第3話 公爵 アイスにハマる
あれから約3年、この世界には沢山驚かされた。
一年中氷魔法を使ってもいないのに冷えている冷蔵庫、火を使わず短時間で物を温めるレンジ、部屋の空気を綺麗にするものまであると来た。そして何より車とスマホが凄い。
ガソリンと呼ばれる液体を動力に物凄い速さで快適に移動できる。
馬車に長時間乗るとなると腰が痛くなって仕方ないからな…。
そしてスマホ!これさえあればどんなに遠くの相手とも話すことが出来る!そして何よりこの世界における知識が数え切れないほど入っているのだ。図書館に行かずとも常識を知れたのは本当に良かった。
そういえばやはりこの世界には貴族は居ないようだ。
王族は存在するようだがこの世界の政治を担う者たちは皆元は一般人だそうな。
我が家も裕福とは言えないがまぁ普通の一般家庭らしい。他国のことは知らないが少なくともこの日本という国では飢餓や貴族の権力に脅えることなく暮らしているものがほとんどだ。
この日本はまさに私が望んでいた在り方を体現している。
「侑、今日はお粥じゃなくてオムライス食べてようか〜」
「うん!ぼく おむらいす すき。」
「んふ、いいお返事ねぇ。」
ふふふ、なんと完璧な擬態。どこからどう見ても立派な幼児!自分に演技の才能があったとはな。
今はスーパーに来ている。
何でも売ってるすごい広い店だ!
「パパ他に何か食べたいものある?」
「うーん、強いて言うならオムライスはキノコソースがかかってるのがいいなぁ。」
「相変わらずキノコ好きねぇ。」
「ママの作る料理は全部美味しいけどね、侑は何か欲しいものは無い?昨日頑張ったご褒美に何か買ってあげる。」
そういえば昨日、私は初めての保育園に行った。
同年代の子に合わせるいい勉強になるし多少だが図鑑などの本もあるので楽しかった。
スマホで得る知識も良いがやはり紙の魅力も捨て難い。
「アイス たべたい!」
「おーう、行くか。」
抱き上げられながらアイスコーナーへむかう。
アイスはマイブームなのだ!
「ごめん、御手洗行きたくてカートお願いしていい?」
「いいけどさっきも行ってなかった?」
「うん、ごめんね。」
ふふふ、母上がいない家にアイス大量に入れてやる!母上は基本優しいが食事に関しては少々うるさいところがある。
おぉ…アイスだアイスがキラキラと光っている!
何にしようまずは定番の
「ばにら!」
「これね。」
「あと、これ。 これ!」
「おいおい3つも食べるつもりか。」
「あとこれも!」
「うーん、ママに怒られちゃうからな。今日は3つまでで。」
ぐっ、だが引き下がらん!
必殺・上目遣い!
「ぱぱ、ぼく これたべたいなぁ」
「…。も〜、仕方ないなぁ〜。」
「やったあ!」
父上は逆にハチャメチャに甘い。
「パパはどれにしようかなぁ」
「ぱぱ はやく。」
母上が帰ってくる前に会計を!
父上が悩み抜いてやっとアイスを手に取った瞬間だった、般若が現れたのは。
「ぱーぱー??そのカゴは何?アイスは1人ひとつまでよ!!」
「ママおかえり。でも侑が」
「あ?」
圧が凄い。結局1つに絞り込むことになってしまった。
ここはやはりバニラか。だがモナカも捨て難い!ふと般若…もとい母上がアイスを手に取った。甘いものが苦手な母上がアイスとは珍しい。
手に取ったのは…な、なんだその色は!
「まま これ どく?」
「え?あぁ色?これはねぇチョコミントって言って毒では無いから大丈夫よ。」
ふふっと笑いながらカゴに入れる母上。ハリダケと呼ばれる私の世界の毒キノコ見たいな色だ。緑をベースに黒の斑点。これは美味しいのか…?
会計を済ませアイスが溶ける前に急いで帰る。
外は唸るような暑さだが家は冷房装置が部屋を涼しくしてくれて快適だ。
昼食のオムライスを食べ終えおやつの時間。
やはりモナカにして正解だった!
この食感がなんとも素晴らしい。
「うーんっ!美味しいわぁ〜!」
「まま ちょーだい」
「あら気になっちゃった?はい、あーん。」
未知の味に挑戦するのはここ数年で慣れた。
食べればひんやり、爽やかな香りが口の中いっぱいに拡がった。
こんな味食べた事ない、が。
「うっまい!!」
「良かったねぇ。」
やはりこの世界の食文化は凄い。