していた」


 そう言うと、アルトリアは、颯爽とリーリアを残して、部屋から出ていった。

 残されたリーリアは、愕然と立ち尽くしていた。



 後日。リーリアは全身黒い服装で、国一番の呪術師の所を訪れていた。

 空は快晴。リーリアの決意のように。


 呪術師の家。紫水晶が光り、壁は本棚ばかり。

 その中で、妖艶な老婆が笑みを浮かべていた。


「おやおや、これは可愛らしいおじょうさん。どうなすって?」


「どうもこうもありません。何故、アルトリア様が死んでしまうのですが」


「ああ、あの坊ちゃんのことかい血筋だよ。あの坊ちゃんは、生まれた時から生贄にされる運命だったのさ」


「運命の定義を教えてください」


「教えて、どうする?」


「私がその運命を背負います」


 リーリアは言い放った。意味するところが、つまり。


「死ぬってことかい?」


「死ではありません。アルトリア様の生です」


「ほう」


 呪術師は目を細めた。


「気骨があるじゃないか。いいだろ、教えてやるよ。来月までに、隣国バラスタとの戦争に勝たねば、アルトリア坊ちゃんは死んで生贄になる。要は、隣国に勝てばいいだけの話じゃの。しかし、この国の戦力では到底不可能。だから、運命なんじゃよ」


「ありがとうございました。では、これにて」


「待て、何をするつもりじゃ」


「勝ちます」


 そう言ったリーリアの目は、光に染まっていた。



「柵を設置する必要はありません。そう、防御に回す手間を解いてください。無意味です。攻撃に転じなければ、意味がありません。騎馬隊は隣国北東部から進撃。320頭回してください。一騎残らず。隠密部隊の35人は、隣国北西部より侵入してください。隠密部隊、誇りを持ちなさい。貴方達に、国の将来がかかっています。貴重な大砲3機は、南部より運び込んでください。そのうち、二発は囮に使います。敵の騎馬隊の足止めと同時に。残りの一騎は、隣国本拠地すれすれを狙ってください」


 リーリアが指揮を取っていた。彼女は、三週間寝ていない。

 読書。読書。戦略。戦略。

 アルトリアへの愛。


「本拠地を狙ってはいけないのですか?」


「ダメです。本拠地が崩壊すれば、話が通らなくなります。手加減が必要です。話が通じる程度の。作戦は以上です。皆さん、出撃の準備を。いいですか、皆さん」


 リーリアはドンと机を叩いた。涙を流しながら。


「勝って!!」


 そして、戦争が終わった。どちらが勝ったか。リーリア達の国である。

 リーリアの覚悟が、実を結んだのだ。

 その話を聞きつけた、アルトリアが急いでリーリアの元に駆け付けた。


「リーリア!!」


「アルトリア、様」


 リーリアはベッドに伏していた。無理が祟ったのだ。


「リーリア、しっかりしろ。呪術師から話は聞いた。お前はいつも無茶を。言う。結婚してくれ」



「……その言葉、ゲホッ、だけが、聞きた、ゲホッ、かった」


「リーリア!?リーリア!!」


「……」


「目を開けろ!!返事をしろ!!」


 アルトリアが涙を流している。隣にいる侍女が、涙を流しながら言った。


「お亡くなりなられました」



 これは、一つの悲恋のお話。

 誰しもが幸せになれるわけではない。

 貴方たちも、後悔無き生き方を。


お読み頂きありがとうございました。

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