第27話 元勇者のおっさんの仲間は敵を圧倒するようです
暗い、暗い海の中。漆黒の手に掴まれ、終わりのない深海へと引きずり込まれている。
幸いにも本当の海とは違い息は出来た。
しかし状況は最悪。何処へ連れて行かれているのかも分からない。
そんな中でもアーリシアは冷静に状況を解析していた。
(こんなもので私を封じたつもりなんてね)
アーリシアが杖を振るうと、辺りの闇が瞬く間に剥がれ落ちる。
根を切り取られた様に生気を失っていく手は、アーリシアを放れて消えていく。
「アナタが犯人ね。残念だったわね。こんな魔法は効かないわ」
落下状態からふわりと地に足をつけたアーリシアの目の前には、枯れ枝の様に痩せこけた男がいた。彼女を睨みつけ、爪を噛む姿からは、自身の魔法が破られた悔しさが滲み出ている。
「ぼ……ぼぼぼ僕の魔法の弱点をすぐに把握するなんてやるじゃないか」
「あら褒めてくれてるの? ありがと。けどあれくらい朝飯前よ」
「う……うううるさい! ぼぼぼ僕は怒ってるんだ! 僕のかかか完璧な魔法を、だだだ台無しにしやがって!」
「完璧? あんな陰気な魔法のどこがよ」
「ぼぼぼ僕の魔法を、ば……ばばば馬鹿にするなぁ!」
男は瞬時に杖をアーリシアに向けると火の玉を連射した。
しかしアーリシアは光で出来た魔法の壁を作ると防御。魔法壁越しに杖を男に向けて、同じ火の玉を放った。
流れる様な早業に防御する暇もなく魔法が男に直撃する。
「熱い! 熱い熱い!」
地面に転がり火を消そうとする男の頭を踏むとアーリシアは問う。
「ねぇ、ここって何処かしら?」
「だ、だだだ誰が教えるか!」
「そう。だったら」
男の右腕が消し飛んだ。
一瞬遅れて脳が理解すると叫び声がこだまする。
「コソコソ隠れて人を妨害するだけの弱虫が、私に敵うと思ってるの?」
アーリシアの言葉は男の耳には届いていない。
涙と唾液にまみれ、ぐちゃぐちゃになった顔で男は泣き叫び続けている。
暴れようにもひ弱な手足では無意味な抵抗。
ただその場で絶望に打ちひしがれている。
終わらない絶叫。
冷えきった視線を向けるアーリシアは男の眼前に腕を吹き飛ばした魔法を放った。
「もう一度言うわ。ここが何処か教えなさい。しないなら次は残った腕が消えるわよ」
その言葉に男の声が止む。
怯える小動物の如く震える男は何度も何度も小さく頷く。
「ありがと。それじゃあ早く念話が届く場所に行かないと」
アーリシアは拘束魔法で男を縛り付けると、引きずって共に移動することとなった。




