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第一話

今宵一組の仮面カップルが破局した。

女は涙に濡れ、自室でスマホを見ては変化がないことに嗚咽し、暖めた食事にも洗濯物の山にも手をつけていない状況だ。

一方男は、彼女からの突然の別れ話に驚きと戸惑いを抱きはしたが、深く考えた末受け入れることにしたにも関わらず、何故か女が泣き出す。振られたのは自分なのに何故女が泣いているのかが理解できず、困惑し、取り敢えず未読にしているというところだ。

哀しきかな、男女のもつれはどう頑張っても生まれるときには生まれる。男性は無言のときに居心地良く感じるが、女性はたかだか生活の些細な出来事でも伝えて初めて心が満たされる。聞きたくない男性と、話したい女性。黙れば男が喜ぶが、女は崩れる。逆に女が騒げば女の心は満たされるが、男は耳を塞ぐ。

このもつれが、このカップルの破局の真髄たる所以なのだ。



語れば長いが憶するに単純で、つまりこういうことである。

忙しい彼を気遣い、彼女は連絡を控えていた。彼からの連絡が来たらそれに答えるスタイルでいると、彼からは彼女の様子を伺う気配がないものだから、彼女は自分の話をすることが全く出来ずにいた。それが溜まりに溜まって、ついに彼女の口から突然「もう無理かも」と発せられたのだ。


事は深刻で泣き付く彼女に傷心の彼。もはや盛り返すことなど不可能の域となった。


女の周囲の人は「もう無理だろう」「次に進め」と話すも、一向に首を縦に振ろうとせず、こうなってはもう周りで見聞する者も何もかける言葉が無くなってしまい、遠巻きに見るしかなくなってしまった。女は閉じ籠り、何をするでもなく愛しの人とのメールのやりとりを見ては閉じ、見ては閉じしているのである。


そう言うとき男はどうしているかと言うと、仲間内に励まされていたりする。飲みに行き、「まぁ、次頑張れ」と励まされ、美談にまとめ過去の恋愛として心の戸棚にしまう作業に入る。そこに戸棚に閉まったはずの過去の恋愛、すなわち女から泣き言が入れば、せっかく並べたものをもう一回出してこないといけないから、とても気持ちが乗らず、イライラと面倒くさくなってしまう。



最初付き合ったときはどうだろうか。

男のほうから釣り上げて、軽く釣れたもんだから気軽に扱っていた。従順でしつこくなく、忙しい仕事の邪魔もしないものだから、非常に居心地がよく、「いい彼女だ」と釣った獲物を愛でていた。

女の方もタイプの彼から交際の申し出があり、断る理由がないから受け入れた。だが彼は多忙で邪魔はしちゃいけない。過去の経験から自分の言いたいことを押し付けてはいけないと学んでいるようで、あっさりした対応を心掛けていた。代わりにお弁当を作ったり、シャツを丁寧にたたみ直してあげたりした。

だがこういうことは我慢してするもんでもない。女は素敵な男性と付き合うことはできたが、話を分かち合うことも出来ず分かり合うことが出来ていないと感じていた。男は能天気に構えているもんだから、それに気づくはずもない。従順で魅力的な彼女と思っていたら、突然隕石が降ってきた。そんな恐ろしい星とてもじゃないけど長くは居られない。


残念ながらそういうことになってしまった。彼女は自分を責め、彼は狼狽している。ピチピチの別れたての恐ろしいほど危なっかしい状態。


これは男女の話を描いたフィクションであり、心理小説である。

主人公は女。

ここから女が幸せになる道を歩けるのかを書いた物語である。



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