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第17話 元勇者のおっさんは第2階層を攻略するそうです

 長い階段を下り、一行は第2階層へと繋がる扉の前に辿り着く。

 光の幕を越えれば第2階層。何事もなく第1階層はクリア出来たが、この調子でいけるとは限らない。

 リッカは扉の前で一度足を止め、メンバーの気を引き締める。


「気を抜くなよ」

「分かってるって。早く行こうぜ」

「その心持ちを変えろと言っているんだ」


 案の定な返事にリッカは苦言を呈しつつ、第2階層へ踏み入る。

 途端、空気が変わった。

 先程までの草木の爽やかな匂いは遮断され、下から吹き上がる風が体に打ち付ける。


「暗いな」


 視界の先には闇夜が広がっている。

 うっすらと周囲は確認出来るが3メートル先も見えやしない。

 それだけではない。ノルバ達のすぐ先は断崖絶壁。その遥か先に光を放つ扉があるが道がない。

 下はおそらく奈落。落ちれば命はない。

 ではどうするのか。その答えは簡単だった。

 そもそも道がない訳ではない。正確には見えないだけだ。


「エルノ殿、頼めるか」

「はい」


 リッカに言われエルノは杖を構えた。


「シャインフロア」


 そして魔法の名を口にすると、光の粉が周囲に降り注ぐ。

 その光の一部は落ちることなく空中に積り、目的地までの空白だらけのパズルの様に配置された道を照らし出した。


「私の後に続け」


 先陣を切ってリッカが照らされた道を進んでいく。

 足場は丈夫で、ちょっとやそっと暴れたくらいでは壊れる気配はない。ノルバ達も続いて道を進んだ。

 その時、突如として横殴りの突風が吹く。

 体が浮き上がるほどに強烈な風に、吹き飛ばされまいとノルバ達はすぐさまその場にしゃがみ込む。

 他のダンジョン参加者も同じくしゃがんだり、魔法を使い突風に対処する。

 しかし、全てのダンジョン参加者が対処出来た訳ではなかった。


「うわぁーーーー!」


 暗闇の中から叫び声が響く。

 瞬く間に小さくなっていく声。風に押されて落ちたのだ。

 パーティーメンバーが落ちた者の名を叫ぶが、この暗闇だ。助けようがない。

 闇夜に溶けて消えていった声に、悲しみの声だけが重なる。


「大丈夫か⁉ こっちは誰も落ちてないか⁉」


 ノルバはすぐに自身のメンバーの安否を確認した。

 全員揃っている。ノルバは安堵の息を漏らすと立ち上がった。


「ここで落ちれば誰も助けられない。細心の注意を払っていくぞ」

「元よりそのつもりだ」

「はい」

「了解だ」


 エルノの魔法で進行方向を照らしつつ、慎重に進んでいくノルバ一行。

 途中何度も突風が吹くが乱れることなく、第3階層への扉へと向かっていた。

 そんな時だった。風はない。にも関わらず暗闇から悲鳴が聞こえた。


「全員警戒しろ!」


 リッカの指示などなくとも全員が武器を構え、周囲を警戒する。

 四方八方から悲鳴がこだまする。

 何かがいる。


「エルノ! もっと周りを照らしてくれ!」

「はい!」


 エルノは魔法を使おうとした。しかしそこにリッカは冷静に、だが慌てた感情を隠しきれないまま指摘をする。


「そんなことをすれば足場が見えなくなるぞ!」

「うるせぇ! このまま死んだら一緒だろうが! エルノやれ!」


 エルノが辺りを照らしたのと同時、何かがノルバ目掛けて急襲してくる。

 音も気配もなく現れたそれは、鳥と言うにはあまりにも巨大で、刃が連なった翼を持っていた。

 人間など軽々と収まるほどに巨大なくちばしでノルバを襲い掛かるが、ノルバも簡単にやられはしない。その場でノルバは剣を振るい、ダンジョンモンスターを口元から真っ二つに斬り裂く。

 勢い付いたダンジョンモンスターはそのまま奈落へと消えていった。

 だがまだ安心は出来なかった。


「気ぃ抜くなよ。まだまだ来るぞ!」


 言葉通り、開けた視界に次々とダンジョンモンスターが映り込んできた。

 通常ならば相手にもならないレベルだ。しかし今は下手に動けない場所に加え、味方との距離も近い。故に大きく動けない。

 恐怖が足を絡めるそんな状況で、だがノルバ達は臆することなくダンジョンモンスターを討ち倒していく。

 他パーティーもダンジョンモンスターを迎え討つが、足場の少なさやダンジョンモンスターに押されて奈落へと落ちていく者が後を絶たない。ひたすらに死の恐怖だけが伝播していく。

 漸く襲撃が途切れた頃には、第2階層にいたパーティーは半数ほどに減っていた。


「あんな奴らがいるなど聞いていないぞ」

「でもまぁ、何とか凌げて良かった」

「エルノ、怪我はない?」

「ありがとう。大丈夫よ」


 一呼吸おき、ノルバ達は再度進行を開始する。

 道中には血の滴る床に、人やダンジョンモンスターの死体が溢れていた。それだけでなく仲間の死で戦意を喪失した者も少なからずいた。

 だが手を差し伸べはしない。ダンジョンでは何よりパーティーメンバーの命が重視される。気を抜かずとも死が間近にある場所だ。非情かもしれないが、他パーティーの救命を優先している暇などないのだ。


「さっさとこんなとこ抜けちまおうぜ」


 驚異のなくなった道をノルバ達は急ぎ進んでいった。

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