第八話「東部戦線」
~東部戦線 シーアン要塞群~
ここまで来るのは久しぶりだなぁ……普段前線基地なんてこないしいつもナトゥア様にくっついてたし。
今が戦時じゃなければ色々見て回るんだけどなぁ。
今も遠くから雷のような鋭い砲撃音が数えるのも面倒なほどに腹に響いてくる。一刻も早くこの方面を片付けなければ。
~東部軍司令部~
「ニコ、西はもういいの?」
「はい。向こうにはディエスタ様が向かわれましたので。」
「なら心配ないけど。まぁいいわ、紅茶を入れてちょうだい。今日は砂糖多めで。」
「かしこまりました。」
あぁ……久しぶりだ。やっぱりナトゥア様といると安心する。こうやって紅茶を入れてる時、一番心が落ち着く。
「ありがとうね。」
ナトゥア様は一口だけお茶を口に含んで満足そうに微笑んだ後、目線はそのままに、
「戦況は良くないわ。」
予想外のことを言った。
「……え?ディエスタ様からはこの戦線が一番優勢と…」
ナトゥア様は少しため息を吐いて、紅茶を置いた。
「筆頭は一体何を考えてるのか……戦線が安定してるのは確かよ。でもそれは戦略予備を八割方前線に突っ込んでようやくってぐらいよ。」
「新兵も訓練は程々に前線に詰め込んだから犠牲者は膨れ上がるばかり。私と貴方で機動的に敵に打撃を与えようとしても着いて来て戦線を構築できるだけの部隊はいない。」
……これは…この戦況をどうやって打開しろと?今のところ完全に八方塞がりだ。でも時間をかければ戦略予備を使い果たしてしまう……
「……それでも、なんとしてでもこの方面を押し上げる必要があります。」
ナトゥア様はこちらに憐憫とも読み取れそうな目だけをこちらへ向けてまた少しため息をついた。
「貴方の立場は理解してるつもりよ。でも不可能なことは不可能よ。私からしたら西の方がよっぽど押し返せそうよ。」
耳が痛い。西は私の失態で失陥してしまった。あちらにはアレスの主力がいる、突破は現実的じゃないだろう。ナトゥア様も分かってる。自分の戦線を動かせないことにストレスが高まってるんだろう。
「……戦略予備はどれぐらいいますか?」
「ざっと50万ってところね。前線には今400万ぐらいがいるわ。」
50万……大軍なのは間違いないが戦略を誤れば一瞬にして消え失せてしまうような数だ。
今全土に徴兵令を出してるけど使い物になるのに最低でも三ヶ月はかかる。そんなに時間をかければ敵もかなり厚くなるだろう。最悪の場合アレスの第二軍がきてもおかしくない。
そうじゃなくても三ヶ月もあればどこかの戦線で大攻勢が来てもおかしくない。時間はかけられない。
「その50万を使って攻勢しましょう。何としてでもこの方面を押し上げなければいけません。」
ナトゥア様は静かにこちらを向いた。その目は冷たく、鋭い。
「戦略予備を使い果たすとはその後の敵の攻勢に削られる一方で戦略的に完全に敗北するということよ。それに東部の国境はフラットだから一度押されたら止められない。それを理解しての発言かしら。」
ナトゥア様の言葉は真実だ。あと三ヶ月は追加の兵が期待できない以上ここで戦略予備を使い果たすのは愚策以外の何物でもない。
それでも
「それでも私は攻勢を提言します。西はアレスの主力が、北は精霊国に対して敗北を続け後退を繰り返しています。このままでは西部前線と北部前線が接続されそれこそ魔国の総兵力をぶつけてなお勝てるかの賭けになるでしょう。この東部前線を押し込んで余剰戦力を西に送ること。それが魔国のとるべき唯一の戦略です。」
自分でも無茶言ってるのは分かる。それでも進まなければ、魔国に未来はない。
「……50万人全てを使い果たすのは許可できない。20万人、それが最大よ。それ以上使えば敵の攻勢を受け止められない。」
20万人、明らかに足りない。一極集中させようと十数キロ前進するのが関の山だ。いや、まだいる!使える兵力が!
「ナトゥア様、確か四天王直下の特殊師団がいくつかあったはずです。あれを使いましょう。」
特殊師団、といえば聞こえはいいが実際はこれまでの魔国で実力はあるが性格だったり戦い方だったりが特殊で普通の部隊に組み込めない、ようは曲者集団だ。
「彼らを?私はここから動けないわ。指揮するのはあなたよ。彼らを自分の思い通りに動かせると?」
「問題ありません。私だって何もせずに平和を過ごした訳ではありません。」
「ふーん…まぁいいわ、それなら筆頭に伝えといてあげる。それと五個歩兵増強師団を貸すわ。好きに使いなさい。でも、」
ナトゥア様は少し息を吐いて、
「そこで負けたら、あなたを庇えるかは怪しいわよ。」
「問題ありません、全て上手くいかせます。」
……そんな実力が私にあるかは怪しい。でも何故だろう、失敗する気がしない。
矮小な人族ごとき、すり潰してやる。
拙い文章で読みにくかったかと思いますがここまで読んで頂きありがとうございます!
感想コメントやアドバイス、「ここおかしくない?」など何でも書いていってください!
では、次回もお楽しみに!!




