王子と勇者の悲恋
「私、アルトリア様の事を愛しています」
「リーリア、俺もだ」
二人の男女が抱きしめ合っている。服装は貴族の服。
アルトリアが男、リーリアが女である。
「でも、私たち、報われないのですよね?」
「報われないの定義を教えろ。交われないのがそんなに嫌か」
「嫌です」
「ならば諦めろ」
「そんな……」
「……俺は、来月死ぬ」
「え?」
「寿命だ。呪術師に占いをさせた。どうやら、俺は来月死ぬ運命らしい」
「そんな!!そんな、ことが……」
「幸せになれ」
「……」
「愛していた」
そう言うと、アルトリアは、颯爽とリーリアを残して、部屋から出ていった。
残されたリーリアは、愕然と立ち尽くしていた。
後日。リーリアは全身黒い服装で、国一番の呪術師の所を訪れていた。
空は快晴。リーリアの決意のように。
呪術師の家。紫水晶が光り、壁は本棚ばかり。
その中で、妖艶な老婆が笑みを浮かべていた。
「おやおや、これは可愛らしいおじょうさん。どうなすって?」
「どうもこうもありません。何故、アルトリア様が死んでしまうのですが」
「ああ、あの坊ちゃんのことかい血筋だよ。あの坊ちゃんは、生まれた時から生贄にされる運命だったのさ」
「運命の定義を教えてください」
「教えて、どうする?」
「私がその運命を背負います」
リーリアは言い放った。意味するところが、つまり。
「死ぬってことかい?」
「死ではありません。アルトリア様の生です」
「ほう」
呪術師は目を細めた。
「気骨があるじゃないか。いいだろ、教えてやるよ。来月までに、隣国バラスタとの戦争に勝たねば、アルトリア坊ちゃんは死んで生贄になる。要は、隣国に勝てばいいだけの話じゃの。しかし、この国の戦力では到底不可能。だから、運命なんじゃよ」
「ありがとうございました。では、これにて」
「待て、何をするつもりじゃ」
「勝ちます」
そう言ったリーリアの目は、光に染まっていた。
「柵を設置する必要はありません。そう、防御に回す手間を解いてください。無意味です。攻撃に転じなければ、意味がありません。騎馬隊は隣国北東部から進撃。320頭回してください。一騎残らず。隠密部隊の35人は、隣国北西部より侵入してください。隠密部隊、誇りを持ちなさい。貴方達に、国の将来がかかっています。貴重な大砲3機は、南部より運び込んでください。そのうち、二発は囮に使います。敵の騎馬隊の足止めと同時に。残りの一騎は、隣国本拠地すれすれを狙ってください」
リーリアが指揮を取っていた。彼女は、三週間寝ていない。
読書。読書。戦略。戦略。
アルトリアへの愛。
「本拠地を狙ってはいけないのですか?」
「ダメです。本拠地が崩壊すれば、話が通らなくなります。手加減が必要です。話が通じる程度の。作戦は以上です。皆さん、出撃の準備を。いいですか、皆さん」
リーリアはドンと机を叩いた。涙を流しながら。
「勝って!!」
そして、戦争が終わった。どちらが勝ったか。リーリア達の国である。
リーリアの覚悟が、実を結んだのだ。
その話を聞きつけた、アルトリアが急いでリーリアの元に駆け付けた。
「リーリア!!」
「アルトリア、様」
リーリアはベッドに伏していた。無理が祟ったのだ。
「リーリア、しっかりしろ。呪術師から話は聞いた。お前はいつも無茶を。言う。結婚してくれ」
「……その言葉、ゲホッ、だけが、聞きた、ゲホッ、かった」
「リーリア!?リーリア!!」
「……」
「目を開けろ!!返事をしろ!!」
アルトリアが涙を流している。隣にいる侍女が、涙を流しながら言った。
「お亡くなりなられました」
これは、一つの悲恋のお話。
誰しもが幸せになれるわけではない。
貴方たちも、後悔無き生き方を。
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