71話「クソガキ店員とクソ客一ノ瀬」
夏休みももう後半にさしかかってきたある日。昼過ぎに目が覚めた俺は、腹ごなしに何かないかと冷蔵庫を漁るが、出てきたのはカビの生えたチーズと消費期限が過ぎて腐った卵だけだった。夏休みだしチャレンジしてみることも考えたが、無限うんこ増殖機になることを危惧してやめておいた。
というわけで、まず朝のお勤め(うんこ)を済ませ、それからデニムのパンツに、藍色のシャツを羽織ると外に出た。
クソ暑い炎天下を、ダラダラと歩く。適当にあてもなく飲食店を探してぶらぶらと歩いていると、家から十分ほど歩いたところで、カフェが目に映った。男一人で入るのにハードルが高すぎないくらいの可愛すぎず、お洒落すぎないほどよい外観だ。ここでいいやと思い、店のドアを開けて中に入る。涼しい空気が全身を覆う。
「いらっしゃいま―――」
入り口まで挨拶に来たウエイターが俺の顔を見るなり、持っていたトレイを落とす。その姿は小さく、よくそんなサイズの制服あったな。というようなものだった。そしてそいつは、目を見開いて、驚きから立ち尽くしていた。どうやら自分たちがしたことをちゃんと覚えているようだ。そう。そのカフェで働いていたのは、桑名ひかりだったのだ。
「あーあーあーあーあーあー」
君も運が悪いねえ。よーし。今日はたくさんサービスしてもらおうかなあ。
「お、お前何で⁉どうやってここが分かった!」
慌ててトレイを拾いながら、食い気味に焦りながら尋ねてくる。
「何ってそんなの君が働いているんだから来るに決まってるじゃないか。僕と君の中じゃないか。水臭いなあほんと。今日はたーくさん注文するからねえ♡」
瞬時に桑名の顔が青ざめていく。
「で、いつから働いてんだ?」
「な、夏休みだけ」
「桑名くーん!お客さん詰まってるよ!早く案内して!」
後ろからオーナーと思しき人の声が聞こえてきた。
「は、はい!こ、こちらの席にどうぞ」
ととりあえず俺を厨房とオーナーから遠く、他のお客さんから離れた席に案内する。ほお。やるじゃないか。これは少し燃えてきたぞ。
「い、いらっしゃい。ちゅ、注文は決まってるのか?」
とりあえず接客しなきゃいけないのか、ビビりながらもぎこちない言葉で接客する。
「何がおすすめなんだ?」
「こ、これなんか人気だぞ。安くて美味しい。一番人気だ」
テーブルの上に広げられたメニュー表を指さす。
「おいおいおいおい。お客様を相手にため口?はあ。これだから最近の学生さんは。ちょっと店長呼んでもらえる?」
「お前は残飯でも食ってろ豚野郎」
いつもの調子でふと返してくる桑名。
「すいませーん!てんちょ――――」
「はーい!はいはいはいっ!あ、店長大丈夫ですよ。私が対応しますから!」
遠くから向かってこようとした店長を制止させると、先ほどとは違う対応をする。
「どうかされましかお客様?」
「あのー、なんかメニュー頼もうと思ったら残飯食ってろって言われたんですけどー。どうなってるんですかこの店は?」
「大変失礼いたしました。よく言い聞かせておきますので」
「いやあなたに言われたんですけど。あなたに。なに人のせいにしようとしてるの?やっぱり君じゃ話にならないから店長さん呼んでくれる?てんち――――」
再度大きな声で店長を呼ぼうとした俺をさえぎり、頭を下げる。
「この度は!至らない態度でお客様に多大なご迷惑をおかけしましたこと大変申し訳ございませんでした!どうか店長だけはご容赦ください!ここのバイト時給がいいんです!」
「そうだよね?初めからそうしてくれよまったく。はい。素直に謝れるようになるまで3分20秒かかりましたっ!」
「ぐっ、くそっ!」
「え?くそ⁉今クソって言った⁉」
「言ってねえよ!」
「ええ⁉言ってねえよ⁉」
「言ってません!」
心底悔しそうに顔を真っ赤にして唇をかんでいる桑名。
「今日はこの前の仕返しをたーくさんしてあげるから楽しみにしとくんだぞ~。特にひかりちゃんは一番お口が悪いから期待してていいからね~」
「ぐぬぬぬぬっ」
と必死に歯をかみしめている。
「じゃあ注文してもいいかな?」
「は、はい。どうぞ」
「えっとじゃあ俺は、アイスコーヒーとバナナシェイクと抹茶ケーキと紅茶クッキーとカフェラテの中だとやっぱりアイスコーヒーと紅茶クッキーかなと見せかけて!やっぱりバナナマフィンとイチゴシェイク。かーらーのー明太子パスタ追加のコーンスープからのやっぱりイチゴシェイクなしでコーヒーシェイク先出しで残りのスイーツはデザートで!」
超早口で詠唱のように唱える。
「あ、あのーお客様もう一度分かりやすく仰っていただけると助かるのですが…」
と頬を引くつらせながら腰を低くして丁寧にお願いしてくる。
「は?俺の活舌が悪かったって言いてえのか⁉」
「いえ、そういうわけではなくて注文が大変分かりにくかったため…」
「は?俺の日本語が下手だったって言いてえのか⁉」
「あんたの頭が悪かったって言ってんのよ!いいからもう一回分かりやすく言えバカ」
ふと桑名の後ろから聞きなじみのある声がして見やると、ひもで首の後ろでむすび、首回りや鎖骨を露出させるトップスに、足を大きく露出したショートパンツの二夕見が立っていた。
「お、お姉ちゃん!た、助かった!」
「なんでお前いるんだよ」
「トイレから戻ってきたら見覚えのあるアホ面が視界の端に通り過ぎたからよ」
「またうんこかお前はまったく」
「違うわよ!あんたが言うな!」
顔を赤く染め怒鳴ってくる。
「あんたせっかく人が頑張って労働してるのに水差すような真似してるんじゃないわよ。おとなしくお家でヨーグルト啜ってなさい」
「うるせえ。お前こそ焼肉で食い放題でもしてろ」
二人でバチバチしていると、桑名が水を取りに行った。
「はあ。しょうがないわね」
とため息をつくと、二夕見は自分の席に戻ったかと思えば、荷物を取って俺の向かいに戻って来て、座って番号が書かれたプレートを置く。
「は?相席許可してないんだが?何お前俺のこと好きなの?」
「はあ⁉キモ!なわけないでしょ。ひかりちゃんに要らないことしないように見張ることにしたのよ。あんたと一緒にご飯食べないといけない私の身にもなりなさいよ。いわばトイレで食べるようなものよ」
「俺はどんだけ汚えんだよ!」
ふんっと横を向く二夕見。それからすぐに桑名が水を持って来た。二夕見の姿を見て胸をなでおろすともう一つ取りに行った。
「どうぞお水です」
「ありがと」
二夕見が桑名に笑顔を向けてお礼を言う。
「あのー。さっき注文したんですけどまだこないんですか?もう3分20秒経ったんですけど」
「すいません。もうしばらくお待ちください」
「ジジッ」
そう言った桑名のインカムで誰かが話しているようだ。
「ただいま行きます」
インカムで返事すると急いでキッチンに向かった。
「番号8番でお待ちのお客様。山もりポテトとクリームグラタンです」
桑名がトレイに乗せて料理を運んできた。
「はいお姉ちゃんどうぞ」
と俺にはない笑顔を見せる。
「ありがとー!美味しそー!」
二夕見がにっこり微笑む。
「いただきます!」
二夕見は俺を無視して嬉しそうに食べ始める。
「あのーさっき注文したんですけどまだですか?もう4分20秒経ったんですけど」
「申し訳ございません。先ほど申し上げた通りもうしばらくお待ちください」
またインカムで呼びかけがあったようで急いでキッチンに向かって行った。そしてまた料理を持って戻ってきた。
「どうぞオムライスとミニラーメンです」
また二夕見の席に料理が置かれる。
「あ、ありがと!一ノ瀬のところ置いといてくれる?」
なぜか俺の席に二夕見の料理が置かれる。
「あのー、さっき注文したんですけどまだですか?もう5分20秒経ったんですけど」
「うるっさいのよあんたは!1分おきに確認するんじゃないわよ!あんたうるさいから早く出て行きなさいよこのクレーマーが!」
「すいませんただいま注文が殺到してまして…」
とニヤニヤしている桑名。
「あ、お姉ちゃんクラムチャウダーと大根サラダ今から来るから待っててね」
「やったー!」
「ていうか殺到してるの絶対お前のせいだよね?お前のせいで俺のが遅れてるんだよね?ドリンクくらい来てもおかしくないよね?」
どんだけ注文してるんだこいつは。俺が目の前に置かれたポテトを一本食べようとすると。
「ガンッ」
つま先で脛を蹴られた。
「いたっ⁉」
「何私のポテトに手出そうとしてんのよ。私のご飯に勝手に触らないで」
向かいから睨みつけてくる二夕見。
「こんなにあるんだから一本くらいいいだろうが。この食いしん坊が。てめえには分けあいの精神がねえのかよ」
「グルルルルルル」
まるで野生動物のように威嚇してくる。
「分かったじゃああとで俺のスパゲティちょっとやるからいいだろ?」
「それならいいわ。でも少しだけだからね?いい?取りすぎないでよ?」
と念を押して確認してくる。
「でも一年生なのにもうバイト始めてて偉いね。ひかりちゃんはここで働いてどのくらい経つの?」
「夏休み始まってすぐ働いてるから1か月弱くらい?」
「へ~。私なんかこの夏休みはほとんどお家でダラダラしてて感心するわ。頑張ってね」
と微笑みかける。
「はん。俺なんかほぼ毎日のように学校行ってるし、バイトもしてるしうんこもしてるし俺が一番偉いだろ」
「なんか最後にわけわかんない汚いのついてたんだけど!人がご飯食べてる時に言うな!補習も自業自得だし」
「確かにうんこは誰でもするか。な。二夕見」
「死ね!話かみ合わないし!」
隣で桑名が笑いを押し殺している。こいつうんこ好きだからな。
「あの。そろそろコーヒーシェイク持ってきてもらっていい?」
「あ。ただいま」
と未だに違和感しか感じない敬語で返すと厨房に向かう。おっと危ない。思わず素に戻ってしまった。あいつはまだ反省が感じられないからもう少しお仕置きしないとな。なにより首謀者のAがいまだに俺から逃げ続けているからな。
桑名がコーヒーシェイクを持って来た。
「お待たせしました。コーヒーシェイクです」
「ありがとありがと」
二夕見がオムライスを頬張りながらじーっと手元のコーヒーシェイクを見てくる。
「お前いい加減太るぞ?」
「はあっ⁉べ、別に欲しくて見てたわけじゃないし!ていうか私はどれだけ食べても太らない体質だからいいのっ!」
「ていうかちょっと二の腕太くなった?」
「なってない!あんたほんとうざい!私の二の腕の形覚えてるのもキモいし!言っとくけど私体重50キロないからね⁉」
顔を真っ赤にして怒った二夕見が立ち上がると、机に両手をつき主張してくる。女子高校生の平均体重ね。
「まあそりゃあないだろ。それであったらすごいよ」
「どこ見た今⁉死ね!」
今日2度目の死ねを頂いたところでようやく桑名が明太子スパゲッティを運んできた。
「お待たせいたしました。明太子スパゲティです」
しかし二夕見のポテトやらラーメンのせいで置くスペースがないため困っている。
「あ、床置いといてくれる?手で食べるからフォークも大丈夫よ。紙ナプキンの代わりにトイレットペーパー1枚添え解けば満足するから」
「するかあ!犬じゃねえんだぞ!お前のをどけろボケが!」
「なんか今日機嫌悪いみたい。だからトイレに運んどいてもらっていいかな?そしたら機嫌治るから」
「治るかあ!おいてめえまじで持っていこうとしたか今?」
桑名がトイレに向かいかけた足を方向修正してごまかす。
「いえいえ。ではこちらはどちらにお置きしましょうか」
「今オムライス食べ終わったからここにラーメン移すわ。ごめんねオムライス下げてもらってもいいかな?」
「もちろんです」
と言って俺の机のスペースを開けて、そこにスパゲティが置かれる。桑名が二夕見に向かって親指を立ててニヤニヤしている。要はナイス嫌がらせということだろう。どうやらこのガキはお仕置きが必要らしいな。そして桑名が戻ろうとしたところで声を掛ける。
「すいませーん。店員さーん。スマイルください!」
「うっわ」
向かいの二夕見がドン引きしていた。
「す、すいません当店ではそのようなサービスは行ってませんので」
「でも笑顔が硬くてなんかさっきから気持ちよくご飯食べれないんですよ。なんか向かいの女と相席させられてるのも納得いかないし。主にそっちなんだけど。とにかくスマイルくれたら治まりそうな気がする」
と滅茶苦茶な理屈に滅茶苦茶な要求をしてみる。
「うわあー」
二夕見がないわーと手をぶんぶん振っていた。
「ぺっ!」
とうとう我慢の限界に達したのか桑名が俺に向かって唾を吐き捨てる真似をする。
「はあ?なんだこの店員はよ。お前じゃ話にならねえよ。店長呼べ店長。すいませーん!てんちょ――――」
「スマイルですね!かしこまりました!ニコッ。どうでしょうか⁉」
そんなに店長を呼ばれたくないのかそれとも普段の仕返しであることないこと言われるのが嫌なのか引きつった笑顔を浮かべてくれる。
「うーん。55点」
「あんたいい加減にしとけ!」
向かいから二夕見がメニュー表で頭をひっぱたく。
「うーん。34点」
向かいの二夕見を見てつぶやく。
「誰が34点だ!勝手に採点するな!」
俺の評価が気に入らなかったようでキレる。
「ぎゅるるるる~」
俺のお腹が鳴った。
「やっべ。腹痛くなってきた。ったく冷たいシェイクなんか出すからお腹壊しただろうが。温かいシェイク出せよ気が利かねえな」
「もうそのまま帰ってくんなあんたは」
二夕見の罵倒を背にトイレに向かう。用を済ませて出ると、二人は軽く談笑していた。
席についてスパゲッティを食べようとすると半分くらい減っていた。
「……」
しらーっとした目で向かいの女を見る。
「そ、それでねー。その、私が中学生の時に着てた夏物で可愛いのがあるから、どうかなーって、あの、ね?」
とこちらの視線に気づかないふりをしながらも額から汗が頬を伝って落ちるのを俺は見逃さなかった。
「おい二夕見。俺はポテト二本しか食ってないのになんで半分も減ってるんだ?あれか?算数できないのか?それとも自制ができないのか?」
「な、なんで私って決めつけるのよ。私じゃなかったらどうするのよ」
「まずはこっちを見てから話そうか?今のセリフ俺の目を見ながらもう一回言えるか?」
目をそらしてそっぽを向く二夕見。
「あ、あれよ。さっきトイレの妖精さんが盗んでいったのを見たわ。ほんとよ。トイレの神様くらいになら誓ってもいいわ」
「俺ならそれで騙されると思ってるのが透けて見えるんだよ。?舐めんな?お前トイレの妖精さんとトイレの神様をバカにしたな?罪に罪を重ねたな?お前お腹痛くなる呪いかけられても知らないからな?次パスタ食べたら腹下す呪いかけるからな?」
「ていうかどうせだしもう全部食べていいわよね?お金は払わないけど」
「開き直りすぎだろ。金払わねえのかよ。驚きを隠せねえよ」
大親友の彼女(仮)の連れなのにパスタ作るどころか盗むし、家庭的な女がタイプっていうか、ご飯食べてる時に近くを男が通り過ぎたらちょっと睨み聞かせてぱくつくくらい野性的だし三次元どうなってんだよ。大貧民負けてないのにマジギレしそうだよ。
「あんたみたいな男がこんな女の子と一緒に食事できてるんだからその対価としては安いくらいよ。しかも私の楽しい食事をノンデリ発言で邪魔しまくってるんだから文句は言わせないわよ」
とスパゲティの皿を手繰り寄せる。
「店員さん。この方に熱々のパイを一つ。思いっきり叩きこんで。主に顔面に。なくしてしまったパイの代わりに」
「分かったわよ。じゃあはい。これあげる」
そう言って俺の方にお皿を置いた。ていうか重ねた。
「それただの食べ終わった食器だよね?重ねるな?」
「冗談よ!私をなんだと思ってるのよ。思ったより美味しかったから食べちゃったのよ!ごめんねっ!だから、ごめんひかりちゃん。お皿大きいの一枚持ってきてもらってもいいかな?」
と桑名に頼む。桑名がすぐに持って来た。
「はい。ポテトと、サラダと、から揚げと、グラタンと、ハンバーグと、ステーキ。どうぞっ」
と自分の頼んだたくさんの皿から少しずつ取り分けて持ってきてもらった皿によそっていく。少しずつだけど、バラエティ豊かな一人前くらいの量になる。
「足りないんだったら味噌汁とか頼むけど?」
と頬を染めて恥ずかしそうに横を向きながら問いかける。
「…お前。わかったぞ。さては財布忘れたな?」
「あんたほんとひっぱたくわよ。私をなんだと思ってるのよ。言っとくけど私が誰かにご飯を分けてあげるなんてなかなかないことなんだからね?ありがたく思いなさいよ」
「二夕見。お前……」
「ふふっ。感動で言葉も出ないみたいね」
「小生、人の唾がついたもの食べられない故、こういうのありがた迷惑なのであります。知ってるでありますか?人の口の中には300~700種類の細菌が生息していて、歯をよく磨く人でも1000億から2000億個の菌が存在しているのであります。それに対して人の涎には様々な抗菌物質が含まれていて、殺菌能力もあるのであります。そんなよだれがついたものなんか食べた暁には、小生の口の中に住み着く健康の維持に役立つ最近たちが死んでしまうであります!小生は他の人たちとは違うのであります!」
俺はエア眼鏡をクイクイさせる。
「……こんのクソノンデリKYオタクがああああああああ!」
ぶちぎれた二夕見が立ち上がってお皿を投げつけようと頭上に掲げたところで桑名が止めに入る。
「お、お姉ちゃん落ち着いて!」
「この人の優しさを理解できない小生をボコボコにしてやらないと私の気がおさまらないわ!」
「じょ、冗談だよ!ほんとは嬉しかったさ!あ、ありがとな二夕見。だから落ち着けって!な!」
ちょっと照れ隠し兼ジョークのつもりだったが怒らせてしまったようだ。
「いやあでも、ただのシェアじゃなくてさ、食い意地張ってるお前みたいなやつがこんなに返してくれたのは素直に嬉しいよ。ありがとな二夕見。スパゲティあげてよかったよ」
「ふんっ。今更遅いし。全然嬉しくない」
などと言いながらまんざらでもないのか頬が少し赤いしゆるんでいる。
「ていうか、別にほんとに私のよだれついてないからね。ちゃんと口付けてない所からよそったり分けたりしたから。ところで会計は割り勘でいいわよね?あんたも食べたんだから」
「いいわけねえだろうが。最後の一言で台無しだよ。最後まで気使えよ。ていうかそれが目的かよ」
「私男がおごるのが当たり前って思ってる女嫌いなのよね。男とか女とか関係なく人にたかるのが理解できないわ。おこがましいと思う。普通割り勘よね。ね?」
「いいこと言った風に見せかけて、割り勘に持ち込んで食べてもいない分を払わせようとするな。お前も十分おこがましいわ」
「俺様もジュース飲みたい」
「ガキは牛乳でも飲んでろ。ジュースなんか十年早いわ」
横から口を挟んできた桑名に返す。




