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一ノ瀬英一のおバカ譚  作者: 八野はち
47/69

45話 「すいま選択肢。あやまる、あやまらない、あやまる、あやまらない!テレン!あやまらない! はい!謝りません!」

 そして久しぶりに警察まで連れてこられ、俺たちは今、三人一緒に取り調べを受けているのだった。正確には俺は取り調べ、白銀と天ヶ崎は事情聴取であった。


「それで?何であんなことした?この子たちは脅して連れ込んだってことでいいのか?」

「だから俺は何もしてないって言ってるでしょ!こいつらは友達で一緒に焼肉来てたらこのアホがエタノール液を注いで火事になったの!こいつを捕まえてくださいよ!こいつが諸悪の根源なんですよお巡りさん!」

「適当なことを言うな!じゃあなぜお前はパンツ一丁で火事の現場にいた!」

「それはもう一人のアホがこけて俺にエタノール液をぶっかけたから火がついて、急いで服を脱いだだけって何度も言ってるでしょ!」


 何回同じこと言わせんだよ!


「そんなバカなことがあるか!」

「あったの!」

「そうだ正直に言え!ダンッ!」


 隣に座っている天ヶ崎が机を叩いて煽ってくる。


「黙ってろてめえは!お前はまじで頭蓋骨粉砕するまでアイアンクロウ食らわせてやるからな!」

「うるさい正直に吐け!ダンッ!ダダダンッ!判決を言い渡す!死刑!これにて閉廷!」


 唐突に裁判が始まり唐突に終わった。


「ぶっ飛ばすぞクソガキ!」


 警察官が、恐怖でおかしくなってしまったのかと憐みの目で見ていた。違うんですお巡りさん。こいつ元からこうなんですよ。


「なあ白銀!お前も黙ってないで何とか言ってやってくれよ!」

「え?」


 左隣の方を見るとかつ丼をバクバク食ってる女がいた。


「何呑気にかつ丼食ってんだお前は!お前らのせいで捕まるかもしれねえんだぞ俺が!しかも二杯目だし!何俺の分も食ってるんだよ!てか何でお前の分も出てるんだよ!」

「ご、ごめんかつ丼なんてめったに食べられないからつい。君のが美味しそうだったから頼んだら持ってきてくれたんだ。でも思ったより美味しくて気づいたら君の分も食べちゃってたや。あはは」


 などと言って頬をかいている。




「こいつの言ってることは本当かい?」


 取り調べの警官が尋ねる。


「ほ、本当です。全部僕たちが悪いんです。この人はただの被害者なんです。捕まえるなら僕たちにしてください。ううっ。こ、これでいいんでしょ?」

「おいそれめちゃめちゃ言わされてるみたいになってない⁉大丈夫⁉」

「そう言えって脅されているんだね。大丈夫だよ正直に話してくれたらこいつは一生牢から出さないからね」

「終身刑⁉裁判なし⁉俺一生刑務所暮らし⁉」


 ていうかまじで正直に話せよ。最悪天ヶ崎が捕まるくらいでお前は無罪ですむだろ。


「ごめんなさいしたら許してくれますよきっと。ほらごめんな裁判官!ダンッ!判決を言い渡す!ダダダンッ!死刑!これにて閉廷!」

「もういいんだよ!しかも結局死刑なんじゃねえか!」


 警官が可哀想な目で天ヶ崎を見ている。


「そんなに辛かったんだね。一応君にも聞きたいんだけど、この男の言っていることは本当かい?」

「全然違います!全部この人が意図的に仕組んだ犯罪です!」

「お前ここぞとばかりに俺に責任全部押し付けやがって!ふざけんじゃねえぞ!」

「お前は黙っていろ!」


 警官の一人に小突かれる。


「この人が全部仕組んだんです。親に捨てられた私たちにすり寄って来て、悪いことをしようとそそのかしてきたんです。憎まれっ子世に憚るといつも口癖のように言っていて、日頃から世の中に不満を持っているようなことを口にしていました。私たちを脅して強引に仲間に引き入れ、『憎まれっ子同盟』などと名付け、犯罪を企んでいました。今回もわざと火を起こしてあの店を燃やそうとしていたんです。ううっ。私たちは常に彼に脅されていて、逃げ出したかったんです。私たちは被害者なんです。どうか助けてください!」

「大嘘こくんじゃねえ!もとはと言えばお前が余計なことして天井に火がついたのが発端だし、お前を慰めるためにそんな同盟作って焼肉奢ってやったんだろうが!ふざけんな!」

「そうか。話してくれてありがとう。こいつは必ず報いを受けさせるからね」


 警官もこいつの話に同情している。違いますよ?こいついい子だけど親に捨てられた苦労人とかじゃないからね?


「君も本当のことを話してくれ」


 白銀は警官に見つめられ、たじたじしている。


「おい頼むぞ白銀!このままだと俺捕まっちまうぞ!」






 すると、天ヶ崎が立ち上がり、白銀の方まで行くと、何やら耳打ちする。


「白銀先輩。庇ったりしたら先輩も疑われますよ。しかも先輩は泥棒までやっていますからそれもバレて最悪一生刑務所から出てこれなくなりますよ。ここは先輩の優しさに甘えましょう」

「で、でも。僕たちのせいで彼が捕まることになったら、可哀想だよ。ゆいなちゃん、僕も一緒に話してあげるから自首しようよ。ね?」

「白銀先輩。忘れたんですか?このままここに拘留されたら、焼肉屋さんに置きっぱなしの特A肉は廃棄されますよ?」

「はっ!」


 白銀の目が大きく開かれる。


「でも、今ならまだ間に合う。いいんですか?ここでこのチャンスを逃がしたら、一生食べられませんよ?」

「僕も彼に脅されて怖かったです」

「おいふざけんな!どんだけ食いたいんだお前は!」

「違いますよお巡りさん!全部こいつらの仕業です!一人がエタノール液注いで火柱あげて、もう一人がずっこけてエタノール液ぶちまけて七輪倒して燃え広がってますから!全部こいつらの仕業ですよ!」 

「お前は黙っていろ!」


 しかし、頭を押さえつけられる。


「他に普段からどんなことを言ったりしたりしているか教えてくれるかな?」

「はい。何か日頃から病的なまでに自分のパンツに執着していて、よく見せたがってました。今回もたくさんの人に自分のパンツを見て欲しくてやったんだと思います。それに何回かトイレットペーパーを使った特殊なプレイを強要されたこともあって、トイレットペーパーで拘束されて、ううっ。これ以上は言いたくありません」


 周りの警官もざわざわし出す。


「おおいまじでやめろ!そんな特殊プレイしたことないだろうが!お巡りさんこいつ泥棒です!よく人の家に盗んで金奪ってます!俺の家にも不法侵入して俺のパンツ被って卑猥な行為してました!」

「幻聴幻覚、妄想に虚言壁ありと。精神鑑定の準備お願いします」

「何でだよ!信じてくれよ!」

「他には?」


 無視して続ける警官。


「他には、いずれこの国の王になりトイレ至上主義国家を建国すると言ってました。国のすべての予算をトイレに使い、国中の企業がトイレのサービス、設備の向上に向けてや開発に取り組み、トイレ機密部隊を組織し、紙幣の代わりにトイレットペーパーを流通させるとか言ってました」


 今度はさっきよりさらにざわざわし出す警察官たち。


「分かった俺が悪かった!二度とトレハラもノンデリ発言もしないから許してくれ頼む!」

「よし取り調べは終わりだ。世の中に不満を持ちこの社会に悪意を抱き、想像以上の危険思想を持つ上に歪んだ性癖を持つ。凶悪犯にはよくあることだ。さらに幻覚・妄想ありと。まだ大きな事件を起こす前で良かったよ。連れていけ」

「ちくしょう!覚えてろよお前ら!出所したら必ず仕返しに行くからなあ!白銀!ほんとにトイレットペーパーで縛り付けて笑い死ぬまでくすぐってやるからなあ!天ヶ崎お前はロケットにくくりつけてこの星から追放だ!」


 刑事二人に両腕を掴まれ立たされる。


「おい丁重に扱えよ!留置所のトイレは綺麗なんだろうな!前は汚かったぞ!ちゃんと掃除しておけよ!当たり前だが和式なんてことはないよな!それと飯は一日一食はわかめのスープを出せよ!髪が増えるよう毎日の日課だからな!俺を怒らせるとうんこ投げつけるからな!」

「黙って歩け!」


 刑事に頭をはたかれる。





 しかし、俺が連れて行かれそうになったその時、ドアが開かれ、女の人が入ってきた。


「まったくお前はまた何をしでかしたんだ。廊下までバカみたいな叫び声が漏れていたぞ。それにしてもまさかここまで迷惑をかけてくれるとは思わなかったな」


 顔を上げると、そこにはいつもみたいに堂々として毅然とした態度で、ニヤリといたずらっぽい笑みを浮かべた河瀬先生が立っていた。


「「「河瀬先生!」」」


 みんなで一斉に驚いた声をあげる。流石は場数をくぐっているだけにこれくらいじゃ取り乱さないようだ。


「おい無能警官ども!残念だったな!うちの先生が来たからにはもう終わりだ!お前らなんかデコピンで吹っ飛ばせるくらいの戦闘力(筋肉)だぞ!銃弾も指で弾くぞ!ピストルより破壊力あるからな!さあ先生一緒に警察署を襲撃して占拠しましょう!」

「ガンッ!」


 しかし無言で拳骨を落とされる。


「いてえ⁉」

「どこのテロリストだ馬鹿者。それに私はそんなバケモノでもない!私をクビにする気か。まあでも大体は分かっているぞ。このメンツならなんとなく想像はつく」

「え?ていうことは、先生、俺のこと信じて!」

「ああ。それで?一体どれだけ酷いトイレだったんだ?だからって燃やすことはないだろうに」

「そんなことで燃やすか!だったらとっくに学校燃やしてるわ!全然信用してねえじゃねえか!このメンツの中で真っ先に俺を疑うってなんだよ!」


 普通に考えて天ヶ崎だろうが。次がポンコツ白銀だろどう考えても!


「ははは。冗談だよ。どうせ天ヶ崎だろう。次点で白銀かな。このメンツで集まってるのも少し驚きだが、まあいい」


 なんだ。わかってんじゃねえか。流石だな。


「ところであなたは誰なんですか」


 刑事の一人が威圧的に尋ねるが、先生は少しも動じない。


「失礼。この子たちの学校の生活指導をしています、河瀬といいます。うちの生徒が問題を起こしたと聞いて駆けつけてきました。お話聞かせていただいてもよろしいですか?」

「学校の先生でしたか。この青年は更生まで相当時間かかると思いますよ。この年でこんな危険思想の持ち主を見たことがない」

「一体何を言ったんだお前は。はあ。私転勤する学校間違えたかな。どうなっているんだこの学校は。生徒の癖が強すぎる。あの、とりあえず牢に入れるのは待っていただけますか?話を聞かせてください」


 などと頭を押さえている。先生もなかなか癖強いやつ人しかいないけどな。


 先生が刑事から事件の経緯と俺の取り調べの結果分かったことなどを聞き終わると、俺の肩に手を置く。


「はあ。それで?実際はどうだったんだ?お前の話を聞かせてくれ」

「このバカがエタノール液を七輪に注いで火事になって、一緒にいたドジがずっこけてエタノール液をまき散らして、俺にぶっかけて、七輪を倒して火があちこちに広がりましたね。そしてパンイチでいた俺が犯人でこいつら人質ってことにされて、それに便乗して天ヶ崎は当然のように俺に押し付けて、白銀は食い損ねた高級肉を食べたいがために俺を売りました。全部ばかとどじのしわざです」

「なんだそのぐりとぐらみたいなのは。しかしなるほどな。それは散々だったな。しかしお前も悪くないとは言えない。何だトイレ至上主義国家とは。そんなこと言ってるから余計誤解されるんだ。誤解と言うかこれに関しては事実だし私もお前は捕まった方がいい気がしてきたよ」


 先生が呆れ顔でこちらを見る。


「それは確かに俺が悪いけど、大体先生が天ヶ崎を俺に押し付けたからこんなことになってるんでしょ!」

「そうだそうだ!」


 アホが自分のことなのに外野から相槌を打ってくる。アホめ。


「だからこうやって真っ先に駆けつけてきたんじゃないか。先生たちみんなで責任の押し付け合いしてたぞ」

「白銀。お前もつるむやつはちゃんと選べ。こいつらだけは絶対につるんではいけないことくらい分かるだろ。また食べ物に釣られたのか。ちょっとつかみどころがない感じに惹かれるのは分かるが、悪いことは言わない。あれはダメなやつだからやめておけ。将来ろくでもない大人になるぞ」


 などと白銀の肩に手を置いて説得している。


「そいつも大概だけどな!火事の被害肥大化させてたし、食べ物に釣られて人のこと売ろうとしてたけどな!」

「あ、あの。冷静になったら、ちょっと酷いことしちゃったかなって思ってきて。実は彼悪くないんです」

「分かっているさ。お前は根が良いやつだな」


 なんかちょっと甘くない?


「さて天ヶ崎。お前も認めろ。いつもお世話になっている先輩にこんなことして申し訳なくないのか?」

「全然」


 などと鼻をほじっている。その指の骨へし折ってやろうかクソガキ。


「はあ。おい一ノ瀬。ちょっとお前に似てきている気がするな。これ明らかにお前の悪い影響を受けているぞ。どうしてくれる」

「元からこんなでしたよ。あんまり刺激するとゲロかけてくるんで気をつけた方がいいですよその珍獣」

「天ヶ崎。火事は燃え広がる前に鎮火されて、被害はほとんどない上に、火災保険に入っていたようで謝罪さえすればおとがめなしだそうだ。三人で行かせるし、私も付き添うから大丈夫だ。分かっているぞ。ちょっとふざけすぎて後戻りできなかっただけだろ?今から話せばまだ間に合う。私も警察の方々に一緒に説明して謝ってあげるから。まず一ノ瀬に謝って軽率な行為を認めて反省しなさい。ね?」


 先生が諭すように優しく言う。


「すいま選択肢。あやまる。あやまらない。あやまる。あやまらない。あやまる。あやまらない。あやまる。テレン!あやまらない!謝りません!」

「謝るんだよ!小賢しいことしてんじゃねえぞ!」

「天ヶ崎。ほら」


 先生が再度促す。


「ごめんな塞翁が馬。謝らないということは一見不快で良くないことに思えるかもしれない。しかし長い目で見てみると、そのことが良いことにつながることもあり、人間の幸不幸は予測できないものなのである。だから謝らないことは悪いこととは限らないのである」

「悪いことに決まってんだろうが!やかましいんだよお前は!お前が言うんじゃねえ!何急にことわざの解説始めてんだ!」

「おい天ヶ崎。あまり私を怒らせるなよ?今ならまだギリギリ許してやってもいいと言っているんだ」


 急に声色が変わり空気が冷たくなる。


「「ヒイッ!す、すみませんでした!」」


 なぜか白銀も一緒に謝る。あの天ヶ崎でも河瀬先生の言うことは聞くらしい。そういえば桑名もそうだったな。クソガキキラーだなこの人。


「そうだな。よろしい。一ノ瀬も許してくれるか?」

「この手錠取ってくれたらね!」


 警察の人たちはまだ事情が分からずに困惑してますよ。

 先生は困惑している警察に本当の事情を話してくれた。天ヶ崎も白銀も一緒に謝罪している。しかし、先生は少しいら立っているようだ。話がこじれているのか。


「だから、この子たちも反省してますし、店側も謝罪してくれれば問題ないと言って下さっているんですよ!」

「しかしあなたが彼を庇って丸く収めようとしている可能性も否定できないですし、話を聞いていても、彼には問題があるように思えるんです」

「ああもうあなたじゃ話にならない!警部を呼んでくれ!その人と話がしたい!」

「そんな要望は受け入れられません」

「河瀬めぐみが来たと言えばわかる!」


 これ大丈夫か俺?白銀も焦り始めてるぞ。なんでてめえはあくびしてんだよ天ヶ崎こら。


「それで、河瀬めぐみと名乗る人物が来たというのは本当か?」


 しばらくして警部が入ってきた。60代くらいのおじさんで、どこか貫禄がある人だ。ていうか何で警察と知り合いなんだよ。どういうことだよ。昔何したんだよ。


「久しぶりですね阿澄さん。出世されましたね」

「おお!めぐみちゃんか⁉大きくなったな!美人さんになって!大人になったなあ!お前また何かやったのか!もう三十近いだろう!」


 などと嬉しそうな警部。


「私じゃありませんよ。私の生徒です。今先生をやってましてね」

「何?流石お前の生徒だなあ。先生の昔の話とか聞きたいか?」

「やめてくださいよ阿澄さん」


 などと嬉しそうに椅子に座って話し始めた。


「昔は『おい阿澄この野郎!』って呼んでたんだぞ。まあでも何かしたって言ってもめぐみちゃんほどじゃないだろ。先生は昔そうとう悪かったんだぞ。クラスメイトの女の子が乱暴されたってんで、一人で有名なヤンキー校に喧嘩売ったり、それも男子校だ。


あとは白バイを煽ってレースして勝ったり、仲間がやられたからって銃持ってるヤクザに喧嘩売ったり、そっちゅうここでかつ丼食わせてやったな。肉が硬いだの卵を焼きすぎだの文句言ったりして、懐かしいなあ。つい昨日のできごとのように思い出せるよ」


 先生も「まだ青かったですあの頃は」などと少し恥ずかしそうだ。

 想像以上にガチのヤンキーじゃねえか。だからこんな戦闘民族サイヤ人みたいな体してるんですね。


「ああそれで?何したんだ?ん?焼肉屋さんで化学実験してパンイチで火をつけて暴れた?これ先生越えてるよ。どんな教育してるのめぐみちゃん」

「違いますよ。それは嘘で、本当は火力を上げたくてエタノール液を加えたら火柱が上がって、そこにドジして突っ込んできた子がエタノール液をまき散らして、倒れた七輪から火が広がって、液がかかった彼がパンツ一丁になって熱くて走り回ってたんですよ」


 と河瀬先生が説明する。


「なるほどなあ。大変だったねぇ」

「署長!彼の話を聞いたところ、危険思想の持ち主でして、精神鑑定の必要もあるかと―――」

「釈放!無罪だ!こんなこともある。めぐみちゃんと比べると可愛いもんよ」


 などと解散解散と手をしっしっとさせる。


「ですが!」

「俺の昔の馴染みだぞ!俺に恥かかせる気か!」

「はっ!失礼いたしました!」


 そう言って俺の手錠が取られる。でも助かったわ。


「ありがとう阿澄さん!助かりました」


 先生が一瞬いつもと違う、いつかの若い頃の表情を浮かべているように見えた。


「何良いってことよ。もう来るなよこんなところ」

「君たちもお礼を言いなさい」

「「「ありがとうございました」」」


 こうして俺の冤罪は晴らされたのだった。


「あ、あの、ほんとにごめんね?」


 白銀が側に来て申し訳なさそうな表情を浮かべ、謝ってきた。


「まあ俺はどうせ肉奢ってくれるだけのカモだもんな。肉より価値は下ですよどうせ」

「ち、違うよ!そんなこと思ってないよ!ちゃんと食べたら戻ってくるつもりだったんだよ!どうせ捕まるんなら最後に美味しい物食べたいと思って!ほんとにごめんなさい!」

「分かったよ。冗談だっての。そういえばなんかここ冷房効きすぎて寒くないか?」

「え?そ、そうだね。だ、大丈夫?温度下げてもらう?」

「あーだめだこれ今すぐ暖かいもの着ないと凍死しちゃうわ。そう言えば俺ってなんで裸なんだっけ」

「え、え、あ、あの、ど、どうしよう、ぼ、僕のせいだし何とかしないと。で、でも…」 


 白銀がおどおどしだす。

「分かるよね?誠意見せてよ」

「で、でもそんなことしたら僕下着になっちゃうじゃないか!」


 すぐに俺の言いたいことを察した白銀が自分の体を抱きしめる。


「ふうん。じゃあ許さないどこうかなあ」

「ううっ。脱ぎます。脱ぐから許してください」


 涙目で洋服をたくし上げようとする。このくらいで許してやるかな。そう思った時、横から肩を叩かれた。振り向いてみるとニッコリ笑顔の刑事がいた。


「警察の前でわいせつとはいい度胸じゃないか。強制わいせつ罪で逮捕する!」


 再び俺の手に手錠がかけられた。


「なんでだああああああ!」

「何をやってるんだお前は!」





 その後何とか許してもらい俺たちは家まで先生に車で送ってもらったのだった。こうして波乱の焼肉会は終わったのだった。同盟?解散だ解散そんなもん!


 その次の日も休日だったため俺たちは先生も一緒に焼き肉屋まで頭を下げに行ったのだった。二名まだ特A肉を探しているやつらがいて、図々しく店員に聞こうとしたところで先生に引きずられて車まで運ばれていった。


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