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一ノ瀬英一のおバカ譚  作者: 八野はち
37/69

35話 恐怖の館 泥棒助手⑤「俺がおしりを支えるんですか?」

「そういえば部屋の中あんなにぐちゃぐちゃにして大丈夫かな?」

「カメラはあの部屋にしかなかったぽいし、俺の後頭部しか映ってねえから問題ねえ。指紋も残してないし大丈夫だろ。帰ってくる前に引き上げよう。見つかったらまずいとか以上に普通に怖い。義無に会うのが」

「同意見すぎるよ」




 家の裏には門がなかったが、もう明るくなってきてるので正面の門に行って義無と出くわすのはまずいというか嫌だったので、何とか裏の塀を乗り越えることにした。正面の入り口の方は家屋が建っていて万が一見られるとまずいしな。



 俺が地面に両膝と両肘をつき、台になり、まず白銀を先に行かせることにした。その後外からロープを投げて引っ張ってもらうという作戦だ。


「じゃ、じゃあ乗るよ?」


 白銀が壁に手をついてバランスを取りながら俺の上に裸足で乗る。


「お、重くない?大丈夫?」


 恥ずかしそうにそわそわしながら上から尋ねてくる。


「重いから早く行け」

「ああ!重いって言った!僕全然ご飯食べてないのに!あれだからね⁉これは水を吸った分衣服が重たくなったからだからね⁉」

「冗談だよ。むしろもっと飯食え。今度焼肉連れってやるよ」


 そう言えばまだ二回目奢る約束果たしてなかったからな。二回目は焼肉に行こう。


「ええ⁉ほんとに⁉いいの⁉」

「ああ。この前奢るって言ってまだ奢れてないだろ。だからお疲れ様会も兼ねて焼肉にしようぜ」

「やったやった!そんなの行ったことないよ!食べ放題かな⁉」

「ぐおお!おいバカかお前は!人の上で飛び跳ねんな殺す気か⁉いくら軽くても重力加わったら重いんだよ!」


 人の背中の上でぴょんぴょん飛び跳ねている白銀に苦情を入れる。


「あ、ごめんごめん。嬉しくてつい。約束だからね。絶対だよ?」

「ああ。分かったからさっさと行け」

「分かった。いくよ!とお!」


 そう言って柵の上を掴もうと思いっきりジャンプする。しかし届かなかったようで落下してくる。俺の背中に。


「ぐえっ」


 数十キロの重さで背中を通して内蔵が圧迫され、腕と膝が地面にのめりこむ。


「だめだー。高くて届かないや。どうしよう」


 俺の呻き声を無視して呑気に呟いている。


「その前に俺を労われ。前言撤回だ。お前デブ。今すぐ降りろ」

「えええ⁉ひどいよ!デブじゃないから!重力だから!次で成功させるからそんなこと言わないでよ!」「でもごめんね。あんなに跳んで落ちてきたら重いよね」


 手を合わせて上から謝ってくる。


「踏みつけながら謝られても誠意を感じねえわ。あと一回くらいしか耐えられそうにないからな。死ぬ気で跳んでくれ」

「分かりました。じゃあせーのの合図で両肘両膝をピンて伸ばして、背中を上に向かって浮かせてもらっていい?その勢いプラスにしてジャンプするから。そしたら届くと思うの。ごめんね重いと思うけど僕も頑張るから」


 申し訳なさそうにお願いしてくる。


「分かった」

「じゃあいくよ?せーの!」


 合図と同時に肘と膝を浮かせ、背中を浮かせる。その勢いを利用して白銀が思いっきり跳んだ。そして―――


「よし!掴んだよ!」


 塀の上に掴まることに成功したようだ。よし。


「け、けど力なくて登れないかも!このままじゃ落ちちゃう!お願い僕の体下から押し上げて!」

「分かった!」


 しかし押し上げようとしたところで固まる。

 押し上げるって言ったっていったいどこを押せばいいんだ?足なんか押したところで意味ないし、こういう時は普通お尻なんだが…。


「早く押してよ一ノ瀬君!もう腕限界だよ!」

「いやそれがな。持ち上げるにはお前のお尻を押さねばならん。どうする?」

「えええええ⁉そ、そんなのダメに決まってるでしょ!いくら君でもそれはダメだよ!ダメだからね!」


 全力でダメを主張する。


「安心しろ。俺は戦いを知らずに堕落してぶくぶく太った脂肪の塊など興味がない。数々の試練を乗り越え成熟したお尻にこそ神はほほえむ。俺は硬いお尻にしか興奮しない」

「あれ?なんか思ってたのと違うんだけど?男の子ってそんなだったっけ?ていうかそれ君だけだよね?特殊性癖を暴露しないでくれるかな?僕だけ一人で意識して騒いでバカみたいなんだけど。もうきついし普通にお尻押してくれるかな?」


 白銀が急に冷静さを取り戻す。


「任せておけ。いくぞ」

「う、うん」


 


 

 しかしああは言っときながらもやはり緊張するようで声が少し震えていた。あの言葉で少しは気がまえずにすんだようではあるが。そして俺もああは言ったがやはり実際に触れるとなると緊張してきた。なぜだ?白銀の緊張が移ったのか?これはやましいことではない。人命救助だ。邪念をうちはらえ。人工呼吸とか心臓マッサージとかと同じだ。




「さ、触るぞ?」

「う、うん…」



 互いに緊張して変な空気が流れる。おいなんだこの空気。


 俺は両手を下からお尻に向けてそっと上にあげていく。徐々に近づいていき、触れる瞬間に、指を組みなおすと、かんちょうした。





「ひぎいいいいい⁉」


 白銀が悲鳴を上げながら落ちてきた。



「いたああああ⁉ええ⁉かんちょうした⁉な、な、なんてことするの君は!え、何で⁉てか女の子にかんちょうする高校生なんかいるの⁉それによくあの雰囲気の中でかんちょうなんかできたね⁉僕の覚悟返して!なんでしたの!」


 お尻を触られそうになった恥ずかしさとかんちょうされた恥ずかしさで顔を真っ赤にした白銀が詰め寄ってくる。



「いやすまん。照れ隠し?」

「ひっぱたいていいかな⁉せっかく上ったのに台無しなんだけど!僕の覚悟もジャンプも返してくれるかな⁉」


 一応大分加減はしました。はい。


「あと漫画みたいに飛び跳ねて塀超えるかなって思って」

「超えるわけないでしょ!そんなふざけた理由でかんちょうしたの⁉許せないんだけど!君覚えておくといいよ。このセリフ今日何度目かな!」




 かなり怒っているのが伝わってくる。だってかんちょうしないとなんかその後気まずくなりそうだったしなあ。変な空気流れてたし。




「悪いからもう一回ジャンプさせてやるよ」

「もう君は信じないから!またかんちょうするに決まってるよ!ていうか今考えれば別にお尻押さなくても君の肩に僕の足を置いて踏み台にして登るとかもあったよね⁉」


 白銀が責めるように俺を見てくる。


「あ。その手があったか。いやーすまん。豚肉以外にも牛肉頼みまくっていいから!ね?許してくれねえかな」



 両手を合わせて誠意を示す。いや普通に女の子のお尻とかどんな口実があっても触れねよ。俺にはハードルが高い。



「君このことは焼肉じゃすまないからね。これから泥棒するときで人手が必要な時は必ず手伝ってもらうから」


 腕を組んで睨みつけてくる。


「わかりました」


 まだ怒っているようだが、そろそろここから出ないとまずい。もう空が明るみ始めて闇にまぎれるのが難しくなってきた。まあ俺がかんちょうしなかったら今ごろ塀の外なんだけど。てへ。ていうかこんなに手間がかかるなら正面から門くぐって普通に出て行けばよかった。そしたら今頃外だ。でも万が一でも義無にだけは鉢合わせたくないのだ。






 結局もう一度俺が下となり何度かジャンプされた。心なしかさっきより乱暴に踏まれた気がした。位置調節の時なんか「もうちょっと奥」とか言いながら足でダンッて踏んで合図してたし。


あとあまりに成功しないから「もうかなりキツイぞ」と苦情を入れたら


「何でか知らないんだけどお尻が痛くてうまく飛べないんだよね。なんでだろう。あーお尻痛いなー」と返された。


「お尻さすさすしようか?」と言ったら無言でかかとでガンッと踏まれた。こういうタイプが怒らせると一番怖いことに気づき流石の俺も黙ることにした。






 ようやく塀の上を掴め、ぶら下がる。




「余計な事したら分かるよね?」


 と真剣な声で言ってきたので


「トイレの神様に誓ってしない」


 と言っておいた。腰を落として壁に背を向けながら白銀の足の位置の合わせる。両足が俺の肩に乗り、足を掴んで支えてやる。うまく踏み台にして上に登ることに成功する。下から靴を投げてやる。


「よし!ようやく成功だ!じゃあね一ノ瀬君。あとはうまく逃げてね」


 などと言って塀を降りようとしている。


「おいい!おいマジで頼む!俺が悪かった!二度とかんちょうしないから!ごめんって!」

「僕かんちょうなんて生まれて初めてされたんだよね。しかもまさか男の子にされるなんて思わなかったよ。もう戻れないんだよ。さっきまでの純潔な僕には。君のことは末代まで祟るから覚えておくといいよ。って言っても君はあんなに大事なかつらの部屋をぐちゃぐちゃにしてここから生きて出られるのかな。いったいどんな目に遭わされるんだろうね。さよなら。頑張ってね」


 振り向きながらそう言って塀を降りていった。


「おい許してくれ!本当に悪かった!あの部屋をぐちゃぐちゃにしたのはお前だと言うことは置いておいて!照れ臭かったんだ!いざ触るとなると恥ずかしかったんだ!魅力がないと言ったのは訂正する!俺が悪かった!謝るから助けてくれ!俺がいなくなったらお前焼肉食いに行けねえぞ!それでもいいのか!」


 俺の必死な叫びが早朝の町に響く。


「うーん。まあたしかにそれならちょっと可哀想に思えてきたな。どうしよう。分かったちゃんとした理由があってかんちょうしたことは認めるよ。でも僕のお尻に気安く触れたことは許されないからやっぱりダメだね。バイバイ」

「おいいい!ちょっと待てえ!それは違うだろ!お尻持ち上げることはお前も同意してただろ!どっちにしろダメなんじゃねえか!初めから詰んでるだろ!」


 俺のツッコミを無視して帰り支度をしている気配がする。






「おい!もしお前が見捨てたら、さっきお前が塀を掴んでいる時にお前のお尻の形をじっくり観察して脳裏に焼きつけたからその形で型取ったおまる作ってお前の顔写真と一緒に義無にプレゼントするからなあ!」

「ちょっとー⁉それだけはやめて!なんて恐ろしいこと思いつくの⁉世界一効く嫌がらせだよ!分かったから!そんなこと絶対しないで!今すぐロープ下ろすから!」


 壁の向こうから焦り出した白銀の声が聞こえ、すぐにロープが投げられる。




「まったく君は。敵に回すと君ほど恐ろしい相手はいないよ。それに君僕が頑張ってる間にずっとお尻見てたとかあとで話があるからね!かんちょうのことは一応まあ恥ずかしかったんならしょうがないかなって思ったけど!」

「おいおいお前さっきから声でかいぞ。こんな朝っぱらから変な事ばっか叫びやがって」

「主に変な事叫んでたのは君だったし、僕が叫んでるのは君のせいだから!」


 ロープを掴んで柵を上ると、上にたどり着き、そこからロープを掴んで慎重に下りる。


「ふう。信じてたぜ。お前ならきっとなんやかんや言いつつも助けてくれるって」

「最後はそうするつもりだったけど恐ろしいこと聞いたせいで、思ったより早く助けざるをえなかったよね」


 そう言ってジト目で見てくる。


「あんなん冗談に決まってるだろ。お前のお尻ジロジロ見たり、まして形覚えるほど変態でもねえよ」

「で、でも恥ずかしかったってことは多少は意識して見てたんじゃないの?ちょっとやらしい視線感じたよ」


 頬を染めて恥ずかしがりながら尋ねてくる。


「鍛え上げられたお尻にしか興奮しないこの俺に反応させるとはやるじゃないか。

お前には master of assの称号を与えてやろう。よっ、このスケベ!」

「うるさいから!スケベは君だから!その称号もいらないし!なんかかっこつけて発音良さげに言ってるけどイラっとするだけで全然嬉しくないから!普通にセクハラだからね⁉」


 自分から話を振っておきながら理不尽なことを言ってくる。







「てか話変わるがそろそろここから離れないとまずくないか」

「よし。じゃあもう帰ろうか。収穫はゼロだったし屋敷探すの以上に君にツッコむのが疲れたし散々だったよ」


 俺を見ながら愚痴をこぼす。


「お前だってミラクルドジかましてただろうが。家もしっかりハズレだったしよ。情報屋とやらはどうなってんだよ。知ってることも知らねえじゃねえか」

「おかしいなあ。今回初めて教えてくれたんだけどほんとに間違いだらけだったよね。何か手違いがあったのかな。ごめんね苦情入れておくね」


 不思議そうに首を傾げている。本来はしっかりしているやつなのだろうか。





「今日はありがとね。君がいなかったらそもそも金庫は開けられなかったしそもそも途中で何かしでかして失敗してたよ。どっちにしろ失敗ではあったんだけど。何より今日は楽しかったな。いつもは一人だから緊張するんだけど君と一緒だったからほんとに楽しかった。お疲れ様会の焼肉楽しみにしてるからね」


 ほんとに楽しそうな笑顔を俺に向けてそう言ってきた。


「なら手伝った甲斐があったな。俺も楽しかったよ。およそ人生で経験することのないだろう泥棒という貴重な体験をさせてもらったよ。次は二度とやらないが」

「ん?さっき次から呼んだら手伝うって言ったよね?僕まだかんちょうされたこと許してないんだけど。もしかして反省してない?」


 急に白銀の声のトーンが下がる。


「違う違う。義無ん家は二度とごめんって意味だから。そんなわけないだろまったく」

「なーんだ。そうだよねー。僕ったら早とちりしちゃったよ」



「「はっはっはっはっはっは」」




 冗談じゃねえぞ。こんな上条当麻ばりに運がない、激やば物件当てまくりなやつの手伝いなんかしてられるか!次は警視総監の家とか当てるぞこいつ。






「じゃあもう今日はここで解散にしよっか。いつまでもこんなところにこんな怪しいかっこうでいたら目立つしね。今日はほんとにありがとうございました。お疲れさまでした」

「おつかれさん。色々大変だと思うが頑張れよ。何かあったらいつでも電話しろ。情報屋の友達によろしくな」

「うん!伝えとくね。またねー」




 侵入した家の前で陽気に挨拶した泥棒二人は何もなしえず朝方の町に帰るのだった完。続かないでくれ。頼むか

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