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3.執事のハンス


旦那様は私のことを監視でもしていらっしゃるのかと本気で思うことがある。


さきほどのナタリーからの旦那様の警告は私が今回の家出を中止しようかと考えるとほどに効果てきめんだった。


旦那様を怒らせたら本当に恐ろしい。屋敷脱走のお仕置きはとんでもなかった。次の日ベットか一歩も動くことができず、痛みでのたうち回ったのを鮮明に覚えている。


それに、こんな風に軟禁じみたことも、平気でやるし、過去に私を襲った暴漢を本気で殺そうとしたこともある。


あぁ、旦那様なら監視ぐらい平気でなさるだろう。やはり、今回の家出は止めようと、服を隠すために被った毛布の中で震えながら考えていた。


「いや、でも待って。旦那様、今日は遅くなるってナタリーがいってたわよね。これは、チャンスなのでは?」


震えをピタリと止まらせて、もう一度、家出について考える。


「旦那様が遅くなるなんて、めったにないことだし、あっ!そういえば、今日、使用人達も買い出しに行くっていってたから、屋敷に残るのはすくないはず。家出には絶好の機会ね。」


こんな絶好の状況もう、二度とやってこないかもしれない。それに、私はこんな閉じ込められた退屈な生活は我慢できないのだ。やはり、家出をしよう!


そう、決心して被っていた毛布をばさりと脱ぎ捨て、ベットの下に隠した家出用のバックを引っ張り出し、置き手紙の上の本をどけ、机の真ん中に見えるように置いた。


「私ならできる。見つからなければ良いだけ。」


ふぅっと深呼吸をして部屋のドアノブに手をかけた。











*******************


キョロキョロと辺りを見渡す。


今のところ順調に誰にも会うことなく、2階の私のへやから、1階の応接室前にまで、来ることができた。2階から1階にくるまででも大変だろうと思っていたから、こんな簡単にこれるとは、拍子抜けだ。この調子なら、今回の家出は成功するだろうとおもっていたら、


「ーおく、ーーーーーーだーーーーーわーーー」


すぐ近くで話し声が聞こえた。はっと息を止め、廊下の壁に張り付いた。おそらく、この廊下の曲がり角の先で話しているのだろう。


誰だろうとそろりそろりと見つからないように近づく。曲がり角からそうっと覗くと、話しているは、メイドのナタリーと執事のハンスのようだ。


「ーーーいまーーーだーーーーーーーー」


「わーーーつぼーーーーーーーーー」


残念ながら、話してる内容は聞き取れない。じっと二人を見守っていると、話を終えたようで二人は去っていくようだ。


私が、よかった。と、ほっとひと安心をついていると、突然鼻がむずむずし始めた。だめだ、我慢しなきゃと思っていたが、


「くしゅんっ!!」


と、盛大な音をたて、くしゃみをかましてしまった。


「ん?何か音がしたな。」


ハンスが、くしゃみを聞き付けてしまったようでこちらにやって来る。


やばいっ。隠れなきゃ!!


近くの応接室隠れようとドアノブをまわす。が、ガチャガチャと音をたてるだけで開く気配がない。


「っ、なんで開かないの!」


応接室は諦め、他に隠れる所はないかと辺りを見渡す。目にとまったのは、廊下に飾ってある大きな壺だった。


「・・・・・・この壺のなかに入れるかしら?」


幸い、壺はふたつきなので、ふたを閉めれば、覗かれても大丈夫だし、大きさも私が入っても大丈夫そうだ。


普通なら、こんな壺に入るなんて淑女らしくない行為絶対に、しないが、背にはらはかえられない。素早く壺のなかに入りふたをしめた。


それにしても、こんな大きなつぼ屋敷にあったかしら?と考えていると、ハンスがやって来たようだ。


「なにも、ないか。」


そう言って、ハンスは辺りを確認しているようで、辺りに足音が響く。そうしているうちに足音がだんだんこちらに近付いてきて、ピタリと壺の前で音が止んだ。


まさか、ふたが開けられるっ?ドキドキと心臓が音をたて、息を潜めて考えていると、


「あぁ、そういえばこのつぼ。倉庫に移動するようにと旦那様に言われてましたね。」


すると、ハンスはひょいっとつぼを持ち上げた。


「うっ、重い。私も年をとったものですね。」


そう言いながら、壺を倉庫の方へと運び出す。私は一人壺のなかで、焦っていた。なぜなら、倉庫は玄関と真逆の屋敷の奥にあるのだ。脱出が、困難になってしまう。それから、重いは禁句だぞ!と、壺のなかでわたわたしてると


「そういえば、奥様は部屋でおとなしくしていらっしゃるでしょうか?旦那様は二度目はないとおっしゃられてましたし、もし、また、家出をするようなら、手錠を、着けてベットに繋いでおくなんて、いってましたね。旦那様が、お怒りになられたら、私どもも奥様を庇いきれませんからね。もう、二度と家出なんて考えなさらないといいのですが・・・」


そう言って、ハンスは軽快な足取りで壺を運ぶ。


私は、その壺のなかで、青くなり、ぶるぶる震えるしかなかった。









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