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一ノ瀬英一のおバカ譚  作者: 八野はち
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40話 「インターン先は馬小屋でした④」 うんこをどっこいしょお!それでも髪はぬけません

 俺たちは車に乗り近くの畑に向かった。数分で着き、降りてついていくと整備された茶色い土の上に緑が生い茂っていた。中には実がついているものもある。


「トマト、かぼちゃ、ナス、ピーマン、とうもろこしなんかを育ててるべ。七月から八月にかけてが収穫時期で今は七月上旬だから収穫できるものもある」

「なんか農業高校に通ってる気分になって来たな」

「ほんとにそうよね」


 二夕見が同意する。


「じゃあ今が育ち盛りだから肥料撒くの手伝ってくれるか。栄養たっぷり与えて収穫に備えるべ」

「分かりました」


 二夕見が肥料を持って畑に近づいた途端鼻をゆがめた。


「なんかここ臭くない?」

「糞だべ。ほらあそこ見てみろ。クソがあるだろ?」

「一ノ瀬あんた人の畑にんこするのはさすがにどうかと思うわよ。いくら間に合わなかったとはいえ非常識よ」

「俺のなわけねえだろが!動物の糞だよ!肥料として撒いてんだアホ!」


 真顔で何言ってんだこいつは舐めんな!

「なんだそういうこと。あんたならやりかねないからてっきりあんたのかと思ったわ」


 肥料を一通り撒き終わると、次は雑草と害虫の除去だった。


「この暑い時期になるとこいつらが活発になって増えてくんだべ。うどんこ病っていうカビの一種がつく病気さなってたら葉が白くなるから教えてくれ」

「それ白じゃなくて茶色になると思うぞ」

「あんた絶対んこのことだと思ってんでしょ!」


 隣で雑草を抜いていた二夕見がツッコむ。


「え?うんこ病だろ?あの水分あげすぎると土がドロドロになって植物のお尻から出てくる病気だろ?あれは俺もなったことあるけどけっこうきついわ。対策はとりあえず軟水をあげることだな。硬水は日本人の体には合わねえから下しちまう。それにしても恐ろしい病気があったもんだ」

「それ病気じゃないから!汚い比喩すんな!全部あんたの話でしょうが!解決策もそれただの下痢の対策だし!うどんこ病だから!あんたもかかって死ね!」


 二夕見が雑草を投げつけてくる。


「やはり病気だったか。絶対そうだと思ったんだよ。絶対指定難病だろこれ」

「なんかでっかい害虫見つけたんだけど。葉っぱにんこつけようとしてるでっかい害虫見つけたんだけど。誰かゴキブリスプレー持ってきてくれないかしら。災害級危険生物だと思われるわね。子供に害を与える前に一刻も早く駆除しないと」

「人をバケモンみたいにいうんじゃねえ!お前だってモンスターだろうが!ヒステリックペチャパイが」

「あんたにだけは言われたくないわよ!このノンデリトレハラモンスターが!」


 文句を言い合いながらも暑い中雑草を除去し続けているが数が多すぎて終わりが見えない。


「もう疲れたこの仕事嫌い嫌い嫌い嫌い!もううんこする!畑に肥料撒いてくる!俺の仕事はうんこすることだけ!」


 地面に寝っ転がると両手両足を投げ出しジタバタする。


「いい年して子供みたいに駄々こねてんじゃないわよ!人の畑にんこしようとすんな!今時人糞なんかどこでも使わないわよ!野菜が腐るでしょうが!」


 キレた二夕見が長靴を脱いで俺の頭をスパンッとひっぱたく。


「おいてめえそれうんこ踏んでるやつだろうが!なんてもので人の頭叩いてんだ!てめえ後で馬糞ぶっかけてやるからな!」

「さっき洗ったから別に汚くないわよ。むしろあんたに触れたことで汚くなったまであるわ」

「はいお前許さん。お前が育乳マッサージしてたこと言いふらす」

「お願いそれだけはやめて!私が悪かったわ!ごめんなさい!私のことも一回叩いていいから!」 


 そう言ってすぐに謝ってくる。


「じょ、冗談だよ。そんな泣きそうな顔すんなよ。言わねえよ。俺も秘密教えたんだから言えねえよ」


 このことは冗談でも持ち出すのはやめよう。そう誓った。




「なあ兄ちゃん。今畑仕事さしててパッと閃いたんだけどもよ!面白えストーリー思いついただ!今度のは新しいべ!聞いてくれ!」


 おっさんが急に目をかっぴらいて話しかけてきた。


「札幌の中学で勉強ばっかしさせられてた主人公が追い詰められて農業高校に進路を変えることにしたんだべ。したら最初は何の目標もなくただ逃げてきたことにコンプレックスを抱いていたんだけども、寮に入って出会った仲間や、クラスメイトら友達と忙しい農業ライフを送っていくうちに毎日が充実し始めて、成長していくんだ。


して恋もして、命の大切さも知って、食の大切さを知るんだ。タイトルもぴったりのが思いついたんだけどな、ヨーロッパでは生まれてきた子供がお腹いっぱい食べられますようにって銀のスプーンを送るんだけども、そこからとって、銀のさ―――」

「言わせねえよ⁉だからパクリじゃねえか!タイトルまで丸パクリじゃねえか!俺たちが農業高校に来たみたいだって言ったの聞いて思いついたみたいに言ってんじゃねえ!確かに新しいけども!さっきよりはずっと最近の漫画だけども!作業しながら何考えてんだあんたは!」

「あんれえ。またパクリかあ?ひょっとして向こうがおらのことパクってるんじゃねえべか?」


 などと神妙な顔でほざく。


「なわけあるか!あんたがパクッてるに決まってんだろ!」

「せっかくいい話思いついたと思ったのになあ。せっかく昨日通販で漫画家のなり方って本も買ったのによお」

「絵描けないんかい!むちゃくちゃだあんたは!」


 ある程度雑草と害虫を取り除くと、続きはまた今度するということで、次は人参の種を撒くことになった。


「うちの馬たちにあげてる人参はここで作ってるんだべ。この時期に撒いて十月くらいから収穫できるものが出てくる」

「へえそうなんだ」


 二夕見が感心する。


「先に土に水をやって湿らせてから、指で線を引くようにしてできた溝に撒いていってくれ」


 俺たちは土だけの畑に指で溝をつくると人参の種を撒いていく。その後上から軽く土をかけて圧迫する。


「うおっ」


 しかし長時間かがんで作業していたためバランスを崩しこけてしまった。袋から種がこぼれてばらまかれる。


「あちゃあ」


 急いで袋に戻そうとするが茶色いため土と混ざって分かりにくい。一応ある程度は戻した。 

だがすべて撒き終えても隣の二夕見はまだ撒いていて大分数が足りないことに気づく。


「しょうがねえ」


 俺は自家製の種を土に植えていくことにした。


「何してんだあんたは!足りないからって鼻くそ植えてんじゃないわよ!全部丸見えなのよアホ!」


 二夕見に袋で頭をはたかれる。


「おいおいこれは本物の種だぞ。これが鼻くそだっていう証拠でもあるのかよ」

「鼻ほじりながら言ってんじゃないわよ!どう見ても大きさも形も違うでしょうが!」

「ちっ。バレちゃしょうがねえ。だがお前知らねえのか?鼻くそでも毎日水やりして、肥料を与えて、愛情を持って育てれば黒い芽が芽生えるらしいぞ」

「それ鼻毛でしょうがあ!芽生えるかあ!汚い言葉私に言わせんな!」


 勝手にツッコんでおきながら文句を言ってくる。


「ほら。私も一緒に探してあげるから。どこで落としたの?」


 呆れながらも手伝おうとしてくれる。


「まじ?悪いな。助かるわ。ちょっと赤いのも混じってるけどそれは血だから気にすんな」

「鼻くそを探すんじゃないわよ!なんのためにあんたのまいた汚い鼻くそ探すのよ!種を探すの種を!あんた頭大丈夫⁉」

「なんだそっちかよ。ありがたいが、どうしたんだ?」

「こんなのに毎日水やりする田中さんのこと考えたらそりゃあ探すわよ。可哀想すぎるわ」


 その後一緒に落とした種を探し回収すると、鼻くそを掘り起こし代わりに種を植えた。


「おーし撒いてくれたか?そんじゃ最後は実ってる野菜さ収穫して帰るべ。ナス、とうもろこし、かぼちゃ、ピーマンあたりが収穫できそうなのあったからな」

「おっさん、どうやって収穫時期かどうか分かるんだ?」

「おらが教えるだ。まずとうもろこしだな。絹糸が茶色くなってるやつの先っちょを軽くむいてみて実がつまってるか確かめるべ」


 おっさんの指示に従いとうもろこしをもぎ取っていく。横でなにやら隠れてとうもろこしをかじっているやつがいた。硬かったようで涙目で歯をおさえている。何やってんだお前は。


「生じゃ硬くて食えねえべ」


 二夕見がギクッとする。バレていたようだ。


「後で焼きとうもろこしにしてタレぬって食べさせてやるからな」

「い、いいんですか!すみません。あ、ありがとうございます」


 顔を赤くしながらお礼を言う。どんだけ腹減ってたんだよ。こいつも飲食店でバイトしたらクビだな。どこかのポンコツ泥棒と一緒だ。

 

 とうもろこしを収穫し終わり、次はピーマンやナスなどを収穫する。枝に繋がる部分をハサミでカットしていく。どれもずっしりしていて実が詰まっている。美味しそうだ。

 ピーマン、ナスの後は、残るはじゃがいもだった。


「春のじゃがいもがまだ少し残っとるからそれ抜いてくれるか」


 俺たちはじゃがいもの葉を引っ張り根っこを土から引っこ抜いていく。これはなかなか力がいる。どんどん引っこ抜いてかごに入れていく。そして最後の一つになった。しかしこれが根がしっかり張っていてびくともしない。しばらく一人で格闘するが無理だった。


「おい二夕見。このじゃがいもびくともしねえよ。ちょっと引っ張るの手伝ってくれないか」

「いいわよ」


 近くでじゃがいもについた土を落としていた二夕見が、葉の右側を掴む。


「大きい葉ね。根強くからまってそうね」


 俺は左側を掴み踏ん張る。


「「せーのっ!」」


 しかしそれでもじゃがいもは抜けない。こうなればあの言葉を言うしかないか。


「おい二夕見。やむを得ない。あの言葉を言うしかないぞ」

「何よそれ?」

「やれやれ。これだからお前は。この流れで言う言葉は一つだけだろうが!うんとこどっこいしょだよ!あの言葉を言えば抜けるって絵本に書いてあっただろうが」


 二夕見が呆れた顔で見てくる。


「はあ。『おおきなかぶ』ね。こんな規模の小さなじゃがいもにそんなこと言って恥ずかしくないの?ていうかそんなことで何かが変わるとはとても思えないけど」

「分かってねえなあ。ジンクスは大事なんだよ。いいから言うぞ」


 再度二人で腰を入れて引く。


「「うんとこしょどっこいしょ」」

「それでも株は抜けません」

「フラグ立てんじゃないわよ!そこまで言ったらほんとに抜けるまで時間かかるでしょ!」


 お前も信じてんじゃねえか。それにしてもあれだな。こんなに抜けてなるものかと必死に抵抗してしがみついているのかと考えると、なんか応援したくなるっていうか、シンパシー感じるな。


「もう一度行こう」

「「うんとこしょ、どっこいしょ」」

「それでも髪は抜けません。いいぞ頑張れ!負けるな!ストレスなんかに負けるな!毛根を張り巡らせてしがみつけ!死んでも抜けるな!ファイト!」

「やかましいのよあんたは!髪でもないし株でもないしじゃがいもだから!何に感情移入してんのよ!こっち応援しなさい!抜く気あるの⁉」


 二夕見がキレた。


「そんなこと言ったって、一度抜けたらもう二度と戻ってこないんだぞ!」

「だから何の話をしてんのよ!髪の毛むしり取るわよ!」


 しかし俺の顔を見ると態度を変える。


「べ、別に泣かなくたっていいじゃない。分かったわよ。そんなに切に訴えないでよね。あんたの場合はまだ若いんだし抜けても取り返しはつくから。ていうかあんた別にハゲてないでしょ。気にしすぎよ。ハゲるわよ」


 などと下手くそな励ましをする。


「分かった。掛け声がダメなんだ。ちょっと変えてみよう」

「そんなので変わるわけないでしょ」

「つなげて言ってみるか」

 

 また腰を入れて引く。


「うんこをどっこいしょ~」


 二夕見が手を滑らせてしりもちをつく。


「な、なんか今違くなかった?なんか汚い掛け声聞こえた気がしたんだけど。ほんとにうんとこどっこいしょって言った?」

「何言ってんだお前は。心が汚れてるから汚く聞こえるんだよ」

「空耳かしら。おかしいわね。たしかに聞こえような気がしたんだけどな」


 気を取り直してもう一度引っ張る。


「うんこをどっこいしょお!」


 するととうとう根っこが抜けてじゃがいもが飛び出してきた。


「やっぱり言ってんじゃない!汚い掛け声かけてんじゃないわよ!てかほんとに抜けたし!んこパワーで力増してるし。こいつほんとになんなの」

「これがトイレの神様に捧ぐ祝詞だ。トイレの神様が力をお貸しになられたのだ。ありがたや~」

「しかもちょっと宗教入ってるし。こわ。まじでなんなのこいつ」


 完全にドン引いている。




 そして農作業も終わり、牧場に戻ることになった。

 牧場に戻るとまだ馬たちは放牧していて、草を食べたり寝っ転がったりしていた。


「そうだ。最後だし兄ちゃんも馬の背中さ乗ってみるか?しおちゃんはもう何回か乗ったべ」

「楽しいわよ。初めは怖かったけど慣れたらアトラクションみたいで楽しいわ」

「ウィーリーがいいべ。人間に慣れてるし気性も穏やかだ」


 よりによってあいつかよ。

 初めに二夕見が乗ってみる。すると上機嫌に乗せ、ルンルンでスキップしていた。鼻の下もしっかり伸びている。エロ馬が。次は俺の番になる。



 しかし、予想に反して嫌がらずゆっくり走ってくれる。揺れも少ない。

と思っていたら―――


「じゃあ大丈夫そうだしおらは野菜さ置いてくるべ」


 とおっさんがいなくなった瞬間目をギラッと光らせ突然動かなくなる。


「おい。どうした。動けよ」


 鞍を揺すってみるが動かない。


「動けって!」


 俺が足で合図した途端、ものすごい勢いで走り出した。


「うおおおおおおおおおお⁉おい待て待て待て待て止まれええええ!」



 そしていきなり急停止し頭を下げる。さっきまでの勢いで俺は振り落とされそのまま馬糞の山に顔からつっこむ。


「ドゴーンッ!」

「……」


 全身クソまみれになって馬糞の山から這い出る。


「あははははははははっ」


 二夕見が顔も頭も茶色に染まった俺を見て爆笑する。


「な、なにやってんのあんた!どんだけんこ好きなのよ!汚すぎ!あははははははっ」

「二夕見ー!相撲取ろうぜー!」


 俺は二夕見に向かって抱き着こうと駆け出す。


「いやあああああああああ!こっち来んなああああああ!」


 悲鳴をあげながら二夕見が逃げていく。結局外のホースで目立つ汚れを落とし、風呂場に入って石鹸で綺麗に掃除した。




 厩舎に戻ると、二夕見が珍しく馬房の掃除をしていた。


「それは俺の仕事じゃねえのか?お前の仕事は外だろ」

「ま、まあ苦手だったしね。藁掴むの。下手なまま終わりたくないじゃない。そろそろ終わりだし」

「ふうん。じゃあ俺は外見てこようかな」


 俺が放牧地の様子を見に行こうとすると


「ね、ねえ。やっぱり上手く使えないから、使い方教えてよ」


 視線を落ち着きなくさまよわせながら、そう言ってくる。


「おお。お前は上側を持ちすぎなんだよ。あと握り方は上から掴むんじゃなくて下からも支えるように掴むんだ。その感じでやれば―――」

「そんなの口で言われても分かんないわよ。ちゃんと手で掴み方教えてよ」

「え?でもそしたらまたお前……」

「今日は軍手つけてるから。あんたもつけてくれれば、その、大丈夫だと思う」


 確かに二夕見の手には今日はさっきまで農作業で使っていた軍手がはめられていた。気のせいか顔が赤い気がする。


「そ、そうか」


 昨日のことをずっと気にしていたのだろうか。


「えっと。こ、こう持つんだよ」


 俺は隣に立つと、恐る恐る二夕見の手に触り、上から掴んで持ち方を教えてやる。


「な、なるほどね。こ、こんな感じなんだ」

「あ、ああ。そうだよ」


 変な空気が流れる。



 

しかし、突然、二夕見が鼻をつまみだした。俺と目が合い気まずそうに目を背ける。


「…おい。なんで鼻つまんだ。なんで俺から顔背けて深呼吸した」

「き、気のせいじゃない?ちょっと鼻がかゆかっただけよ。それよりもういいわ。ちょっと離れてくれる?」


 などと言って一歩離れる。


「いやいや。今度は汚い藁と綺麗な藁の掴み分けを教えてやるよ。ほら。もっかいこっちに来い」


 俺から一歩離れた二夕見に向かって一歩分の距離を詰め先ほどと同じくらい近づく。


「いやいやいやいや。もういいから。分かったから。十分だから。五メートルくらい離れて見ててくれる?」


 などとさっきよりも遠い位置を指して自分はさらに一歩離れる。


「遠慮するな?最終日だから教えて欲しいんだろ?みっちり近くで教えてやるからな?ほら。もっとこっち寄れ?さっきより近くでじっくり教えてやるから」


 俺はさっき教えた時の距離よりさらに近くに寄ろうとした。


「離れろって言ってんのよ!あんた臭いのよ!もう分かったからあっち行ってなさい!ほんとに臭い!ちゃんと体洗ったんでしょうね!分かっててやってんだろあんた!」

「みっちり洗ったわ!うんこ落としのスペシャリストの俺をもってしても一回じゃ臭いは落ちなかったんだよ!てめえが教えてっていうからこっちは教えてやったんだろうが!ふざけんな!おらあ!まずは馬糞の山につっこんでボロの気持ちを理解するところから始めんだよ!手始めにこの馬房にダイブしろ!同じ匂いになるからよお!」

「近寄るんじゃないわよこのんこ人間!そんなことできるか!ほら!これで刺されたくなかったら早く出て行きなさい!しっしっしっ!」


 などと結局いつもの流れになるのであった。

 




 帰り道。牧場から出ようとしたところで、後ろから誰かが追いかけてきた。


「おーい!待ってぐれええ!二人ともー!」


 立ち止まって振り返るとおっさんだった。


「あんな!最後にすんげえ話思いついたから聞いてほしいんだべ!こっれはすんごいべ!兄ちゃんおったまげるべ!聞いてくれ!今度はパクリじゃねえべ!こんれはすごいぞお!きっとゲーム化とかアニメかとかもするだ!」

「あんなあ!馬を擬人化させたものなんだけどな!可愛い女の子みたいな馬が走って競う競走馬の話なんてどうだ!笑いあり涙ありのストーリーでな、実際の名レースを再現するだ!もうビジュアルも考えてあってな、実在する馬の名前をそのままキャラの名前に使って世間に知ってもらうきっかけにするんだ!最近の若い子は萌えとか好きらしいからこれは売れるべ!名前もいいのが思い浮かんだんだ!それは、うまむす」

「もういいわ!最後までパクリじゃねえか!一番言っちゃいけねえやつ来たよ!めちゃめちゃ有名だよ!誰もが名前くらい知ってるよ!すでにアニメ化もゲーム化もして大ヒットしたけども!それだけは言わねえんだなと思ってたらオチに持ってきたか!最後まで温めてか!それだけはやめとけ?てかどんどん新しくなっていったなおい。最後はめちゃめちゃ最近のやつで完全に誤魔化す気もないな。最初から最後まで全部パクリだったな。タイトルまで完コピしてたな」


 二夕見は何の話か分からないようで首を傾げている。


「これもパクリ⁉誰だ次から次へとおらのアイディアをパクってるやつは!」

「あんただよ。本当に次から次へとパクってるよ」


 なぜか逆ギレするおっさん。まあ面白えおっさんだったよ。おかげで退屈しなかった。


「それじゃあな。二日間ほんとに助かったべ。ほんとは給料さ出したいところだけど出したらおらが学校に怒られるから出せねえべ。ご飯だけで堪忍してくれ。いつでも来たらいいべ。腹いっぱい食わせてやる。そして働かせてやるからな」


 それで誰が来るんだよ。


「「お世話になりました」」


 俺たちは頭を下げて、帰って行った。帰りも学校車が迎えに来てくれた。俺たちだけビップ待遇ってか?違うね。刑務所から出所したら気使ってお出迎えが来るようなものよ。ちなみに二夕見は帰りは爆睡してました。言うまでもなく俺も。


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