18話 「花は間に合わなかったので、花の種(はなくそ)でいいですか」
「ジャー」
レバーを押して水を流すと紙を取ろうとして俺はあることに気づく。
「おいトイレットペーパーがないってどうなってんだ?教えはどうなってんだ教えは」
こぼれた愚痴が誰もいないトイレの中に響き渡る。俺はイラつきから空のトイレットペーパーをカラカラさせる。もし今日が激しい腹痛を伴うタイプだったらイラつきではなく絶望していただろう。トイレから離れる余裕などないからな。そういう時にトイレットペーパーがない時の絶望感は半端ではない。
個室から出ると、隣の個室の前に立つ。隣の個室に誰かいるものなら分からないはずがないが、自称『トイレの騎士』である俺は紳士らしく二回ほどノックをする。案の定返事は返ってこない。休み時間ならともかく授業中にトイレで誰かに出くわすことなど珍しい。中に入ってトイレットペーパーを取ると個室に戻る。念入りにけつを拭く。
だがこの時気をつけることは強く拭きすぎてはいけないということだ。一度痔になったことのある俺はその時の恐怖をしっかり体に刻まれている。だから俺は日々その痛みと戦っているあいつには畏敬の念を抱いているのだ。けつを拭き終わりズボンのチャックをしめるとベルトもしめる。
ドアを開けると念入りに指の隙間から手の甲、手首まで綺麗に石鹸で洗い汚れを落とす。こうしないと口うるさい女がいるからしょうがない。まあもともとやっていてことだが最近はさらに念入りに洗ってやっている。
トイレから出ると、一瞬屋上に行くことが頭に浮かぶが先月やらかしたばかりであることを思い出し、めんどくさいが教室に戻ることを選択する。
教室に着くと、国語の教師の村田鉄尾が腕組みをして俺の席の側で待っていた。
「おい一ノ瀬。誰が勝手にトイレに行っていいと言った?」
「すいません今日は男の日なんです」
「ほなしゃあないか」
端っこの席の蓮がそう言ってうんうん頷いている。
「勝手に口を挟むな和泉!なんだそれは!貴様ふざけているのか?」
「男の子は週に一回くらい自由を探しに行きたくなる発作があるんです。明日は夢を探しに行くのであしからず」
「ふざけるな貴様!そんなふざけた理由が通じると思うな!」
顔を真っ赤にして激怒する。
「じゃあ本当のこと言います。先生の口が臭すぎて限界でした。でも勝手に行ったことは反省してます。だから僕も謝るので先生も謝って下さい。それでおあいこにしましょう」
「なぜ私が悪いみたいになっている!第一貴様は一番後ろの席だろうが!貴様退学にされたいらしいな!」
「僕も思ってました!先生謝ってほしいです!」
蓮がまた口を挟む。
「貴様は黙っていろと言っているんだ!貴様ら先生をおちょくるとはいい度胸だ!いいだろう!今日の放課後には退学だと思え!」
そう吐き捨てると壇上に戻って行った。
その話はそこで終わった。
放課後になり、蓮はトイレに行ったため部室に行ってみると鍵が閉まっていた。職員室に行こうとしたところで、二夕見しおがやって来た。二夕見しお。学校福祉部の部長で、重度の男嫌い。漢の中の漢である俺は特に嫌われている。もう一人の女子部員いわく好意らしいがとても信じられん。こんな好意があってたまるか。
「何してんの?」
「鍵閉まってるんだよ。今から取りに行こうかと思ってたところだ」
「ふーん。行ってらっしゃい」
「…代わりに行ってくれたりとかは」
「は?するわけないでしょ。さっさと行って来て。はいダッシュ!」
ダッシュ!と言って手を叩いてくる。体育会系の部活のマネージャーかお前は。
「今日池田を煽りすぎて職員室行きづらいんだよ。他の先生に説教とかされたらめんどくさいし」
さっきはああ言ったがよくよく考えてみると授業中にそっちゅうトイレや屋上に行く俺たちはあまり先生たちの間でも評判が良くないことを思い出したのだ。会議で挙げられたりしたら面倒なことになる。
「池田先生?あのやらしい目つきで女子のこと見てくる国語の先生でしょ?何でまたそんなことしたのよ」
「あいつ授業中トイレ行かせてくれねえから俺たちはあの手この手を使ってトイレに行くんだよ。それでまあちょっとな」
「…まあたしかにそれは可哀想か。いいわ。でも私だけ行くのは癪だからあんたも一緒に行くのよ。鍵は私が取ってあげる」
などとよく分からないことを言う。
「それ俺行く意味あるか?」
「黙って付いてきなさい。どうせ待ってる間暇するんだしいいでしょ」
黙ってついて来いと言わんばかりにおいでおいでする。
「わかったよ。まあお前が俺の頼み聞いてくれるなんてこれが最初で最後かもしれないしな」
「なにか言ったかしら」
二夕見の眉毛がぴくりと動く。
「いやなんも」
本当に聞こえなかったのか聞き流すことにしたのか話を続ける。
「あんたがトイレ行ったのって五時間目の時だっけ?」
「そうだがなぜ知ってる」
「また汚いやつがトイレ行ってるなーって思ったからよ」
前を見ながら息をするようにディスってくる。
「お前ほんと毎回見てるよな。授業聞けよ。どうせいつも今日の弁当の中身なんだろーとか考えてるんだろ」
「考えてないわよ。それに私は賢いから別に授業なんて聞かなくてもいいの。その上視野も広いのよ。だから異物が近くを通ったら敏感だからすぐに気配で分かる」
「あ?それ俺のことか?確かに俺は国の遺物みたいなところあるが。すなわち日本遺産だな。なにそんなに褒めるな照れる」
「貶したのよ!どんなプラス思考よ!どうやったら今の悪口から日本遺産に持っていけるわけ⁉」
驚きのあまり歩みを止めてこちらを向いて問いかけてくる。
「俺は日本遺産にして天然記念物みたいなところあるからな。丁重に扱えよ。日本の宝だぞ。だから二度と俺に暴力をふるうな。天然記念物を怪我させた場合文化財保護法違反で五年以下の懲役、もしくは禁固または三十万円以下の罰金に処されるぞ。今日の授業で言っていた」
「国の宝っていうか国の汚点よね。天然記念物?あんたみたいな危険生物が少数とはいえ他にも存在しているのだとしたら恐ろしいわ。一刻も早く駆除しないと国家の未来に関わるわ。ゴキブリ並みの菌と生命力を持つ上に、新種のウイルスまで持ってるらしいし。天然記念物っていうかもはや害獣よね」
「史上最悪の生物じゃねえか。俺はどれだけ醜い生物なんだ?誰が害獣だこら。だったらお前は特定外来生物だよ。生態系のバランスを破壊する。植物も動物もたくさん殺す!」
だんだん言い合いに熱が入って来てお互いに睨み合いながら罵り合う。
「あんただって似たようなものでしょこのアフリカマイマイが!鹿児島県の生態系みたいに部室の生態系も破壊する気ねこの外来種!その上触れたら発病する寄生虫を飼ってるらしいじゃない病原菌持ちのあんたそっくり!」
「誰が病原菌持ちだクソ女!それに世界最大級のかたつむりをチョイスするとは腹立たしいやつだな。失礼なやつめ。俺はトイレのレバーは壊したことはあるが生態系は壊したことはない」
「トイレも壊すんじゃないわよ!」
ギャーギャー言い合いながら歩いていると、気づくと職員室に着いていた。蓮浦がちょうど職員室から出てくるところだった。
「あれ?りん。もしかして鍵取りに来たの?」
先に蓮浦が鍵を取りに来ていたようだった。
「そうや。どうせ鍵開いてないだろうなって思て。せや、一ノ瀬君が来たら職員室に来るようにって河原先生が伝えてくれって言ってたで。またなんかしたん?」
「おかしいな。まったくもって身に覚えがない。多分八つ当たりだな。まったくあのアラサーは」
こうやってハラスメントが生まれるんだな。
「そんなわけないでしょ。どうせあんたが悪いわよ」
「知らんで。そんなこと言って聞かれてたら。今すぐそこにいるんやで」
「まったくあのきれいな先生に呼び出しされるとかたまらんな。花でも持ってこればよかったぜ」
「手のひら返し早すぎでしょ」
二夕見がジト目で見てくる。
「あれ?一ノ瀬いるじゃないか。何やら悪口を言われている気がして来てみたら。丁度良かった。話があるんだ。ちょっと来なさい」
などと言っていると本当に近くにいたらしい河瀬先生が職員室から顔だけ覗かせて声を掛けてきた。何ちゅう嗅覚してんだこの人。最初の方は聞こえてないっぽいな。よし。
先生に連れられて職員室に入れられたが、池田はいなかった。角の談話スペースまで連れていかれる。
「丁度今先生に呼び出されるとか光栄だなー。って話してたところだったんですよ。花でも持ってこればよかったな言うて」
「ほう。で?花は?」
「間に合わなかったんで花の種はなくそでいいですか?ちょっと待ってくださいね。今からほじるんで。土に植えて毎日水あげたらそのうち咲くんで」
そう言いながら鼻をほじろうとすると手で制された。
「どれ。それなら私がほじってあげよう。今後ほじりやすいように穴をもう一つ増やしておくとするか」
指を二本立てピースサインをすると俺の顔に近づけてくる。
「いえいえいえ結構ですー。あの何か用があったんじゃないんですか?」
俺は話を逸らすことにした。
「ああそうだったな。なんなら本当に花の一つや二つ持ってきてくるべきだぞ君たちは。お前授業中に無断で席を立った上に勝手に授業を抜け出してトイレに行って、口が臭くて我慢できなかったとか言ったらしいな」
「いやー。お耳が速いことで。でもそれはあいつがトイレに行かせてくれなかったから仕方なくやったんすよ。まあ最後はちょっとふざけましたけど」
「まったく。私がどれだけ苦労して君たちを庇ってあげてるのか一度聞かせる必要があるな。今回もその件を職員会議にかけようと思っていますなどと言い出してな。私が君たちを庇っていることを知っているのをいいことに、
『今度お食事に付き合ってくれると約束してくれたら私も考え直すんですが』などと言い寄って来た」
思い出して苦い顔を浮かべる。
「げっ。それでなんて返事したんですか?」
「前向きに検討させていただく方向性で善処させてくださいと言っておいた」
「何すかそれ絶対行かないやつじゃないすか最高すか。でもほんとすいませんねまた迷惑おかけしたみたいで」
俺は軽く頭を下げる。
「何ああ言ったが私は君たちのような子の味方をするために教師になったんだ。存分に理不尽には抗いなさい。ただしさぼりすぎるのは感心しないがな」
「先生かっこよすぎっすよ。じゃあ俺もその件については前向きに検討させていただく方向性で善処させてください」
「ガンッ」
拳骨された。
「いてえ⁉」
「真似せんでいい」
拳骨した拳にふっと息をかける。そんな銃みたいな。たしかに破壊力は兵器に匹敵するが。
「尊敬する大人を見習ったまでですよ。社会に出たら使わせていただきます」
「君はほんとに可愛くないなあ。はあ可愛い子供とか欲しいなあ」
一瞬でしょうがないやつだなあといった顔から虚無の顔に変わる。何この人躁鬱?
「母親に『ママ私弟か妹欲しい!』って言ってみたらどうです?」
「私今二十九だぞ?そんなこと言ったら泣かれるか病院に連れていかれるだろうが。あとちなみに両親は今年で還暦だ」
「そうっすよね。もちろん冗談ですよ」
なんかこの人子供の代わりにたくさんペット飼って行き場のない母性をぶつけてそうだ。
「なんだそれは?私くらいの年なら親は還暦くらい過ぎて当然だと言いたいのか?」
急に眼光が鋭くなり、暗に「そこから先は言葉を選べ」と言われた気がした。
「いやいやいや。俺が賛同したのは泣かれるってところっすよ」
焦りながら取り繕う。
「なんだ。そうだよな。いやすまない。私くらいの年になるとそういった話には敏感になるんだよ」
今度は一転して表情が柔らかいいつもの先生に戻る。どこに地雷が落ちてるか分かったもんじゃねえよ。
「というか私は兄弟として子供が欲しいんじゃなくて自分の子供が欲しいんだ」
「まあそれが無理だから代案を出したんじゃな――」
「ああ?」
一瞬鬼神が先生の後ろに見えた。
「さ、さっきも言ったけど冗談ですから!」
「じゃ、じゃあなんか出会い系アプリ始めたらどうです?」
今度は別の案を提案する。
「嫌だ!なにが『私たち〇ップルで結婚しました!』だ!そんなのするくらいだったら一生独り身でいてやる!そして世のカップルの撲滅運動を始めてすべてのカップルを駆逐するまでやめないからな!
少子高齢化を促進させまくってこの国をぶっ壊してやる!私一人では死なんぞ!ついでに地球も滅びてしまえ!死なばもろともだ!少子高齢化万歳!地球温暖化万歳!」
空に向かって手を掲げている。
「過激派すぎるでしょ。どれだけ性格歪んでんだよ。ひがみなんてもんじゃねえぞ。これが教師の言うことかよ」
ていうか職員室でこんなに騒いでいいのかよ。
「じゃあもう先生は結婚も子供も諦めるんすね?」
「やだやだやだやだやだやだ!結婚したい子供欲しい!一人寂しい!誰か結婚して結婚して結婚して結婚してえええええええええ!」
「おい大の大人が駄々こね始めたよ。ついに幼児化しちゃったじゃん。人間追い詰められるとこうなるんだな。さっきまでのかっこいい先生を返してくれよ」
俺が幼児化した先生に気圧されていると、近くでブツブツ女性の低い声でまくしたてるのが聞こえてくる。
「チッ。クソみてえな会話しやがってよ。コーヒーがまずくなるだろうがよ。ケッ!同級生はどんどん結婚していくし、男も見る目ないやつばっかだし。お兄ちゃんも女作るしよ。マジで私以外の女みんな死ねよ。
何が『夫がかわいいって言ってくれなくなった』だよ。何が『子供が構ってくれなくなった』だよ。私なんかそもそもかわいいって言ってくれる男なんかいねえんだよ!構ってくれるくれない以前に子供なんかいねえんだよ!旦那と子供いるだけありがたく思えってんだよボケが!チッチッチッ!」
どうやら近くに座って仕事をしていた木山先生が話を聞いていたようだった。今まで見たことないくらい黒いオーラを垂れ流していた。怖すぎる。この人も一緒にカップル撲滅運動とか始めそうな勢いだ。
正面の駄々っ子、後方のぶりっこに挟まれ絶望的な状況に陥ってしまったその時、二夕見の声が職員室の外から聞こえてきた。
「一ノ瀬ー!長くなりそうだったら私たち先部室戻るわよー?」
「はっ。私は今何をしていた?子供が欲しいとぼやいたところまでは覚えているのだが…」
二夕見の声に河瀬先生の意識が正常に戻った。
「先生。大丈夫。アラサーはまだまだ可能性ありますから。ここからじゃないですか。むしろこのくらい成熟した大人の女性の方が魅力的ですし受けがいいこともありますって」
「む?何だ嬉しいことを言ってくれるじゃないか。突然どうしたんだ?なぜ私は励まされている」
「まあてわけで俺はもう部室に戻りますね。二夕見たちも待ってるみたいだし。池田の件はすいませんがお願いします!」
記憶が戻る前にこの話を打ち切らなくては。
「あ、ああ。任せなさい」
「んじゃ!失礼します」
軽く先生に挨拶すると職員室を出た。外では二夕見と蓮浦が待っていた。
「悪い待たせたな。先に行ってるもんだとばかり思ってたよ」
「私もそう言ったんやけどしおが待ちたい言うから」
「は、はい⁉一緒に来たから何も言わずに先に戻るのは悪いと思ったのよ!」
二夕見が急な裏切りに驚き取り乱す。
「そんな心配すんなって。お前の陰口はちょっとしかしてないから。態度はでかいくせに胸は小さいとか言ってないから」
「そんな心配してないのよ!ていうか最後のはもう言ってるもんでしょうが死ね!」
赤らめた顔から一転睨みつけてくる。
「で、ほんとは何の話してたの?」
三人で部室に向かって歩きながら話す。
「まあ日本の少子高齢化社会と地球温暖化問題について少し議論が白熱してな」
「はあ?あんたが?嘘つくんじゃないわよ。あんたトイレ以外で真面目な話なんてできたの?」
二夕見が疑い深く見てくる。
「当たり前だ。実に嘆かわしい問題だ。心が痛いよ。SDGSなどすべての国民がトイレをギリギリまで我慢して水の量を節約することを意識すれば解決する話だというのに」
俺はエア眼鏡をくいくいさせる。
「そんな簡単なわけないでしょ。バカ丸だし。頭悪いやつが考えそうなアイディアね」
バカにするように肩をすくめる。腹立たしいポーズだ。
「ていうかどうせあんたSDGSが何なのかも知らないんでしょ?」
「失礼な何を言うか。SDGSほど解決を叫ばれる問題を知らないわけがあるまい。毎晩夜寝る前に考えてるまであるな」
誠に遺憾だ。
「じゃあSDGSって何の略か言ってみなさいよ」
二夕見が挑戦的な顔で見てくる。
「そんなの余裕だわ。ドラゴンボールスーパーグレートサイヤマンだろ」
「それだったらDSGSになるでしょ!しかも全然違うし!寝る前にドラゴンボール見ただけでしょうが!」
「何だよじゃあお前言えんのかよ」
偉そうにしやがって。
「Sustainable Ⅾevelopment Goalsの略よ。お分かり?」
いちいち発音よく、ドヤ顔で言ってくる。
「なんだほとんど一緒じゃねえか」
「どこがよ!」
ちなみに蓮浦も知っていたようで当然みたいな顔をしていた。
「あんたは馬鹿だからお家でバナナでも食べてなさい」
言われっぱなしじゃあ男が捨たる。ここはひとつガツンと言ってやるか。
「お前こそタンパク質とらないと胸大きくならないらしいぞ。ん?でも不思議だな。お前正直普通の女子の倍くらい食べるよな?普通に考えて平均バストより大きくなるはずだよな?日本人の平均サイズはCカップだよな?あれれ~?おかしいぞ~?」
俺の中の小学生探偵が疑問を抱いたようだ。
「くっこいつウザ!私は着やせするタイプなだけだし!あと十代の平均バストはA~Bだし!私は二十代になってから大きくなるんだし!あとあんたそういうこと知ってるのキモすぎだし!」
「バストは子供!頭脳は大人!その名も!二夕見しお!」
再びエア眼鏡をくいくいさせる。
「ねえりん。二人で協力してこいつ殺さない?こいつならきっとトイレに流せるわ。汚物だし」
二夕見は言い合いじゃ勝てないと思ったのだろう。俺を無視し蓮浦に言い寄る。
「はあ。おい一ノ瀬くん。言い過ぎや。しおはこう見えてけっこう気にしてるんやからほどほどにしとき。好きな子に意地悪する男子みたいやで」
蓮浦が助け舟を出す。
「べ、べつに気にしてないし!」
「いや確かにその通りだ。俺が悪かった。そんなに気にしていたとは。言い過ぎた。許してくれ。だがな二夕見。世の中には小さいのがいいって言う男もいるんだぜ。ほら。日本人は慎ましいものが好きだろ?わびさびを愛し和を尊び、日本の伝統文化を愛する心を忘れない真のジャパニーズはお前の真価に気づくはずだ。
ちなみにウィキペディアによるとわびさびとは
『慎ましく、質素なものの中に奥深さや豊かさなど趣を感じる心、日本の美意識』だそうだ。慎ましさの中に豊かさを感じるとはすごい矛盾だな。
さすが真のジャパニーズだ。半端じゃねえ。まあつまり何が言いたいかというとだ。良いことあるって!どんまい!」
「うっさいうっさいうっさい!あんた謝るつもりないでしょ!煽ってんだろ!何が真のジャパニーズよ適当なこと言って!ぶっ殺すわよ!」
励ましてやったのになぜか二夕見がキレる。
「はあ。この二人は仲いいのか悪いのかよう分からんわ」
蓮浦が一人ぼやいていた。




