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テレビからの幻影(後)

 ■■■


 ある晩、町に住む若い女性、岡本莉音(仮名)はひとりで家でリラックスしていた。暇を持て余し、彼女はテレビを視聴して夜を過ごすことにした。しかし、その夜は普通の夜とは異なり、岡本莉音にとって未知の恐怖が待ち受けていたのだった。


 岡本莉音がテレビを点けると、画面には何もなくただの静止画が映り続けた。最初はチャンネルが正しく設定されていないのかと思い、リモコンでチャンネルを切り替えようとしたが、どのボタンを押しても画面は変わらなかった。


 そのとき、テレビの中から異音が聞こえ始めた。ゆっくりとした歩み音が、部屋に静寂を持ち込んだ。岡本莉音は不安に襲われながらも、テレビの画面に集中した。すると、静止画の中から影が現れ、部屋の中に広がる暗闇に姿を現したのだった。


 その影はテレビから踏み出し、岡本莉音のいる部屋に迫ってきた。岡本莉音は目を疑いましたが、影は次第に具体的な形を取り、何かしらの人物のような姿を見せた。しかし、その顔は何者かを確認することができなかった。不気味な黒い影が、岡本莉音の前で立ち止まった。


 岡本莉音は恐怖に怯えながらも、その影に問いかけた。


「だ、誰? 一体何なの?」


 しかし、影は一言も発せず、ただじっと岡本莉音を見つめ続けた。

 そのとき、部屋の照明が明滅し始め、影の周りには異様な輝きが広がった。


 すると、テレビの画面に次第に映像が映り込み、岡本莉音はその映像に驚愕した。映し出されるのは岡本莉音自身の日常生活の様子だったのだ。しかし、それは過去のものではなく、今現在の岡本莉音の様子がリアルタイムで映し出されていたのだ。


 岡本莉音は我が目を疑ったが、テレビの中の彼女は同じ動作を繰り返していた。それはまるで時間が巻き戻され、岡本莉音の生活がリピートされているかのようだった。岡本莉音はその怖さと不安に苛まれながら、テレビの中の自分が繰り返される映像を見つめ続けた。


 そして、画面には再び不気味な影が現れ、岡本莉音の部屋に迫ってくる光景が映し出された。それはまるで未来の予知のようで、岡本莉音はその光景を目の当たりにすることなく、恐怖に包まれてしまった。


 その日以降、岡本莉音はテレビを見ることを避け、その部屋には異様な雰囲気が漂い続けた。彼女は未来を垣間見ることができるテレビの怪奇な現象に囚われ、普通の日常が彼女にとってはもはや取り戻せないものとなったと確信したのだった。


 □□□


「結局影は何だったのかな? ストーカーの悪霊? 地縛霊? それともこの徘徊者さんが恐怖体験を心霊現象と錯覚した? 何にせよ、もう一度テレビを付けるならリビングに監視カメラ設置してからの方が良さそうね」


 リスナー達はテレビの異常について語り合った。中には砂嵐というキーワードが出てきたが、悲しいかな砂嵐を知らない世代とのジェネレーションギャップが起こり、中年リスナーが衝撃を受ける一幕があった。


「ゆうなは普段テレビを見ないよ。ニュースもバラエティもスポーツもパソコンとスマホで事足りるし。あ、でも国営テレビは登録してる。質のいいドキュメンタリー番組とか生き物番組をやってるから」


 幽幻ゆうなの配信画面の端の方にはサイズの大きいテレビが鎮座している。彼女はそれを迫力のある映画を見る時やゲームをプレイする時に使うぐらいだ、と語った。買ったはいいが宝の持ち腐れだ、とため息を漏らす。


 彼女曰く、このマンションではアマチュアのテレビ番組配信者がいるらしく、怪しげなニュース番組を延々と垂れ流しているんだとか。後でネットで調べても該当する事件は起こっていない。幽幻ゆうなはこの配信者が妄想に取り憑かれたり嘘を吐いているのではなく、生粋のエンターテイナーであると結論付けている。


「この人とコラボするのも有りかもしれないね。それじゃあ今日はこの辺で。チャンネル登録と高評価お願い。ばいび~♪」


 ■■■


 座敷童こけし、と幽幻ゆうなに呼ばれた少女は、学校の宿題を済ませて就寝の準備に入った。布団を敷き、トイレに入り、風呂に浸かり、パジャマに着替え、目覚まし時計をセットする。


 その間、座敷童こけしの家族は照明を付けないリビングでテレビを眺めていた。ノイズが激しく走る真っ赤な画面の中で黒い人影が、機械的な音声で淡々とニュースを読み上げていく番組を、座敷童こけしはとても見る気になれなかった。


 襖を閉め、少女は眠る。次起きた時は悪夢から覚めていますように。

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