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一ノ瀬英一のおバカ譚  作者: 八野はち
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34話 恐怖の館 泥棒助手④「ミラクルどじ」

 深夜に人の家でギャーギャー喚き合う俺たち。とりあえずいったん落ち着き先ほどの金庫の部屋に向かう。カツラはしぶしぶ置いた。


 





 金庫の部屋に着き、祭壇のようなスペースに置いてある、それぞれの悪魔が描かれた紙の上にお面をはめていく。四つ目の鬼のお面をはめた途端、石柱が床下に沈んでいき、四つの石柱の中央の床下から金庫が出てきた。



「おおっ。すげえほんとに出てきた」

「これだけして隠していた金庫には一体いくら入ってるんだろう!」


 白銀がさっきまで気持ち悪がって帰りたそうにしていたが、金庫を見た途端興奮し出す。


「案外呪物かもしれねえぜ。お面は全部悪魔とか鬼だったしな」

「怖いこと言わないでよ。でもアザミちゃんも中身までは分からないって言ってたな」

「まあ見てみれば分かるさ」





 二人で近づいてみると、金庫の上に一枚の紙が置いてあった。


「なにこれ?」


 読んでみると、


「黙示録のラッパをここに封印する。この世界を滅ぼしたくなった時に吹くべし」と書かれていた。

「黙示録のラッパって確か、新約聖書に書かれてた終末を告げるラッパだよね⁉このラッパが吹かれた時あらゆる災害が起きるっていう!」


 白銀が目を見開いてこちらを見てくる。


「あんなのただのおとぎ話だろ。俺は信じないね。おそらく黙示録のラッパは比喩だ。世界を滅ぼしかねないほどの何かをここに封印すると言いたいんだろう。世界を滅ぼすとまではいかなくても何か犯罪めいたものを感じるぜ。やばい危険ドラッグか?兵器に関する国家機密か?一体何なんだ?覚悟はいいか?開けるぞ?」


 白銀がごくりと唾を飲み込む。そっと手を伸ばし金庫を開けると、そこには―――





 リコーダーと一枚の紙が入っていた。二人して目をパチパチさせる。しばらく呆然とする。




「なに?リコーダー?これはどういうこと?」



 手に取ってみると山野律子と書かれていた。リコーダーの下に敷かれていた紙には


「イライラして癇癪がおさまらないときはこれを吸って落ち着くんだお。次使用人に当たったらみんな出て行くって言ってたんご。地団太踏んで床踏み抜くのもやめましょうって注意されたんご」と書かれていた。




「ふざけんな!お前律子のリコーダー盗んだんか義無!それでイライラした時ぺろぺろして落ち着けてたんか!何が黙示録のラッパだ!何が世界を滅ぼしたくなった時に吹くべしだ!ややこしい名前つけて意味深な紙置いてんじゃねえぞ!そしてこんな金かかる仕掛け施して仰々しく金庫に閉まってんじゃねえ!」


 いつまで引きずってんだこいつは。掲示板で何を学んだてめえは。使用人が一人もいない理由も分かったしよ。ラッパじゃなくてリコーダーだしよ。


「終わった。なんで僕の泥棒物件いつもハズれるんだ。好きな子に鉛筆落としてハラスメントしたりリコーダー盗んで精神安定剤みたいに使ってる人とか、トイレットペーパー愛好家で隙あらばトイレのデリケートな事とか下品なこと言ってハラスメントする人とか、そんなのばっかりだよ。僕がいったい何をしたっていうんだ!」

「ちょっとー?そんなのの一人が今君の隣にいるんですけど?そいつと並べるのだけはやめてもらっていいか?」


 そうとうショックだったらしく、俺の言葉も届かない。


「ほら、あれだよ。俺が飯奢ってやるから。もう今日は疲れたし帰ろうぜ」

「うう。また手伝ってくれる?」


 涙目で上目遣いで見てくる。


「考えとく」

「うわあーん!雑草食べてお腹下して君の家の前でうんちしてやるからあ!」


 白銀が壊れた。絶対言わないであろうことを言い出した。


「分かった分かった。手伝ってやるから。うんこはトイレでしろ」

「わがっだあ。〝ありがどね〝え」


 鼻水を垂らしながらお礼を言ってくる。可哀想だこいつはほんとに。運悪すぎて。






 リコーダーを戻すとお面を回収して部屋から出る。




「元あった場所に戻して帰ろう。何時に帰って来るんだっけ?」

「朝方としか。でも今四時半だからけっこう時間ないかも。急いで戻そう」

「了解」



 一階の絵画の部屋とオタク部屋に牛と馬のお面を戻し、二階に上がる。日記があった部屋に羊のお面を戻す。




「よし。最後はカツラの部屋だな。なあやっぱり一つだけでいいからさあ」

「あんな女の子のリコーダー盗んでペロペロしたりする人のカツラが欲しいんならどうぞ。でも僕はそれつけた君には近づかないからね」

「カツラに気を取られすぎて危うくとんでもねえもん頭に被るところだったわ。あいつ鼻もほじるしな」


 え?俺?俺のは植えたら花咲くから。あれ花の種だから。汚くない汚くない。






 最後の部屋に着いた。中に入り、鬼のお面をマネキンにつけて部屋を出ようとした時、ドアのそばに赤いボタンが設置されているのを見つけた。


「おい。なんか赤いボタンあるぞ。EMERGENCYって書かれてる。どういう意味だ?さっきあったか?」

「それ絶対押したらダメだからね。君が推すかもしれないからさっき見つけた時も言わなかったけど。多分家中に警報が響き渡るとか、警備会社につながってるとかだと思うから」


 白銀が真剣な表情で言ってくる。こいつ絶対過去に押したことあるんだろうな。



「それって絶対押すなよってことか?」

「なんでそんなうずうずした顔で指をワキワキさせてるのさ!絶対押しちゃダメだからね⁉」

「おいそれはフリなのか⁉」

「違うよ!ほんとに押したら二度と口利かないからね!」


 などと言ってくる。


「冗談に決まってるだろ」




 と言った瞬間。白銀がいつの間にかほどけていた自分の靴紐につまずいてこける。



「うわあ!」




 とっさに掴まろうとしたカツラのスタンドが倒れ、ドミノのように次々と倒れていく。ぶつかった衝撃でマネキンの顔が飛んでいき、柱時計にぶつかる。すると地面に落ちてきた柱時計が割れ、中の時計の針が飛んでいき、そのまま赤いボタンにささりカチッとなり




「部屋がロックされました」とドア横のスピーカーから聞こえた。




「お前どんなミラクル起こしてんだ!今日あんまりへましないなと思ったら最後の最後でかましてくれたな!」

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」




『誤って押した場合に備え、一度だけ暗証番号を打ち込めます。間違えると出られなくなりますのでご注意ください』




 スピーカから警告がされる。スピーカーの上の壁がパカッと開き数字が書かれた画面が出てくる。

それにしてもこの部屋だけこんな厳重なセキュリティがしかれてるのなんだよ。他の部屋にはこんなボタンとかシステムなかったぞ。カツラ死守しようとしすぎだろ。





『四桁のパスワードを入力してください』





「四桁のパスワードなんて5000パターンくらいあるよ⁉だめだ。僕たちこのまま捕まるんだ。明日の新聞の見出しはこうだよ。

『高校生泥棒捕まる。狙いはカツラかリコーダーか⁉』」


「いいじゃねえか高校生探偵の対みたいで。インタビューのセリフ分けしとこうぜ。俺が

『また会おうぜ名探偵』って言ったらお前


『世紀末の鐘の音が鳴りやまぬうちに』って言えよ。よしこれでいこう」


「言ってる場合じゃないでしょ!そもそもインタビューなんか受けないよ!」


 白銀がくわっとツッコんでくる。


「でも君は僕に無理矢理従わされてたって言うから大丈夫だよ。君にまで迷惑かけれないよ。ありがとね。手伝ってくれて。僕が刑務所から出て来ても仲良くしてね」


 急に真剣な表情になると優しい笑顔で笑いかけてきた。


「じゃあ『俺友達でーす!母ちゃん見てるー⁉』でいいや」

「だから捕まったらインタビューなんか受けないの!ていうか君には人の心がないの⁉そんな映りこんだ友達Aみたいなノリでかばった友達犯罪者の横でピースしないで!僕は犯罪者Aになっちゃうんだよ⁉今の流れでよくそんなこと言えたよね⁉」


 白銀が目を見開いてツッコんでくる。


「冗談だ。お前一人だけ捕まらせるわけねえだろうが。ていうか誰も捕まらせねえよ。なんで俺がこんなに余裕か分かるか?」

「有名人になれると思ってるからでしょ」

「だから冗談だって言ってんだろが!」


 真顔で言いやがったこいつ。


「俺にはこのパスワードが分かってるんだよ」

「ええ⁉5000パターンだよ⁉どうやって当てるのさ!一回でもミスしたら終わりなんだよ⁉」

「蛇の道は蛇ってな。こいつの考えるパスワードなんてすぐに分かる。こいつは必ずこの数字にしたはずだ!」


 そう言って俺は数字を打ち込む。



「2323!」



「ピピッ」



 CLEARと画面に表示される。



「すごい!なんでわかったの⁉」


 白銀が驚いた顔で聞いてくる。


「2323。言い換えるとフサフサだ。ここまで言えばわかるな?」

「へ、へーそうなんだ。あの、なんか、ごめんね?」


 なぜか謝られた。


「ありがとうだろうが!謝んなふざけんな!」




『ウィーン』



「あれ?なんかまた壁が開いた。映像が映ってる。これ君の頭頂部じゃないかな?」

「なんで?」


 スクリーンにはピピッと音を鳴らしながら俺の頭頂部に焦点が合っている。





『ピーッ!ピーッ!』



 急にスクリーンが赤く点滅し出した。





『毛量オーバーです』




 スピーカーからそうアナウンスされ、スクリーンには『毛量オーバー』という文字から

『liar is dead』に代わり、急に床が開いた。




「うおおおおおお!」

「きゃあああああ!」


 滑り台となっていてどんどん下に落ちていく。


「ふざけんなー!そんな規定オーバー聞いたことねえぞー!重量オーバーみたいに言ってんじゃねえ!でもちょっと嬉しいー!」


「喜んでる場合じゃないでしょー⁉どうなるのこれー⁉」


 そのままダストボックスのようなところから外に放り出され、裏の池に落ちる。


「うおおおおおお!」

「きゃあああああ!」


「バッシャーン」


 浅かったが全身浸かるようなかっこうで落ちたため二人とも全身びしょ濡れになった。



「な、なんでこんな目に」

「ふざけやがって。ハゲしかクリアできないクソゲーじゃねえか」




 立ち上がって池から上がる。外はまだ暗く、むし暑かったため寒くはなかった。


「うう。気持ち悪い。びしょびしょだ」


 白銀が愚痴をこぼす。



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