第六話「帝国の精鋭」
~アルヤ港 北部~
『トウガニッツ様、私の結界が無効化されています。』
この報告だけは聞きたくなかったなぁ。ニコの結界は完璧に作動してた。それを破るとなると以前見た事がありさらに研究してたってことだ。かなりの強者がいるなぁ…速攻は無理だね。
ニコにとりあえず正攻法で行くことだけ伝えて通信を切り替える。
「『白虎』諸君らに告ぐ。敵への奇襲は失敗した。我々はこれから『銀狼』の負担軽減のため魔力を解放、新たな戦線を開く。」
それだけ言って僕は背中の魔法封印を解いて『羽』を解放する。封印が剥がれ落ちていく度に内から魔力が湧き、深い碧の羽が顔を見せる。目は碧く澄み渡り視界がクリアになるのが感じとれる。
あぁ…久しぶりだなぁ!力を解放するのは実に40年ぶりか?魔力が体に満ちていく……!
高位索敵魔法展開、特異狙撃魔法展開、特異貫通魔法展開、固有魔法『舞踏会』発動。
「舞え」
体から溢れ出した魔力が凝集してできた魔弾が目で捉えられないスピードで飛び出す、敵の頭を砕くただそのために。第一陣が敵に到達するよりも前に第二陣が飛び出し敵を屠る。
高位支援魔法、中位身体結界展開、特異支援結界展開。
『戦場は整えた。帝国軍人として華々しい初陣を迎えられることを誇りに思い、その魔力の一滴まで、その体の一欠片まで全て帝国と魔帝の為に尽くせ。』
『突撃』
極限まで士気の高まった部隊を止めるのは容易ではない。雪崩の如く敵部隊に突撃していく白虎に恐れをなし、あるものは前線魔導兵に斬られ、あるものは騎兵に轢かれ、あるものは前線支援魔導兵にその頭蓋を貫かれる。
雑兵相手なら何一つ問題は無さそうだ。僕の仕事は敵の頭を落とすこと。敵の魔力は全部同じくらいに見える。かなり隠してるなぁ…仕方ない。
低位召喚魔法を使い20体ほど”目”を用意し、
「敵を全て見つけろ」
とだけ命令しておく。しばらく待ちだな。
なんだ!?頭上からおびただしい殺気が……ッ!
高位結界展開、高位防御支援魔法展開、高位身体結界展開!
「全員伏せろぉぉぉぉぉ!」
~少し前、アルヤ港東部~
「最初は焦ったけど、思ったよりも順調だな。」
『ニコ、口に出てるよ。指揮官が焦ったとか言ったら下が不安に思うでしょ。』
「この距離で聞き取れるのはシモンだけだからいいでしょ。」
『それもそうか。』
結界が破られた時はどうなるかと思ったけど索敵結界は十分に機能してるし部隊も落ち着きを取り戻してる。
シモンも昔に負けず劣らず敵をバッタバッタと斬り倒してるし索敵魔法を敵はほとんど防げてない。
私の結界を破ったやつは見つかってないけどそれでも順調だ。
……いや、順調すぎる。敵の狙いはなんだ?
なんで敵はこの開戦初期の上陸という重要作戦で天使族しかだしてこなかったんだ?
なんで錯乱を解けるような強者がいるのにその実力を隠しているんだ?
なんでこんなに順調に進んでるんだ?
……考えながら戦っていたらかなり中心部に近づいてきた。あと少しで港を奪還できる。あと少しで…!
結界高位化、特異身体結界展開、中位防御支援魔法展開!
そうか…!敵の狙いは私たち精鋭をここで殲滅すること!頭を完全に潰す気だ!
だが何故だ……何故私たちがここにいることを知ってたんだ……?もしかして…いや…まさか……
直後、アルヤ港湾都市全体を神聖魔法の飽和爆撃を受けた。
ちょっと短いのは許してください┏○ペコ
読みにくいとことか「ここ繋がってなくない?」みたいなとことかあったら教えて貰えると幸いです