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一ノ瀬英一のおバカ譚  作者: 八野はち
45/69

43話 「それ全部きん〇ま!どんな汚え三大珍味だよ!」

 天ヶ崎も飲み物を入れに行く。


 一分ほどで天ヶ崎が走って戻ってきた。


「先輩!奥の座敷で金持ちそうな人たちが豚の丸焼き食べてました!私たちも対抗して何か一匹頼みましょう!」

「金ねえから馬鹿の丸焼きでいいか?馬と鹿の味がするらしいぞ。よし網の上に横になれ。ちょっとゲロくさいらしいが」

「バナナの丸焼きって先輩、急な下ネタやめてくださいよ。ていうかそれソーセージじゃないですか(笑)」


 などとソーセージをかじりながらほざく。


「てめえだよ!誰もそんな話してねえから!お前の脳みそがいかれてるだけだから!皮肉も通じねえしほんとすごいのなお前な!」


「そんなことより先輩!肝臓の部位がありましたよね!それ頼みましょうよ!」


 話も聞かず急な話題転換。


「レバーか?少しならいいけど別に」


「違いますよ。フォアグラです」


「頼むかバカが!いくらすると思ってんだ!特A肉じゃ飽き足らずまだ高いの頼む気か!世界三大珍味なんかお前には早いんだよ!」


「世界三大珍味?先輩何言ってるんですか?世界三大珍味にフォアグラは含まれませんよ」


 バカにしたような顔で見てくる。


「いや入るわ。お前が何を言っている。じゃあ何が世界三大珍味なんだよ」

「しょうがないなあ教えてあげますよ。この三つです。牛の睾丸と鶏の精巣、豚の玉袋」

「それ全部金玉!どんな汚え三大珍味だよ!また下ネタかお前は!」


 白銀がいなくなった途端これだよ。


「そしてこれが先輩の金玉です」


 などと言ってポケットから泥団子を二つ取り出す。


「こんなにでかくねえわ!また泥団子作ってたんかお前は!汚えから網の上に乗っけんな!」

「こっちが英一でこっちが英二ですね」

「名前つけんな!英二ってなんだ!双子の弟みたいな名前つけやがって!」


 しかし俺の話を聞かずに「あれ?こっちが英一だっけ?確か汚い方が英一だったはずだけどなあ」などとぬかしている。


「この名前嫌なんですか?しょうがないですね。じゃあ英二とB一にしましょう」

「意味が変わってきたなおい!二重人格の金玉ってなんだよ!」

「最近手品覚えたんですよ。見ててくださいよ」


 などと俺の言葉は完全に無視。


「ここに何の変哲もない金玉が二つありますね?」

「すでにおかしいんだよ。金玉が網の上にあるのがもう変哲なんだよ」

「ところがびっくり!網をひっくり返してみると、あっという間に金玉が三つに!ワーオトリプルゴールデンボール!イッツアメイジング!ちなみに名前は英三です」

「しょうもない手品披露すんな!なんで数字が一つずつ増えていくんだよ!いい加減にしねえとこの汚い玉お前の口に突っ込むぞ!」


 てかこの泥団子よく見るとほんとに汚いなおい。


「え?セクハラですか?」

「やかましいわ!」


 なんだこいつ!


「まあまあそう邪見にしないでくださいよ。あと四つ金玉を集めれば何でも願いが叶いますよ!なくした金玉も元通りに!」

「それじゃあ金玉差し出す意味ないだろうがよ!プラマイゼロだよ!」

「何言ってるんですか。三人と半分の金玉は戻りませんよ(笑)」

「なおさら意味ねえだろ!失くしたものがでかすぎるだろ!」


 なぜかバカなんですか?言わんばかりのアホ女。


「ていうか金玉って可愛くないですよね。タマタマの方がなんか可愛くないですか?女子って可愛い響きのもの好きですし」

「そもそも言ってることが何一つ可愛くねえんだよ!金玉の呼び方こだわってる時点で可愛さのかけらもねえんだよ!」


 俺は網の上の泥団子を一つ握りつぶす。


「ああ!先輩の金玉が!でも大丈夫。ちょっと小さくなるけど分裂できるから」

「作り直すな!もういいんだよ!」


 残った泥団子を割ってまた作り直そうとする天ヶ崎を制する。


「先輩の金玉は無限に生成できるので安心してくださいね。先輩の金玉の成分はリン17%、亜鉛1

8%、銅15%、鼻くそ10%、耳くそ15%、歯垢15%、野糞10%を用意して、ゲロで描いた魔法陣に向かって呪文を唱えれば生成できます」

「汚え錬金術だなおい!半分垢とくそでできてんじゃねえか!俺の金玉はどんだけ汚えんだよ!」


 こいつやばすぎんだろ。白銀がいたらマジでどうなってたか想像もしたくねえよ。






「お待たせー。ちょっと道に迷っちゃってさ。よく場所が分からなかったんだ。あとなんかトイレちょっと混んでてね、思ったより時間かかっちゃった」


 ここで白銀が戻ってきた。


「そうだよなー。混んでたよなー。分かる。分かるよ」

「な、何?その歯に物が挟まったような言い方は?」


 白銀が少し怪訝そうな顔をする。


「でもなあ。十分かあ。十分ねえ。ちょっと長いなあ。ちょっときついかなあ。九割の人間は騙せても勘のいい一割の人間と俺みたいに訓練されている人間は騙せないなあ。いや分かるよ?ちょっとおしっこは言えるけど、ちょっとうんこは言いにくいよねえ?でもだからって嘘は良くないなあ。うん良くないよお。うんこしたらうんこした。うんこ踏んだらうんこ踏んだ。ちゃんと本当のことを言える人がかっこいいと先生思います」

「ほんとにおしっこだから!変に邪推するのやめてもらっていいかな⁉急に小学校の先生になり出すのも意味分からないし!しかもどの口がうんこ行ってきたは言いずらいなんて言ってるのさ!うんこするのも踏むのも全部君のことだし!」


 白銀が顔を真っ赤にして言い返す。


「冗談だって。本当はうんことおしっこ両方一緒に出たんだろ?何だお前一緒に出せるタイプかー。やるじゃん!いよっ!この効率重視の合理主義者め!」

「いい加減にしないと君の髪の毛全部ぬいちゃうからね!」

「冗談だよな?」


 こいつも言うようになったじゃないか。


「分かったよ。まあ俺が言いたかったのは女の子はうんことかトイレとか言いにくいよなってことだよ」

「そんなことは決してなかったと思うけどね。むしろそこにつけこんでハラスメントしにきてたよね。しかもいわれのない罪をかぶせて」


 白銀がジト目で見てくる。その時。


「うんこ!」


 天ヶ崎が声高々にうんこを宣言するとトイレに歩いて行った。店中の人が口を開けながら天ヶ崎を見つ

める。


「堂々と宣言して歩いて行ったんだけど。店中の人の食事を邪魔した上に店中の人にうんこに行ったことを認知されてるんだけど」


 白銀が珍しく天ヶ崎にツッコむ。


「さきほどの発言を訂正しよう。一部の特殊な女性を除く」

「異論はないかも」


 白銀が呆れたようにつぶやく。なぜ二人の女性でこうも大きく違う。





 少しして天ヶ崎が戻ってきた。


「ふう。すっきりしました」

「そうか。ところで 恥ずかしいから他の席に移ってくれるか?」

「君にだけはそれを言う資格ないからね?」


 白銀が呆れたように言う。


「そうだ。ついでにゲロも吐いてきたので胃の中すっきりしてお腹空きました。さっき食べた分注文し直しますね。ていうか私すごいことに気づいてしまったんですけど、食べて、吐いて、食べてを繰り返せば永遠にお肉を食べられんじゃないですか!よーし今日はこの店の肉がなくなるまで食うぞー!」

「バケモンかてめえは!いいわけねえだろうが!端末機器に触れようとすんな!恐ろしいこと考えつきやがって!お前は黙ってジュースでも飲んでろクソガキ!」

「ええ!こんなに愛らしい私がお腹空いたのにお肉食べさせてくれないんですかあ!」


 などと不満げな顔を浮かべている。


「いくら分食うつもりだよ!すでに五千円分くらい食っただろうが!特Aも頼んだしな!それは食っていいからそれまで指でもしゃぶってろ!」

「ぼ、僕の分少し分けてあげるよ」


 天ヶ崎の隣の白銀が自分の焼いたお肉を皿によそってあげる。


「ええ⁉いいんですかあ!もう白銀先輩大好き!ちゅっちゅっちゅっ!先輩大嫌い!ぺっぺっぺっ!」

「おい甘やかすなよ。こいつは優しくしたら専属奴隷だと思って言いたい放題やりたい放題されるぞ。こいつに舐められたら俺みたいになるから気をつけた方がいいぞ」

「何言ってるんですか。先輩のことは初めて会った時から舐めくさってますよ」


 などと鼻をほじりながら言う。


「くそがきゃあ!」

「あははははっ。何だか二人は似てるね。本当の兄弟みたいだよ」


「どこがだよ」「どこがですか」


「二人とも一緒に鼻ほじりながら言っても説得力ないから。わざとなの?」


 白銀が呆れながら言う。



 兄弟か。前にも誰かに言われたことがある。昔の記憶が刺激され何か思い出しかけたが、そっと記憶の深い所にしまい直す。


「てかお前ちゃんと食ってるか?じゃんじゃん食え。ほらこれもこれもこれも」


 俺は焼き上がった肉を白銀の皿によそっていく。


「ありがとう。ちゃんと食べてるよ」


 嬉しそうにニッコリとした笑顔をこちらに向けてくる。


「ていうかこのサラダちょっとあっさりしすぎてるっていうか、味が薄くないかな?僕だけ?」

「おいいつもアクの強い雑草ばっかり食ってる貧乏舌が、普通に美味いサラダに文句つけ始めたぞ」

「そ、そんなことないと思うけどなあ」


 などと恥ずかしそうに首を傾げている。


「そうだ乾杯し忘れてた。これはお疲れ様会でもあったんだ。あの驚異の義信邸から逃げおおせたことに乾杯!」

「かんぱーい!」


 俺たちはグラスを軽くぶつけジュースを飲む。


「いやあ今思い返しても、あの家は過去一でヤバかったよ。未だにたまに夢に出るもん」

「トラウマになってんじゃねえか。今度あいつが書いた別の文字読ませてやるよ」

「ほんとにやめてよ!」


 などと言い合っていると




「二人だけで盛り上がらないで下さいよ!私も混ぜてください!今日は『憎まれっ子同盟』の結成祝いがメインじゃないんですか!」

「いや。お前はおまけだ。可哀想だから連れてきた」

「なんてこと言うんですか!このド畜生!」

「もう素直じゃないんだから。今日は親に見放された者どうし傷をなめ合って励まし合おうということでゆいなちゃんもいるんでしょ。ごめんね僕たちだけで盛り上がっちゃって。なかなか周りにはこんな境遇の人いないから、励みになるよね」


 白銀が天ヶ崎に気を使ってか、天ヶ崎も加われるように話を変える。


「ていうか私は別に両親に愛されてますけどね。お二人は可哀想ですね」


 などと憐みの視線を浴びせてくる。こんなに腹の立つやつも珍しい。


「今後お前があの話を人にしないように善意から教えておいてやるがな、お前は手に余って百万円で追い出されたの。俺たちも似たような感じだからこの会が催されてるの。アンダスタン?」

「ちょっと。それ言わなくてよかったんじゃないかな?まだ受け入れきれないからこんな風に現実逃避してるんじゃないの?」


 白銀が少し非難するような視線を向けてくる。


「俺たちだってこいつと同じ年くらいには受け入れてただろ。お前なんかもっと早かったんじゃないのか?早い方がいいさ」

「それはそうかもしれないけど」


 白銀はまだ納得がいかないようで、複雑な表情を浮かべている。


「そ、そうだったんですか⁉」

「今頃気づいたか。悲しいかなそうなんだ」

「た、確かになんか変だと思ってました。鍵持っていこうとしたら全力で止められたり、両親がお前に似たんだ!いいやあなたに似たの!って言い争ったり、夜中に驚かせようと思ってヒップホップ爆音で流しながらビート刻んで行ったら、急に電気が消えて居留守使われたり、私が出て行ったあとゆいなって名前の犬を飼い始めたり!そういうことだったんですね!許せません!」

「いや気づけよ!最初から最後までずっと拒絶されてんだろうが!なんでわかんねんだよ。ていうかお前だけ笑えねえからマジでもうやめてくれ」


 白銀が悲しそうな顔で見ている。


「でも私嫌われるようなことなんか一切してませんけどね。それはそれは仲のいい幸せな家族でしたよ」

「じゃあどんなことしたのか、どんな子供だったのか言ってみてくれるか」

「別に特別な事なんかしてないですけどね?例えば街中の子供から風船を奪い取って家にくくって旅行しようとしたり、おじいちゃんが花火が見たいって言うから脳に焼き付くように、打ち上げ花火を老人ホームに向かってぶっ放したり、自由研究で、無人でアクセルを踏むような簡単なシステム作って、車が時速百キロで走って海に飛び込んだらどれくらい飛ぶのかとか調べたりそんな可愛らしい女の子でしたよ。昔の私は確かにちょっとばかりお転婆でしたね」

「ちょっとどころじゃねえよ。可愛らしい要素どこにもねえんだよ。ガチのモンスターじゃねえか。今が丸くなった結果ということに驚きをかくせねえよ。お前より両親の方が可哀想だよ」


 なぜこれで自分が問題児だという自覚がないのかがわからん。


「もう言い過ぎだよ。でも大丈夫だよ。僕たちは仲間だから。寂しくなったらいつでも呼んでよ。隣に一ノ瀬君もいるしいつでも頼るといいよ」

「ありがとうございます。寂しくなったらまた集まりましょうね。それに先輩はむしろ私が構ってあげてるようなものですよ。甘えん坊さんですからね~。おーよちよち」

「永遠におしゃぶり口に突っ込んでやろうかクソガキ。ああ?」

「ま、まあまあ。て、ていうかゆいなちゃんはショックじゃないの?」


 白銀がなだめるように間に入る。


「まあショックでしたけど、今は割と充実してますしね。学校に行けばりんごちゃんやひかりんがいますし、お家に帰ってきたら先輩と遊んであげますし、それに私小さい時から一人は慣れてますしねえ」

「強いんだね。君も支えてあげてね」

「こいつの出方によるがまあいいだろう。俺も気持ちは分かるしな。もともと俺は規則とか縛られる事大嫌いだから学校では自由にしすぎてそっちゅう怒られて呼び出しくらうわ、親の言うことは聞かないわで目の上のたんこぶだった。


しかも家では毎日のように誰かがトイレ入っている時に『漏れる!死ぬ!早く出てくれ!』って言いながらノックしまくったり、両親が生ものであたって腹下した時も俺がトイレずっと占領してて、とうとうそれで堪忍袋の緒が切れて追い出されちまったんだ。お前と比べたら可愛いもんだがな」

「確かに君は手が付けられなさそうだね。君の親御さんもさぞ大変だったんだと思うよ」


 白銀が苦笑いしながら俺を気の毒そうに見てくる。


「まあ俺は一人の方が気楽で、自分のペースで気ままに生きられるからせいせいしたがな」

「でも家賃や生活費は送られてくるんでしょ?」

「まあな。高校卒業するまで必要最低限のお金は出してくれるそうだ。親子契約を結んでいるからな」

「なんかその言い方嫌だなあ」


 白銀が顔を歪ませる。


「私も家賃と生活費送ってくれます。毎日電話もかかってきますよ」

「いいなあ。やっぱりなんやかんや言いつつ愛されてるんだよ」

「どんな話をするんだ?」

「話って言うか、毎日刑法を音読させられますね。小さい頃は聖書だったんですが」

「ううっ。そんな電話ならない方がいいよ」


 白銀がおよよっとハンカチで目元を拭う。


「なんでそんな犯罪者の更生・防犯指導みたいなことしてんだよ。何プログラムだよ。高一で親と道徳の授業ってなんなんだよ」

「刑法第九条。他人の物を盗んではならない。しかし万が一盗んでしまい相手が批判してきた場合右の頬をぶてばよい。それでも黙らなけらば左の頬もぶてばよい」

「教育の成果なに一つ出てねえじゃねえか。ごちゃごちゃにして最悪の覚え方しちゃってるじゃねえか」

「もうこいつはいいや。あとは、やめとくか…」


 白銀の話を聞こうと思ったがこいつの話は重すぎるし話すのも嫌だろう、聞くのも嫌だし。と思ったが


「白銀先輩はどうなんですか?」


 天ヶ崎が聞いてしまった。


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