深海へと誘う水族館(表)
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「皆さん、こんばんは。冥道めいと申します。皆寝静まったこの時間、同行者の方々とひとときを共有し、深い話題や興味深いことを共に探求していきましょう」
Vdolとして活動する配信者の冥道めいは怪奇観測用ヒューマノイドである。それが冥道めいのプロフィールとして公式サイトにも明記されている。何でも彼女は数世紀は先を行く科学力を持つ秘密結社によって創造され、ある怪奇を解明することを目的としている、らしい。
無論、数多くいるVdolの中で彼女は異彩を放っているわけではない。電脳空間でのみ活動する電子生命体、未来からやってきた予言者、など、様々な個性豊かなVdolがいる中で、ヒューマノイドであることはとりたて目立つ要素ではない。
そして、Vdolの器と魂、すなわちVdol自体と中の人を同一視するか否かは各Vdolの活動方針次第となる。ここ最近の流行は前者であるが、最初期ではこれまでと全く異なる未来のアイドル、という期待もあって後者が主流であった。
「わたくしは先日Vdolとして活動する幽幻ゆうな様のお宅を訪問しました。ああ、一晩泊めていただいたのはわたくしの活動限界が近づいていることもあって、電源をお借りするためですね。充電と同時にスリープモードに入り、六時間の間でデフラグをしておりましたので、同行者の皆様が思うようなきゃっきゃうふふな展開は無かった、とだけ報告いたしましょう」
では、ヒューマノイドと自称する冥道めいはどうかというと、配信の中では自分が人間ではなく機械人形であることを徹底している。食事や生理現象といった生存に必要な行為は全く言及せず、道具を使わずに遥か遠くのものを確認したりセンサーを反応させたりと、事あるごとに自分がロボットだと強調していた。
とはいえ、現代の科学力で人間にほぼ近い自我を兼ね備えたロボットは作れない。なので冥道めいその人もあくまでヒューマノイドを演じているだけで、配信で驚かされる現象もトリックを駆使しているのだろう、と結論付けられていた。
否。冥道めいは嘘偽りのないヒューマノイドである。
しかし冥道めいは自身の存在の証明を配信の中でするつもりはない。
彼女の目的はVdolとしての配信を通じてリスナーを笑顔にすることではない。
「同行者の皆様にもお届けしたとおり、幽幻ゆうな様が住むマンションは怪奇に満ち溢れています。なのでわたくしは暫くの間、特集という形でマンション内を徘徊して怪奇に遭遇したいと思います」
ある怪奇の解明。Vdolとしての公の活動目的と同じである。
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ある海辺の街に、美しい水族館があった。その水族館は地元の人々や観光客に愛され、毎日多くの人々で賑わっていた。しかし、その水族館にはある怪奇現象が起こるという噂が立ち始めた。
ある日、水族館の魅力的な展示物や美しい海の生物に魅了された若いカップルが訪れた。彼らは水族館内を楽しんでいたが、ある展示物の前で立ち止まり、奥深い海の底に沈むような気持ちを味わっていた。そこには巨大なクラゲの模型が浮かび、幻想的な光に照らされていた。
彼らがその場所を離れようとしたとき、突然、何かが彼らの周りで動き始めた。最初は微かな動きだったが、次第にその動きは激しくなり、彼らを包み込んでいった。彼らは怯え、叫び声を上げながらその場を後にしたが、その日から彼らは奇妙な出来事に見舞われるようになった。
彼らは水族館の外で見知らぬ人々に追われ、不気味な幻覚に襲われるようになった。そして、彼らはその水族館の影響下に置かれていることに気付き、それが彼らに悪影響を与えていると信じるようになった。
その後も、水族館を訪れた人々が次々と奇妙な体験をするようになった。幻覚、恐怖、そして死亡という悲劇が次々と起こり、水族館は呪われているのではないかという噂が広まった。地元の人々は水族館を避け、町の外から訪れる観光客も減っていった。
ある調査団が水族館の秘密を解き明かすために派遣された。彼らは水族館の歴史を調査し、その地域で起こった古い海難事故や呪いの伝承を探った。そして、驚くべきことに、水族館が建てられた場所がかつて海賊たちの墓場であり、彼らの怨念がその地域にまだ残っているという伝説を知ることができた。
その水族館は、海賊たちの埋葬地に建てられ、彼らの怨念が水族館に宿っていたのだ。調査団は水族館の地下にある秘密の部屋で海賊の遺骨を発見し、それをきちんと埋葬することで呪いを解くことに成功した。
その後、水族館は再び人々に愛されるようになり、呪いの影が去ったかのように平和な場所となった。しかし、その過去の恐ろしい出来事は、地元の人々の間で今も語り継がれている。




