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第二話

「それでは改めまして。わたくし中島リョウマと申します。22歳でバイク事故によりこちらの世界へ参りました。そして今の姿は22歳のまま、ただこちらに来てからは15年目となりますがまだど素人です。定年は地上で生活していた年齢から100歳になるまで、つまりわたくしはあと60年は働くことになります。先輩方は30年40年とベテランな方がたくさんいらっしゃいます。わたくしはココで寿命を迎えられる方を引っ張り上げる仕事をしております。通常でしたらそのまま天上、つまり()()()へとお連れしますが、今回はわたしくしの至らない作業によりココ、天地にてイチノセ様をご案内させて頂きます。今までこのような失態をした者は、この何十年に一回あるかないかの事でして、手厚く対応させていただく次第です。」


中島は、口早にそう言うと腕をスクリーンに向けスマホのタッチパネルの要領で、映し出された映像を切り替えた。


私は、聞きたいことが山程ある為、口を出そうとすると中島は、人差し指を口にあて「シー」の仕草をしながら「質問は後ほど伺います。」と言い遮られてしまった。


「今からアナタの過去を振り返りましょう。」


私のであろう動画つきのプロフィールが表示された。


「アタナの名前は、イチノセ サキコさん。漢字でご覧のように()()()()()となり、1975年12月20日生まれの48歳になる年になります。そして23歳の長男・コウキ君、21歳の長女・キキちゃん、17歳の次女・ユキナちゃん、と3人のお子様がいらっしゃいます。上の2人のお子様は、それぞれ働いていらっしゃいますが、3人目のお子様は、まだ高校生でいらっしゃいます。


それぞれ産まれたばかりの頃や幼少期、小学生・中学生・高校生と写真が、ゆっくりと流れるように映し出された。


どのくらいの時間、映像を見ていたのか分からない。でも自分の記憶が、子供達によりグングンと呼び起こされる感覚に胸がグッと熱くなり、自然と涙が溢れ出す。


「こんな写真、私は撮ったことなかったな。良い写真ばかりです。」


「うちの兄妹は本当に3人とも仲が良くて…。コウキは、とても怖がりで甘えん坊、いつもわたしに抱きついてくるんです。中学生の頃は、さすがにこのままでこの子は大丈夫なんだろうか…って心配しかなかったけど、やっぱり成長していけば、それなりにちゃんとやっていけるもんなんですよね。1番上で「しっかりしなきゃ」って思いながらも、下の子達より怖がりで、そして一緒に甘えてくる。無理に我慢せず生きているから、妹2人のこともとても可愛がってくれるんだと思います。」


思わず感傷にひたり語る私に、中島は「続けてください。」と言った。


「キキは、小さな頃から元気いっぱい。何に対しても、まずは挑戦。運動も食べ物も、自分で試してみてから出来る出来ない・好き嫌いをちゃんと判断できるんです。私にとっては、手のかからない、とても助けられた子でした。そして自分の意見をしっかり持ちながらも私をとても信頼してくれる。「ママは、誰よりも私たちのことを知ってくれてるから。」って大人っぽい事言うんです。キキがいなかったら、私はこんなに笑えていなかったかもしれない。主人は…あ…わたしにも旦那がいたな…キキを可愛くてたまらないって、なかなか子離れしてくれなくて…とても懐かしい。」


キキの笑顔を思いだし、思わず私も笑みがでる。


「ユキナは、上の2人が大好きで、いつも付いてまわる。遊びに行った時は、必ず2人のどちらかと手を繋いで歩くんです。横に並べば自然と繋がっている。みんながユキナと居ると落ち着くんです。不思議と空気が柔らかくなる。居心地がよくて、ユキナの匂いをよく嗅いでいたなぁ。末子は甘えて育つなんてよく言われるけど、この子の場合は、私たちが甘えさせてもらって、それを受けとめてくれるような感じ。」


ほっこりした気持ちになる一方、なぜこの子達を残して私が死ななければならないのか…とまた怒りがよみがえる。まだまだこれから先の子供たちを見届けなければならない。


「やっぱり私はまだ死ぬ訳にはいきません。帰るべき場所があります。」


改めてそう実感した。


中島は頷き「そうですね。ただその為には、まだまだお話しないといけないことがたくさんあります。聞いて頂けますか?」と言った。

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