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第24話 元勇者のおっさんは奴隷商会に乗り込むようです

 ライオネットアイ商会の本部支部を含めた全面調査。それに伴い参加者は四人一組のパーティーに分けられた。

 そして各パーティーは客や業者を装い、馬車に乗って各々が任せられた場所へと向かっていた。


(いい? ノルバとエルノは既に顔が割れてる。だから私の後ろを三人でついてきて。合図を出すまでは待機よ)


 通信魔法を使い、エルノは作戦を振り返る。

 念には念を。何重にも阻害魔法を重ねた上での通信魔法で、声を出すことなく会話をこなす。


(疑っている訳ではありませんが、我々だけで大丈夫なのですか)


 外で馬を操作するリッカが聞いた。


(大丈夫よ。アナタは分かってるでしょ。このパーティーが一番強いってこと)

(まぁ、はい)


 このパーティーのメンバーはノルバ、リッカ、アーリシア、エルノだ。

 考え抜かれた最も適したメンツであることはリッカ自身も分かっていた。

 しかし不安は拭いきれない。

(魔王はそこにいるのでしょうか)

(分からないわ。けど首輪の製造が地下で行われていることは分かっている。魔族の力が必要な以上、どちらかはいる筈よ)


 あまりにもさらっと答えるアーリシアに、リッカは関心を覚えた。

 恐怖がない筈がない。それどころか最も近い距離で魔王の真髄を体験している。それなのに怯えを感じさせぬ佇まい。

 それはノルバも同じ。落ち着いて目を瞑る様子とは裏腹に研ぎ澄まされ続けている神経には、話し掛けれることすら許されない圧が感じられる。


(後少しです)


 街には他のパーティーも来ていた。

 第一陣がノルバ達のパーティー。第一陣の後に二陣の突入。残りのパーティーは地上の警戒にあたる手筈となっている。

 馬車が歩みを止めると――


「着いたか」


 ゆっくりとノルバの目が開かれる。

 そこには世間知らずな冒険者も、子供の様にはしゃぐダンジョン攻略者もいない。かつて燻っていた男は、殺意を鞘に隠し馬車を降りていく。

 彼らの調査する場所は最も危険だと判断されたライオネットアイ商会本部。かつてフューを引き取る手続きをした場所だ。

 地理は以前から奴隷制に反対していたアーリシアの指示でエルノが調べており、完全に把握してある。少数であってもネズミ一匹とて街の外に逃がしはしない。

 アーリシアが店の呼び鈴を鳴らすと何も知らぬシーが姿を現した。


「おやおや大所帯で。いらっしゃいませ。今宵はどういったご用件でございましょうか」


 以前とは違う明るい声色での出迎えだ。

 ノルバとエルノには気付かず、ただの客であると思い込んでいる。


「闘技場を開こうと思っててね。質の良い奴隷を見繕いに来たの」

「左様でございますか! それは是非と私めの商品からご購入下さいませ。上等な商品を仕入れておりますので。ささ中へどうぞ」


 一歩入ると思い出される。ここがどんな場所であったかを。

 変わらず漂う鼻を刺す獣臭。憎悪をたぎらせる、狭い檻に入れ込まれた奴隷の数々。

 湧き上がる怒りを抑え、ノルバは素性を隠す為に巻いた布で、更に顔を隠す。

 アーリシアだって同じ気持ちの筈だ。だがその顔には一切の感情はない。貼り付けた偽の表情で相手を欺いている。


「こちらなんてどうでしょう。捕獲する為に数十人が犠牲になった竜人です」

「いいわね。ガタイも良いし長続きしそう。けどねぇ……」

「ではこちらは……――」


 本当に奴隷を購入しに来たのではと錯覚してしまう演技で、アーリシアは時間をかけてしっかりと奴隷を品定めしていく。

 そしてある程度奥まで入り込み、シーが逃げられない位置に来ると――

 アーリシアは光弾をシーに放った。


「何を――」


 直撃し、地面に転がるシーが疑問を呈するよりも早く、光の縄がその体を拘束した。

 そしてアーリシアは偽りの仮面を脱ぐ。


「首輪の製造場所に案内しなさい」

「キサマら……騙したなッ!」

「今更気付いたって遅いわよ」

「侵入者だぁ! 殺せぇ!」


 シーの叫びで何処に隠れていたのか、わらわらと傭兵が出てくる。


「こいつらは殺したっていいんだろ?」


 ノルバは頭に巻いた布を取り、今にも噴き出しそうな怒りに栓をしている。そんな声でアーリシアに聞いた。

 アーリシアが「いいわよ」と返事をした次の瞬間、一筋の剣閃が光り、傭兵達は成す術もなく地に伏す。


「あ、あぁ……。お、お前は……」

「さっさと案内しろ。お前もこうなりたくなかったらな」

「わ、分かった! 案内する! 案内する!」


 ガチガチと歯を振るわせるシーに案内させ、ノルバ達は地下へと続く道へと入っていった。

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