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十人恋色  作者: Toki.
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黄の恋色(2)

ある日、祐太に言われて、僕は祐太の好きな女の子と、その友達と遊ぶことになった。


もちろん、そこには昇もいる。


遊ぶ日、待ち合わせ場所についた僕は、祐太たちを待った。いつも、祐太と昇は来るのが遅い。


何をしているのか知らないけど、毎回のように遅刻をしてくる。


祐太は全く悪気の無いように事を進めていくのにも慣れてしまった。


祐太たちが、予想通り予定よりも10分遅れて待ち合わせ場所に来た。


僕は挨拶をする。これは、人として当然のことだ。


「おはよう」


「もうそろそろ、こんにちはの時間だけどな」


おはようから、こんにちはに変わる時間なんて指定されているのだろうか? もし、あるのならば僕に教えて欲しい。


祐太は、女達が待つ場所へと向かっているみたい。


ちょっと、いつもよりテンションが高いのは、僕にだって分かる。昇は、そんな祐太を見て、ニコニコしていた。


楽しそうだ。


待ち合わせ場所から歩くこと数分、祐太がいつも見ている女を僕は発見した。


学校で見るよりも、可愛く見える。だけど、それもそう思うだけで、彼女自身は何一つ変わっていない。


「お、いたいた」


祐太はそう言って、手をあげた。それに、向こう側も気付いたみたいで、あの子も祐太の名前を叫んだ。


二人とも顔が真っ赤だ。


そんなに遊びたいなら、二人で遊べばいいのに。


僕はその女の子集団に目をやった。どうも、さっきから視線を感じている。


きらきら、何かを光らせているみたい。


まぁ、そんな事は置いておこう。僕たちは集合した後、ご飯を食べるために店へと向かった。








「……」


なんだろう、さっきから目の前のあの子から視線を感じる。


僕はご飯を選んでいるときも、食べているときも、目の前にいるあの子の視線が気になって仕方が無かった。


他の人たちは気付いていないみたいだけど、なんかずっと見られてる。


話しかけるのも面倒だし、何か変なものがついていたら、昇がきっと注意してくれるのだろう。


でも、それが無いって事は、他の理由で彼女は僕の顔を見ている。


……なんだろう?


不思議に思っていたら彼女は席を立った。見る限り、目の前に座っていた子が他の二人に何かしら合図を送っているみたい。


気付いてもらえてないみたいだけど。


その子は一言「お手洗い行ってくるね」と呟くと、さすがの二人も気付いたみたいだ。


三人とも席を立ち、トイレへと向かって行った。


「なんか、合コンしているみたいだね」


昇は笑いながらそう言った。そんな、洒落にならないことを言わないで欲しい。


数分後、女達は席へと戻ってきた。すると、どうしたことか。


さっきよりも視線の数が多くなった気がする。


というか、全員からチラチラ見られてい……気がする。


気がするだけで、ただ僕の自意識過剰なのかもしれない。


……。


いや、やっぱり見られているよ!


チラッと赤原の彼女に目を向けてみたけど、一瞬目が合って焦ったかのように視線を逸らされたし!


もう、嫌だ。


僕の意識は、目の前に出されたご飯に集中することに決めた。









ご飯を食べ終え、僕たちが向かったのは服屋だった。


赤原はと言うと、ずっと赤原の彼女と一緒にいる。


そんなに二人がよかったなら、僕たちなんか連れてこなかった良かったのに、と思ったのは僕だけじゃないはず。


「はぁ、ラブラブだねぇ」


いつの間にか隣に来ていた昇が、二人を見ながらそう呟いた。


「赤原の彼女のこと好きなの?」


聞く話によると、昇と赤原は幼馴染らしい。ということは、赤原の彼女とも接点があったに違いない。


「え、い、いや。俺は別に好きな人なんて……いないけど」


口が本気で笑っていない。なんか昇らしくない嘘のつき方だ。


もしかして、僕の予想は当たっていたの?


「いや、マジだよ!? みどりのことは小さいときから知っているけど、昔からあの二人はラブラブだったから。好きになる理由も無いよ」


理由……か。


「やっぱり、好きになるのには理由がいる」


僕の唐突の質問に、昇は不思議そうな顔をした。


「どうした? 恋でもしたの?」


昇はさっきまで焦りの表情をしていたのに、今は余裕の笑みで僕をからかってくる。


「違う」


僕は昇から視線を外したとき、悪魔の声が聞こえてきた。


「黄士君と、昇君……」


その声の持ち主は、さっきまで僕の目の前に座っていたあの子だった。


「どうしたの?」


「何かしない? あ、黄士君の服を私が選んであげる!」


そしてその子は、返事をする暇も与えないまま僕の腕を握って歩き出した。


「……?」


今の僕の頭の上はハテナマークだらけに違いない。


だって、この事態に全く頭の思考が追いついていないのだから。









「これなんてどう!?」


目の前の彼女は、僕に服を合わせながらそう言った。


正直なところ、服に全くのこだわりが無い僕は、こういう行事には無関心だ。


しかも、無駄な出費は控えたい。


「服、あるから……」


僕がそういうと、彼女は一言呟いて、明らかに落ち込んだ表情をした。


それは卑怯だろう。


別に、男が女を、なんて思っていないけど、あからさまに落ち込まれると、僕もいい気分がしない。


ここは、仕方が無い。


「一着、欲しいかな」


そういうと、今度はその子の顔がぱぁっと明るくなっていくのが分かった。


どうしてだろう。なんでこの子は、こんなにも感情の浮き沈みが激しいの?


謎を抱えたまま、服選びが終わった。


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