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栄光の体育館(裏)

 ■■■


 町の片隅に佇む老朽化した体育館。昼は生徒たちの声で溢れ、スポーツ大会や部活動でとても賑わっていた。しかし、その体育館には夜になると異変が訪れるという噂が立ち込めていた。


 ある日の夕暮れ、学校のハンドボール部の部員たちは夜の特別な練習を行うことになりました。体育館の扉が重々しく開かれ、部員たちは不安と興奮の入り混じった気持ちで中に足を踏み入れた。


 照明は薄暗く、静まり返った中、彼らは通常の練習とは異なる雰囲気を感じました。ボールを手に取り、シュートを試みると、ボールが手から離れる瞬間に異音が鳴り響いた。何かが部員たちの周りに影を落としているようだったのだ。


 シュートを決めた瞬間、突如として薄暗い体育館に幽霊のような姿勢をした影が浮かび上がった。部員たちは驚愕のまなざしでその影を見つめた。影は静かに浮かび上がり、その顔には穏やかな微笑みが浮かんでいた。


 部員たちは最初は恐怖に怯えていたが、影が敵意を示すことはなかった。代わりに影は手招きの仕草をして、部員たちに付いてくるよう促した。彼らは興味津々に従い、影に導かれるままに体育館の奥深くへと進んでいった。


 奥に進むにつれ、影たちは次第に透明化していき、その存在が不可解なものに変わっていった。そうして連れてこられた先、部員たちの前には幻想的な光景が広がっていった。部員たちは何十年も前のスポーツ大会や栄光の瞬間が再現されているような錯覚に襲われたのだ。


 影たちは彼らを過去の栄光へと案内し、古びた体育館がかつて栄光の瞬間に包まれていた様子を見せてくれたのだ。部員たちは当時の懐かしい光景を楽しむうちに、影たちと一緒にスポーツに興じ、魔法のような瞬間を共有した。


 時間が経つにつれて、影たちは再び透明になり、部員たちの前から姿を消した。体育館の中は再び静寂に包まれ、部員たちは幻想的な夜の出来事を共有し合いながら、家路についた。


 以後、ハンドボール部員たちはその日の出来事を仲間たちに語り、体育館の夜の異変は彼らだけの特別な経験となった。その後も、時折夜になると体育館で懐かしい声や喜びの様子が聞こえ、学校の伝説として残ったのだった。


 □□□


「過去の記憶を見せたってことかな。たまにテレビのバラエティ番組で昔のオリンピックとか万博の映像とか見るけど、とっても楽しそうだなぁ。あ、別に今がつまんないって言ってるわけじゃないよ」


 結局対戦チームは1セットも取れないまま試合は終了した。ボールやネットの片付けは七尺二寸のチームメイトがこなし、七尺二寸は幽幻ゆうなの側に来る。体中から汗が蒸気になっていて息があがっていたが、まだ余裕はありそうだった。


「あ、お疲れ様です。今日の試合はどうでしたか?」

「んー、雑魚だったわ~。もう少し骨のある相手だって期待してたんだけどね~」

「それは残念でしたね。七尺二寸さん、とっても格好良かったです!」

「ありがと~。需要があったらあたしからバレー講座やるから~」

「ええっ!? チャンネル乗っ取らないでくださいよ~!」

「対戦相手募集中~。小学校の部活チームから五輪代表チームまで誰でも受けて立つから、かかってきてね~」

「そんじゃ今日はこの辺で。チャンネル登録と高評価よろしく。ばいび~♪」


 幽幻ゆうなが画面に向けて手を振ると七尺二寸もまた手を振った。そして七尺二寸のチームメイトたちも笑顔で画面に手を振ってみせた。リスナーからも挨拶が飛び交う中で“対戦相手はどこ行った?”とのコメントはすぐさま埋もれてしまった。


 ■■■


「――次のニュースです。今朝未明、◯県◯市の住宅街で女性が複数人亡くなっているのが発見されました。警察の発表によりますと、昨晩、家族からの通報を受けて警察が駆け付けると、家の中で女性が亡くなっているのが発見されました。別の場所でも別の女性が複数名亡くなっており、調べによりますと、亡くなった女性達は同じ地域のバレーボールクラブに所属していたとのことです。警察は詳細な死因や動機の解明に向けて捜査を進めています」

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