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十人恋色  作者: Toki.
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赤の恋色(1)


はじめまして、そうでない人はこんにちは。

作者の、Tokiと申します。


十人恋色は、十色の色に例えて恋愛模様を書きました。

どの色から見ても、楽しんでいただけるようしたかったのですが、

私の文才、能力では不可能でした。

しかし、楽しんでいただけるように書いたつもりです。



よろしければ、最後までお付き合いのほどお願いします。


では、始めましょう。恋の連鎖、十人の恋色による物語を。



「付いてくるなよ!」


「あんたが、私のところ付いてきているんでしょ!?」


「いや、お前だ」


「いや、あんただね」


「「ふんっ!」」


そして、いつもの朝の登校が始まった。


俺は赤原 祐太。人生で生きてきた中で、好きになった女は一人しか居ない。けど、そいつは俺のことが大っ嫌いなのだ。


分かっているから辛い。こうやって朝、喧嘩するのももう慣れた。なんたって、ずっと昔からなのだから。


隣で俺のことを怒鳴っているのは、早川 みどり。容姿は抜群だと思う。性格には少々難があるが、俺はそういうこいつが好きだ。隠れたところは優しくて、いじっぱり。俺と似て非なる存在。


「あんたなんか大っ嫌い!」


そして、また言われるこの言葉。


「俺だってお前のこと嫌いだよ!!」


この言葉にも慣れた。大好きな人に、こんなことを誰だって言われたくない。言われて嬉しいのは、よっぽどのマゾに違いない。










「はぁ……」


朝の教室でつくため息でやっと俺の一日が始まる。


「また、みどりか?」


「……うっせぇよ」


そう言って俺をちゃかしてくるのは、昔からの親友である青木 昇。こいつの顔はイケメンという物に属すらしい。


「お前、そろそろ告白してみたら?」


「無理に決まってるだろ……」


そう、無理に決まっている。俺が告白したところで、あいつに俺の想いが届くはず無いのだ。むしろ、気持ち悪いの一言で済まされるだけ。


今まで、嫌いや馬鹿なんていわれて、死ぬほど傷ついたが“気持ち悪い”と言われたら、本当に死んでしまうほど傷つくに違いない。だから言えない、そんな言葉は。


「あ、今の赤原には香奈ちゃんが居るんだっけ?」


「いや、今は由美だよ」


そう、俺はやけになってとっかえひっかえ女と付き合っている。みどりのことを忘れたい一身で。


「もうそろそろ、飽きないのかよ。その女遊びはよ」


「遊びじゃねぇよ。ただ…恋愛感情が生まれないだけだ」


「それを遊びって言うんだよ……」


昇は呆れた顔で俺の顔見て笑った。こうやって、昇と話していると、少し気持ちが楽になる気がする。


「おはよう」


そう言って、俺の前の席に座ったのは黄士おうじ。容姿は普通といったところ。眼鏡をかけていて、いかにも優等生って感じだ。


「おはよ、黄士」


そう言って昇は笑みを浮かべた。その笑みに、周りは少しきゃあきゃあと喚く。それほどイケメンがいいのかよ。まぁ、確かに昇は中身もいいが。


「……祐太、また元気ないね」


ボソッと呟くように、黄士は俺の顔を見てそう言った。


「う、うっせぇよ」


「子供みたい」


「黄士ぃ?」


俺は睨みつけるように黄士の顔を見た。しかし、黄士は動揺しない。そういう子なのだ。


「はぁ……」


子供っぽいということは、理解しているつもりだ。どこの世界に、高校生にでもなって、好きな相手に向かって“嫌い”といえる奴が居るのだろうか。


小さいときは、好きな女に構って欲しくてそういうことをするものだと思っていたが、今はもう高校生だ。


なんとも情けない。


「ほら、元気出せって!」


昇は満面の笑みで、俺の背中を二回叩き、自分の席へと戻っていった。


俺と黄士は席が近いのだが、昇だけ一番廊下側の席となってしまった。そして、どこぞの神様の悪戯なのか分からないが、俺はみどりの三つ後ろの席なのである。


つまり、同じクラスなのだ。


「はぁ……」


そして、俺は再びため息をついた。













「ねぇ、今日どこ行く?」


「駅前に、新しいカラオケが出来たんだって! みどりと愛白(ましろ)も時間が大丈夫なら行こうよ!」


「私は全然大丈夫!」


「私も!」


「じゃあ、決定ね!」


みどりの声が聞こえてくる。


楽しそうだ。


俺はそんなことを思いながら、放課後の机の上で寝ていた。


「ほら、みどりも帰ったし、俺達も帰るぞ?」


「祐太、早く帰ろう」


俺は寝かせた体をゆっくり起き上がらせ、ボリボリ頭をかきながら頷いた。


「祐太さぁ……」


昇が下校中、不意に俺の名前を呼ぶ。こういうときは、みどりの話か他の女の話だ。


「みどりのことなら、それは却下だ」


「もしも、みどりが他の男と付き合ったらどうするんだよ? 早いとこ手を打っとくのもありだぜ?」


俺の遮りもむなしく、昇は話しつづける。


「べ、別に……」


関係ないし。


そういいたかったが、口は動かなかった。


『みどりが他の男とキスをする』


そんな姿を想像してしまったから。


俺だって、彼女がいるんだ。そういう事はしている。それだけに、想像がしやすかった。


「む、無理だ」


そう、無理だ。みどりが男と体をあわせることを想像したくなかった。


「だろぉ? 告白しちゃえよ告白。今なら遅くないって」


「簡単に言うなよ」


今からでも、昔からでも俺がその行動を移すのに、早いも遅いもないのだ。


「お前も知っているだろ? 昔から、俺はみどりに嫌われているんだよ」


「はぁ、本当にお前らって……あ~! なんでもない、なんでもない!!」


「なんでもないってなぁ。だから、今更俺が何したってあいつは俺のことを好きなんかならねぇんだよ」


「はいはい」


昇は軽く笑って、その話題を変えた。


しかし、俺の頭の中にあるあの光景。昇の言った“もしも”を忘れられずにいた。


「無理だ、無理だ!」


俺が家に帰ってからも続いた悪夢。なってほしくない、現実の妄想だった。


そして、それはある事件で一変することとなる。


“もしも”が現実に変わる。









次の日の学校。


一時限目が終わった次の休み時間だった。


「もう、蓮君ってば」


みどりの楽しそうな声。


みどりが呼んだその名前。


それは、紛れも無く他の男の名前だった。




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