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1.決心

「あーー!!もう、我慢できない!!!」


わしわしと頭をかきむしる。普段なら絶対にしない行動だか、イライラが抑えられない。


素早く自分の部屋の引き出しから紙を取りだし、普段使わないインクの盖を開けようとする。しかし、どうも盖が開かない。


「もうっ!!」


こんな、些細なことにもイライラしながら、無理やり盖をこじ開け、ボチャンと音をたて、羽ペンの先にインクをつけた。その際、少しのインクが飛び散ってしまったが、気にしていられない。


真っ白の紙の上に、ガリガリと、粗っぽい字で私はこう書き記した。


『旦那様。今回ばかりはもう限界です。私、マリア・ハーデンベルクは家を出させていただきます。』








・・・・・・・・・・・・・・・・・


マリア・ハーデンベルク伯爵夫人。それが、私の今の肩書きだ。

2年ほど前に旦那様、ルイス・ハーデンベルク伯爵と結婚した。


旦那様はすごくお顔が整っていて、さらさらと流れる黒髪に、闇夜を閉じ込めたような鋭い目をなさっている。さらに、博識でいらっしゃり、おまけに剣の腕も上等。その見た目から、少し冷淡な印象を受けるが、話術も巧みでだれとでも仲良くなりそれはもう、非の打ち所がなかった。


当然、社交界では、ご令嬢の方々からの人気は凄まじく、旦那様とダンスを踊るために3時間待ちの列ができたとか、旦那様が話かけただけで、気絶したご令嬢が何人もいるとか、さまざまな伝説を耳にしたことがある。


一方、私はというと、絶世の美女というわけでもなく、天才というわけでもなく、見た目も中身も平凡中の平凡。一般的な茶髪と茶色の目。可もなく不可もないごく一般的な令嬢。


こんな私が完璧人間な旦那様の妻として選ばれたなんて、今でも信じられない。私は旦那様を愛しているし、旦那様も私を愛してくださり、それはそれは幸せだった。


















だけど、



私ははどーーしても、旦那様に我慢ならないことがある。こんな素敵な旦那様をもらっておいて何を贅沢いってるんだって言われるかもしれない。けれど、我慢できないものは我慢できない。


旦那様は心配性過ぎるのだ。私が何をするにしても、いちいち報告を求めてくる。ちょっと、友達の茶会にいくだけども、護衛を何人もつけようとするし、夜会に出ようものなら、私を片時も離さず、旦那様以外とダンスを踊ってはいけないと言われる始末。


私は茶会にいくだけなのだから、護衛も必要ないし、夜会でも、少しは自由が欲しいと旦那様に抗議をしたが、旦那様は


「マリア。私はとても心配なんだ。こんなにかわいい私のマリアがもし、暴漢に襲われたら?もし、他の男に言い寄られたら?あぁ、心配で夜もねむれないよ。」


と、聞く耳を一切もたず。


おかげで、いろいろ鬱憤が溜まった私は先日、気分転換しようと屋敷からこっそり抜け出そうとした。ところが、旦那様からすぐにみつかり、とてつもない大目玉と、当分の間の外出禁止をくらった。


だから、私は今自分の部屋で、軟禁状態にある。部屋でできることは限られていて、刺繍か読書ぐらいだし、飽きるし、退屈だしで、私のストレスは蓄積され、そして、ついに限界をむかえた。



「あーー!!もう、我慢できない!!!」


こんな家出てってやるっ!そう私は決心した。

















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