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貴方が食材なレストラン(表)

「悪鬼彷徨う怪奇の世界からおこんばんは~。幽幻 ゆうな、です! 今晩も徘徊者のみんなを霊界に引きずり込んじゃうぞ♪」


 決まり文句から始まった配信は、深夜帯の勉強や作業中に聞くのがもっぱらだった。ヒーリング効果のあるゆらぎ、つまり1/fゆらぎではないかとリスナーからコメントがあったが、幽幻ゆうなはそれを確かめてはいない。


「専用サイトとかアプリがあるんだっけ? でも別にゆうなが1/fゆらぎでも違くても、やることは変わりないしなぁ。これからもこの調子で配信は続けていくつもりだよ」


 今日もまた幽幻ゆうなの口から語られたいリスナーからの投稿が数多く寄せられていた。なるべく全て語れるよう配信する二時間の間に納められるよう時間配分には気を配っているが、没になったらごめんと予め謝罪する。


「じゃあ最初の投稿は岡本莉音さん(仮名)からです。「幽幻ゆうなちゃん、おこんばんは。この配信の時間が毎日の楽しみです」、ありがとうございます~。「これは友達から聞いた話なんですけれど――」」


 ■■■


 安藤真央は友人と楽しい夜を過ごすため、新しくオープンした高級レストランに訪れた。レストランは洗練された雰囲気で、美味しい料理と優雅なサービスが期待できる場所だった。


 彼女たちは料理を楽しみながら、おしゃべりをしていた。しかし、しばらくしてから安藤真央は店内の雰囲気が何かおかしいことに気づいた。客席に座る人々がどこか凝視しているような様子だった。


 安藤真央が周囲を見渡すと、店内の一隅に座る一人の男性が目に留まった。彼は異様な雰囲気を持ち、周囲の人々の注目を浴びているようだった。男性は無表情で、不気味な笑みを浮かべて安藤真央を見つめているようだったが、その視線は何かを訴えかけているように感じられた。


 安藤真央は不安を感じながらも、友人との会話に意識を集中させ、その男性のことを気にしないようにしようと試みた。しかし、彼女が再び周囲を見回すと、男性はどこかへいなくなっていた。


 安藤真央はトイレに立ち寄った。そこで彼女は鏡に向かって手を洗いながら、何かが違和感を覚えることに気づいた。鏡の反射には、自分の姿とは違う、後ろに立つ男性の姿が映っていた。安藤真央はびっくりして振り返ると、後ろには誰もいなかった。


 驚愕した安藤真央は友人に事情を話し、急いでレストランを出ようとした。しかし、彼女たちが外に出ようとしたとき、店内が異様な雰囲気に包まれた。


 客席の人々が一斉に不気味な笑みを浮かべ、何かを囁き合っているように見えた。安藤真央は恐怖に包まれながらも、急いで外へと駆け出した。すると、外では同じくらいの数の人々が店の前で同じ不気味な振る舞いをしていた。


 安藤真央は友人とともにタクシーを呼び、その場を立ち去った。車に乗り込むと、彼女たちはふと店の窓を振り返り、店内を見た。なんと、窓に映る客たちは全員、安藤真央たちを見つめながら、不気味な笑みを浮かべているようだったのだ。


 彼女たちはその光景を目に焼き付けながら、タクシーがその場を走り去るのを待った。安藤真央はあの異様な出来事を友人に語ったが、二度とあのレストランに戻ることはなかった。そして、その不気味な光景が彼女の心に深く刻まれたままだった。


 □□□


「☆1決定。半年ぐらいしたらちょっと洒落たピザ屋に変わってるに百億万ジンバブエドル」


“その安藤真央氏が化粧してなかったとかスカート履き忘れてたとか?”

“実際にスカート履かずに出社して大恥かいた俺氏参上”

“ざっと計算したら当時の円換算で百億万ジンバブエドル=860円だった”

“意外だな。昼食代にはなるじゃん”

“ひそひそ話される何かを指摘する奴が誰もいなかったんだな”

“下手に声かけて逆ギレされるのも嫌だろ。放っとくが吉”


 怪奇現象と呼ぶには少しパンチが足りないなぁ、と幽幻ゆうなが呟いてこの話を締めくくった。なお、ノーパンノーブラに気付かないまま外を出歩いた経験があることはリスナーには内緒だ。


「じゃあ次。伊藤誠一さん(仮名)からのお便りだね。これも実体験っぽいね」

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