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婚約者候補

ネスタ君、頑張れ。

(国王様と王妃様だったか~。それっぽいなとは思ってたけどさ~!?)

 ネスタは自分の頭を抱えうずくまった。

「娘さん、ぽっと出の男に任せていいんですか。あなたたちの娘ってことは姫様でしょ?」


 かつて姫の護衛をしたこともあったが、あの時は国を取り戻す戦いだったからまだいい。今回は婚約者候補?動揺により、ネスタの口調から敬語が消えた。


「左様。フリュー・アトラ・リオネヴィアと言う、かわいいぞ。お前もきっと惚れることだろう。そうでないとおかしいくらいにはかわいい。他にも婿候補にと訪れる男は数多おり、前任の護衛はその婿たちをちぎっては投げちぎっては投げの大立ち回りを毎日のようにしていたな」

 娘のこと褒めすぎじゃね?親バカか?


「ええ、いい戦いぶりでした」

 感心するポイント、そこじゃじゃないだろ。

 ネスタの心のツッコミが止まらない。


「娘さんの意志はどうなんです?」

「娘の好みは『強い男』だそうだ。今回の召喚にも組み込んでおる」

 なんだその好み。小学生か。


「今まで勇者として戦いに明け暮れていたのでしょう?条件は十分ですし、これからあなたを見極める時間はたくさんありますので」

 ふふふと手に持った扇で口元を隠し、おばちゃんB改めカティが笑う。

 いやその扇さっきまでもってなかったじゃん。どこから出したんだよ。


 ネスタが息をつく間もなく、おじちゃんA改めツァーグが言う。

「まあ、いざとなれば伝家の宝刀があるのでな。何も心配はない」

「……伝家の宝刀?」

 何かお守りでもあるのだろうか。いや、宝刀というくらいだから武器か?


()()()


「それ俺安心できない奴じゃん!真面目に希望を見出した俺が馬鹿だったよ!」

 ついに口に出してツッコミ始めるネスタ。


「え、それ俺が娘さんに何かしでかしたら発動すんの?」

「もちろん。我々の宝だからな」


「俺、権力に物を言わすのどうかと思うんですけど!」

「いざというときに使わないで何が権力ですか。正しく行使するのであれば問題等ないでしょう」


 え~婚約者候補ってなんだよ、お姫様のご機嫌取りなんて俺できんぞ。

 ブツブツと我慢できなくなって呟くネスタを見て、ツァーグは不思議そうにしている。


「なんだお主。今まで何人か恋人くらいいたであ「……は?」

 ツァーグのセリフをネスタが地の底から出たような声で遮る。数秒の沈黙。

「おっさん……なんだって……?」

「だから、恋人の一人や二人「いるわけないだろボケェ!!!」

 思わず繰り出しそうになった右フックだけは耐えた。偉い。


「こっちはな!なんか知らない間に呼び出されて、勝手に使命だとか言われて戦ってきたんだよ!そんな事してる時間なんてあるわけないだろ!一個前の世界でお嫁さん探そうとしてたのにここに呼ばれるしよぉ!一人でもいたらもう少し身嗜みとか気を付けてるわ!」


 自分で言っていてなんだかむなしい気持ちになって来たが、床をダンダンと踏みしめながらそう吐き捨てる。


「まぁネスタ様。落ち着いてくださいな。うちの馬鹿で無神経な旦那が申し訳ございません。ツァーグ、いけませんよお客人をいじめては。あなたの学生時代の恋愛事情を晒上げますよ?」

「ゴメンナサイカティサンユルシテクダサイ」

「わたくしにではなく、ネスタ様に言いなさいな」


 2人のテンポのいい会話の後、ツァーグがこちらに頭を下げながら「申し訳ない、ネスタ殿」と言ってきたが、国王が頭下げていいのか?

「ふんっ」

 ……ちょっとむかつくのでこの場では許さないことにした。


「話がずれましたが、改めてわたくしから依頼内容をお伝えいたしますね」


 横目でツァーグに冷たい目線を送ってからカティが静かにこちらに視線を向け、人差し指をたててから説明を始める。


「まず1つ目。我々の娘であり、リオネヴィア王国の姫であるフリューの護衛をお願いいたします。城でも学校でも基本的に常に側に控えてください。女性の側付きもいますので、何か不都合がありましたらその者と連携するように」

 何か質問は?と数秒間を開けたが、ネスタから質問が無いのを見て、次に中指を追加で立てながら説明を続ける。


「2つ目。フリューの婚約者候補としての立ち居振る舞いをお願いいたします。先ほどの勇者兼婚約者候補披露パーティーであなたのことは皆に紹介しておりますので、特に違和感なく受け入れられることでしょう」

 先ほどと同じように、少し間を開けてこちらの質問を待っている空気を感じてネスタは疑問を口にする。


「候補ってことは、他にもいるのか?婚約者」

「ええ。今公表されているのはあなたともう一人の計2人です」

「これは、俺が勝ち取った方がいいのか?」


 にっこりと笑みを浮かべ、カティが薬指をたて、先ほどより少し声を低くして答える。

「3つ目。必ず婚約者の立場を勝ち取ってください。」


 そもそもなんでそんなに婚約者候補が居るんだ?とか、なんで他所から来た男をそのフリューとやらの旦那にしようとしたのか?とか、どうして俺が婚約なんてしないといけないんだ恋愛も未だなのに!とか、文句はたくさんある。あるが、それはそれ。ネスタはいつものおまじないを自分にかける。それは初めての異世界転移時に言われたことでもあり、これまでの転移時に自分に言い聞かせてきた言葉。


 与えられた役割はまっとうしなければならない。そもそもこの世界において自分は異分子なのだから。


「承知いたしました。そのお役目承ります。」


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