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第25話 元勇者のおっさんは一人先に進むそうです

 地下に入るとそこは巨大な迷路となっていた。

 既にシーが掴まり、調査が入ったことが拡散されているのか、傭兵が次々とノルバ達に襲い掛かってくる。


「邪魔だ、どけぇ!」


 ノルバは溜まりに溜まった怒りを乗せ、道を塞ぐ輩を斬り捨てていく。

 最高機密だけあって警備は厳重。しかし道を塞ぐ障害も彼にとっては小石。容易く蹴り飛ばしていく。


「鬱陶しい!」

「落ち着きなさい、ノルバ」

「落ち着いてられっか!」


 心が急く気持ちは分かる。だが感情に任せて動けば足元をすくわれる。

 それが分かっているからこそ、アーリシアは言葉をかけたのだが、足早に進むノルバには聞き入れられない。

 しかし彼女もノルバの気持ちが分からない訳ではなかった。

 故に続けて声を掛ける。


「先に行きなさい。アナタが障害を取り除いてくれれば、私達は楽に進める。安心しなさい。道のりはインプットしたから、適宜指示を出すわ」

「なんだとキサマ! 私から情報を抜いたのか!」

「うるさい」

「むぐんぐぐ!」


 リッカに抱えられたまま喚くシーの口を、アーリシアは魔法で塞ぐ。


「分かった。助かる」


 礼を伝えるとノルバは一瞬にしてその場から走り去っていく。


「私達も行くわよ!」


 アーリシア達もシーを連れて急ぎ後を追った。


※※※


 それから少し経ち――

 障害を排除しつつ、一人先頭を走るノルバは不意に足を止める。


「おいアル! アル!」


 突如としてアーリシアからの念話が途絶えた。

 念話可能距離を超えた訳ではない。ノルバもそこは意識をして進んでいた。

 アーリシア達に何かあったのか。そう思った時、迷路の陰から氷の弾丸が撃ち込まれる。


「テメェの仕業か」

「左様。見知らぬ波があったのでな」


 全て弾いてノルバが聞くと、奇襲犯は姿を現す。

 外套と大きく尖った笠を被った訝しげな魔法使い。

 誇示する様に魔力の圧がノルバの肌を打つ。


「なら死ねよ」


 だがノルバの相手ではない。その魔法使いは気付く間もなく、上半身と下半身が泣き別れとなった。


「おいアル聞こえるか⁉」

(良かった。妨害魔法を使ってる奴いたでしょ? もう倒した?)

「あぁ」


 ノルバは走りながら、剣に付いた血を振り払う。

 手をこまねく敵ではなかったが、アーリシアの通信魔法を妨害出来る程度には熟練の魔法使いだった。


「警備が厳重になってきてるな。他の道はねぇのかよ」

(ないわね……い…………私達が……では…………よ?)

「何だって? おい、アル! ……クソッ! また妨害か」


 ノルバを囲い現れたのは魔法使いと剣士の大群。

 金で雇われた罪の片棒を担ぐ輩共。

 ノルバの腹の内が煮えたぎる。


「テメェらの金の為に、罪のない命がどれだけ犠牲になってるか知ってるか」

「お? 何だっておっさん。ボケて独りで喋ってんのか?」


 剣士の一人が耳に手を当てバカにした。仲間がどれだけ殺されていようと臆することはないらしい。強者故の余裕か、ただのバカか。どちらでもいい。そんな輩も次の瞬間には首が空を舞う。


「黙れよ」

「う、うおぉぉぉぉぉ! やっちまえー!」


 動揺と共に一斉に斬り掛かる剣士達。全方位からの襲撃だ。逃げ場はない。

 ならばとノルバは剣を地面に突き刺すと電撃を流した。

 電撃が地面を走り、近くにいた剣士を一瞬にして黒く炭化させる。

 魔法使いには距離をとったり、浮遊したりで電撃は回避された。

 だがそんなことは想定内。

 ノルバは剣を抜くと、空中にいる魔法使い目掛けて跳躍し、瞬く間に距離を詰める。


「キサマの攻撃など通らんわ!」

「そうかよ」


 そこらの防御魔法の壁などノルバには紙きれ同然。魔法の上から叩き斬ると、それを足場に次の敵へと飛ぶ。


「うわぁぁぁぁ!」「やめろぉ!」「来るなぁぁぁ!」


 怯える敵だろうと容赦はない。瞳の残光だけを置いて、ノルバは残る魔法使いを斬り伏せていく。

 その姿はまさに電光石火。何十人といた敵は数分掛からずに沈黙した。

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