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死者と語りたかった者の末路①

「悪鬼彷徨う怪奇の世界からおこんばんは~。幽幻ゆうな、です! 今晩も徘徊者のみんなを霊界に引きずり込んじゃうぞ♪」


 悪鬼彷徨う怪奇の世界。悪鬼すなわち悪霊。怪奇の世界すなわち霊界。幽幻ゆうなはデビュー以来ずっと真相を語っていたのだ。自分はあの世に住んでおり、リスナーをあの世へと誘う配信である、と。


 しかし、それももうじき終わる。幽幻ゆうなが挙げていたマンションを取り巻く怪奇のうち、未解決だった工場階と体育館階は消し込まれ、残りは幽幻ゆうなが住む居住フロアのみとなったからだ。


 なお、宵闇よいち達を交えてのコラボ回以降も怖いもの見たさや無謀なUdol、記者達がマンションへと挑戦し、怪奇に取り憑かれるケースが後を絶っていない。未帰還者も数が増えており、もはや一怪奇事件の範疇から逸脱している。


 この怪奇渦巻くマンション、ヴィンテージヴューヴィレッジを一刻も早く現世と霊界の狭間から切り離す必要がある。そう幽幻ゆうな達やリスナーの間で認識は一致していた。


「七尺二寸さんだけど、無事成仏したようね。隣のインターフォンを鳴らしてもうんともすんとも反応が無いんだもの」


 しかし、これまでの幽幻ゆうなの配信で提示された宵闇よいち製の放送と新聞の歪み具合から、幽幻ゆうなの住む階は相当霊界に侵食されていることは明白。そこから悪霊なりを退散させるには途方もない労力が必要だろう。


 で、あれば、もはや階ごと放棄して霊界へ完全に沈ませればいい。そう唱えるリスナーも少なからずいた。反論としては現世との繋がりのある何かをあの世行きの道連れには出来ない、とコメントが書き込まれる。


「実はもう解決策は分かってるんだ。じゃあいつもみたいに徘徊者のみんなから届いた投稿を少し紹介して、このマンションの怪奇はお終いにしよっか」


 ■■■


 昔々、ある山奥にひっそりと佇む小さな村があった。その村では、古くから「山の神」と呼ばれる存在に祈りを捧げ、恐れ敬ってきた。山の神は、山や森の異変を知らせる存在として、村人たちにとって重要な存在だった。


 ある日、村に異変が起こった。山の神への祭りが執り行われるはずの晩、山の向こうから悲鳴のような声が聞こえてきたのだ。村人たちは驚き、恐れたが、祭りのために集まっていたため、異変に気づくことができなかった。


 翌朝、山の神を祀る祠には、何者かによって赤い印がつけられていた。村人たちは混乱し、不穏な空気が漂っていた。


 その日から、村には不吉な事件が相次ぐようになった。家畜が次々と行方不明になったり、村人たちに不幸が訪れたりと、村が災いに見舞われるようになったのだ。


 村人たちは山の神への祭りを欠いたことが災いの原因だと信じ始めた。そして、山の神への贖罪として、一人の少女を生贄に捧げることを決定した。少女は村人たちの中で最も純粋で美しいとされ、村の総意で選ばれることとなったのだ。


 生贄の日、少女は祭壇に引き出された。彼女は怯え、涙を流しながらも、村人たちに抵抗することはなかった。

 祭壇で祈りが捧げられる中、突然、山の神を祀る祠から大きな轟音が響き渡った。


 祠から現れたのは、大きな熊のような姿をした怪物だった。怪物は村人たちに襲いかかり、混乱の中、少女は祭壇から逃げ出した。しかし、怪物は彼女を追いかけ、村の周りを暴れ回った。


 最終的に、少女は岩場に追い詰められた。しかし、その時、少女が手にしていた赤い糸が怪物の体に触れた瞬間、怪物は突如として消え失せたのだった。

 村人たちは驚き、恐れながらも、赤い糸が山の神からの護符であったことを悟った。


 その後、村には再び平穏が戻りましたが、村人たちは山の神を祀ることの大切さを改めて認識した。そして、赤い糸を持つ者たちは、特別な力を持つ存在として尊重されるようになった。


 その日以降、村には山の神の加護があり、恐れと敬いの念を持って山を見守るようになったのだった。

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