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第二次大陸戦争  作者: 野菜
序章 開戦
2/7

第二話『不可侵条約』

~帝都ニューベルク 外務省~


「ニコ様!なぜこちらに?」


「ペニソレと不可侵を結ぶために来た。早急に彼らへとコンタクトを取れ。」


「了解しまし……緊急通信!」


 全くもって嫌な予感がする。現状でいい報告が入ってくる未来が見えない。


「精霊国、ヴァロルト朝大陸立憲王国が我が国に対して宣戦を布告しました!」


 外務省に着くなり二つの隣国から宣戦布告が届くとは……運がない。だがやることは変わらない。


「そっちには遺憾砲でも撃っておけ。とにかくペニソレとの不可侵が最優先だ。早くコンタクトを取れ。」


 私の言葉で職員達も冷静になり各方面へ連絡を取り始めた。


「今日の18:00から通信会議をセッティングしました。」


 向こうもこっちの事情を分かってくれているようでかなり早く対応してくれた。願わくば何事もなく不可侵を結べますように……!


『ニコちゃん、聞こえる?』


『ネクター様!ようやく通信できるようになったんですね!』


 ネクター・アーンファーター様、四天王の一角であり物腰の柔らかいとてもいい人だ。彼女は八柱との繋がりも強く奇襲を受けた時も八柱といたはずだ。


『ネクター様、八柱はどうなりましたか。』


『八柱は運良く私の近くにいた一人は無傷、一人は生きてるけどしばらく動けそうにないね。五人は欠片も残らず消し飛ばされちゃったわ。最後の一人は…』


 そこで彼女は少し息を整えた。怒りや呆れや、そういった感情をうちに押し込めるように。


『一人は裏切ったの。建物が崩壊するのを見て笑ってそのまま海岸の方へ飛んで行ったわ。』


 八柱に裏切りが…そっちも大変だが五人も八柱がいなくなったことの方が深刻だ。


『ネクター様、八柱の後任はいらっしゃいますか?』


『残念ながらいないの。流石に七人同時に機能不全になるとは考えられてなかったから……』


 八柱は機能不全。しかしこの緊急事態、呑気に選挙なんてやっていたら各所で対応に遅れが出る。…仕方ない、この手はできるだけ使いたくなかった。


『ネクター様、北方軍集団の指揮をお願いします。精霊国からの宣戦布告が来ました。』


『分かったわ。元気でね。』


 ネクター様との通信が切れる。彼女に軍を指揮させるのは酷く不快だ。四天王の中で唯一争いを嫌い、周辺各国との関係を綱渡りながら保っていられたのは彼女の外交努力あってこそだ。そんな人に軍を指揮させ他国に攻撃しろと言うのは…本当に不快だ。


 だが今はそんな事言ってられない。通信魔法の式を調整しディエスタ様に繋ぐ。


『ディエスタ様、今よろしいですか。』


『ニコですね。どうしましたか、手短にお願いします。』


『八柱が七人機能不全となり後継は二人しかいません。』


 ディエスタ様はこの報告を聞いても驚きはしなかった。しかし魔法越しに呆れとも呼べる感情が見えた。


『それは大変ですね。それで?私に何を求めていますか?』


『国家非常事態宣言を布告し全土を我々が管理しましょう。呑気に八柱選挙なんてしてたらその間に国が滅びます。』


『よろしいでしょう。しかし我々四天王にそれを管理する余裕はありませんよ。』


『問題ありません。生き残りの八柱の一人を落としてそいつに任せれば大丈夫です。私の部下に見張りを付けさせます。』


 ディエスタ様は逡巡したがすぐに『いいでしょう』とだけ言って通信を切った。

 

「ニコ様、まもなくお時間です。」


 色々話していたら思ったより時間が経っていたようだ。


「分かった。応接間に行こう。」


 この会談が今後を左右する。王国と不可侵が結べなければ帝国は最悪全方位を敵国に囲まれる。


「定刻となりました。通信魔法を起動します。」


 魔法が発動し宙に色黒の女性だが目は金に輝いている。亜人……!それも最高種!相手はかなりの大物だ、一端の外交官とは思えない。


『初めまして、私は王国内閣首相のドゥルチェと申します。そちらはニコさんですね。』


 ドゥルチェ……!彼女は確かつい15年ほど前に頭角を現しほぼ全権を掌握、国王と議会を名ばかりのものにした、亜人の希望とも呼ばれるペニソレ随一の実力者だったはずだ。


『初めましてドゥルチェ首相。そちらの噂はかねがね伺っています。あなたの功績によって貴国は高度経済成長を成し遂げたとか。』


『そちらこそ西部の発展はあなたと四天王の活躍と聞いております。我々も見習いたいものです。』


 向こうはこれ以上ない大物を出してきた。決してへまはできない。だが早急に条約を締結しなければならない。


『早速ではありますが会議に入りましょう。』


 向こうが口角を吊り上げるのが通信越しでも見て取れる。


『それで貴国は一体なにをご所望ですか。』


 いきなり高圧的だ。向こうも立場を分かっているな。


『我々魔帝国は貴国、ペニソレ王国と不可侵条約を締結したく思います。現在我が国は神聖同盟軍による奇襲を受け防衛こそ成功したものの攻撃に転じることができなくあります。貴国との不可侵条約を結ぶことで軍を動かし各方面を救援に向かいたいと考えております。』


 向こうは少し驚いたように見えた。


『それで貴国はただ貴国の利益のためだけに我々と不可侵条約を結びたいと?』


『我々からは戦後、ヴァロルト側が一方的に占領してあるイナ半島を貴国へと返還いたします。』


『まだ勝てるかも分からない戦争において貴国に傾倒しろと言われてるのに提案されるのが戦後処理では少し不安ですね。』


 完全に足元を見られているな。だが我々が差し出せるものもあまり無い。


『では我々の軍需品の技術を提供しましょう。我々の一部固有魔法や特異魔法も開示しましょう。』


 固有魔法、この魔法の研究が限りなく進んだ現代においてなお安定した再現ができない。その中には戦場をひっくり返すような魔法もあり、それを再現可能にすると特異魔法としてどこの国でも最高位機密に指定されている。


『いいでしょう。我がペニソレ王国は貴国との不可侵条約に調印しましょう。』


『厚い温情に感謝を申し上げます。では後ほど外交官をそちらにお送りします。』


 これで後方の憂いは絶った。

 少しだけ向こうに挨拶をして通信を切り、南方軍司令部へと通信を飛ばす。


『こちらは四天王秘書のニコ、通信は聞こえるかしら。』


『こちら南方軍司令部、感度良好。問題なく聞こえます。どう言ったご要件でしたか。』


 向こうもどういう命がくるのか理解してるのか声が固い。


『四天王筆頭ディエスタ様の命により南方軍集団を現地守備隊のみを残し全軍北へと向かう。これは命令である。』


『南方軍司令部、命令を受諾。明日09:00までに編成を完了させます。』


 これで私の任務は一応完了だ。ディエスタ様は私のあとのことについて何も言ってなかった。完全に自由行動だ。まずは西、上陸部隊を叩き落とさなければ。


 中位飛翔魔法に膨大な魔力を注ぎ込み西へと向かう。

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