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あの世行き直通列車(表)

「悪鬼彷徨う怪奇の世界からおこんばんは~。幽幻 ゆうな、です! 今晩も徘徊者のみんなを霊界に引きずり込んじゃうぞ♪」


 人とは常に刺激を求める存在であり、最初に好評だったやり方も続けていくほどマンネリ化する。不満のコメントが書き込まれるのなら改善に向けて努力をするだろうが、興味を失って離れられるともう取り返しがつかない。故に、UdolやVdol達は投稿する内容を過激にしがちになる傾向にある。


「そういえば、ゆうなは食後にデザートを食べるんだ。季節に応じたデザートを食べるのがいいんだよね。今だとハウス栽培とかで一年中色々なデザートが食べられるけれど、あれは邪道だよ邪道。徘徊者のみなさんはどう思うかな?」


 しかし幽幻ゆうなのこの怪奇語りにおいてはその限りではない。何故なら彼女にとってこの時間は完全に趣味の領域であり、ほどほどに支持されていれば良いのだから。


「じゃあ今日も徘徊者から送られた怪奇を紹介するね。まずは徘徊者小林健太郎さん(仮名)からです。「幽幻ゆうなちゃん、おこんばんは~」、おこんばんは~。「友人が友人から聞いた話なんですけど――」」


 ■■■


 ある都市の駅には、深夜に走る特別な電車にまつわる不思議な噂があった。地元の住人たちはこの電車を「幽霊列車」と呼び、その姿を目撃すると不吉な出来事が起こると言われていた。しかし、それはただの都市伝説だと思われていた。


 ある夜、若い男性は気晴らしを求めて夜の街をぶらついてまわり、終電も近い時間帯になってようやく駅に向かった。ホームに着くと発車間際の電車が停まっており、彼は駆け込み乗車して何とかその電車に乗り込んだ。


 電車の中は普通の列車とは異なる不気味な雰囲気が漂っていた。窓の外は闇に包まれ、通過する駅のホームには誰もいないようだった。男性は不安に襲われながらも、その電車が次の駅で停まるまで待つことにした。


 その後、次の駅に着いたとき、男性は周囲が明るく照らされた普通のホームに戻ったことに気付いた。彼は安堵の息をついたが、不気味な雰囲気がまだ消えていないように感じた。降りずにそのまま発車すると、男性は車両の中にいるだろう乗客たちを見渡したが、彼らの様子が何かおかしいことに気付いた。彼らは静かに座っているか、もしくは窓の外をじっと見つめていたのだ。


 電車は通常の駅を通過し続け、夜の暗闇の中を走り続けた。男性は恐怖を感じながらも、次の停車駅を心待ちにしていた。しかし、次の駅に着くことはなかった。電車は異常な速さで走り続け、彼の目の前の景色はいつしかただの闇に変わっていった。


 恐怖に怯えながらも、男性は車掌に相談しようとして後ろの車両へと向かったが、車内には誰もいなかった。彼はパニックに陥り、ドアを開けようとしたが、何をやってもドアは開かず、窓も開けることが出来なかった。彼は取り残されたような恐怖を感じながらも、なんとかその電車から逃れようと必死に努力した。


 どれほどの時間がたっただろうか。何十分か、何時間か、それとも何日か。男性にとって途方もない時間が経ち、電車はようやく停車した。男性はひどく疲れ果て、自分がどこにいるのかも分からない状態だった。しかし、驚くべきことに、彼は自分が元の駅に戻ってきたことに気付いたのだった。


 彼はホームに降りると、その場に立ち尽くし、深夜の静寂と共にその出来事を考えた。その時、ふと後ろを振り返ると、乗ってきた電車はもうそこにはなく、ただの暗闇の中に姿を消していたのだった。


 □□□


「これってさー、環状線に乗って寝ぼけた挙げ句に何週かした後に気づいた、とかだったんじゃない? それで恥ずかしかったからいかにも怪奇に襲われた風に盛りに盛った、とかさ」



“俺も気がついたら電車が暗闇の中を走ってたぞ。降りたのは誰もいない山奥だ”

“大月駅乙”

“ビジホ出来たらしいなあそこの最寄り”

“駅以外何もなくてタクシー乗ろうか財布の中と相談することも稀によくある”

“南栗橋駅定期”

“おれは南行きに乗っていたと思ったらいつのまにか北行きの終点で起こされてた”

“黒磯駅だっけ?”

“いや今は宇都宮駅まで”


 酔っ払いの武勇伝(笑)が披露されていく中、幽幻ゆうなは次の話の準備に取り掛かる。

 彼女は送られてきた話をそのまま語らずに、ある程度語れるよう手直しをする。添削はパソコン上で行い、読み上げる際は印刷した紙に定規を当てるようにしている。


「次は中村直人さん(仮)からの投稿だよ。どうもこれも実体験みたいね」

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