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 その後はうたげだった。

 幼い頃に死別したと思っていた娘と、まあ幽霊としてだけど、再び相まみえることができた。それも成長した姿で。

 響子の両親の喜びはいかほどに。

 推し量ることはできないけど、それを表すものが。

 俺達の目の前に置かれている寿司桶。

 よく行く回転寿司とは全然違う、高そうで、さらに旨そうなネタの数々。

 先輩なんかは、

「私達までご相伴しょうばんにあずかっていいのかしら」

 と、豪勢な食事の前にちょっと遠慮気味。

 悠は、そんなことを気にしないで上手そうに頬張っている。

 叔父さんは最初こそ先輩同様遠慮しようしていたけど、アルコールを勧められ、そこからは……。

 響子は、

「ズルいー、みんなだけ食べられて」

 と、俺の耳元で文句を言いつつも、表情はその反対で楽しそうというか、嬉しそうというか。

 そして俺はというと。

 ……味わう、食べている暇がなかった。

 というのも、響子の言葉を響子の両親に伝える、通訳とでもいうべき仕事に従事し、食べるために口を動かすのではなく、しゃべるための口の動きに終始していた。

 俺以外にも聞こえる人間がいるんだけどな、と理不尽に思いながらも勤しむ。

「これで冥途の土産ができた」

 さっきまでの形相はどこに行ったのやら、まさに好々爺といった顔で響子のお父さんが言う。

「いやですよお父さん、そんなこと言って」

「そうかな」

「そうですよ。それに冥途に行っても響子はあの子はいませんよ」

「そうだったな。ああ、なら、私達も死んだら響子のように彼に憑くか。そうすればまた家族で暮らせるぞ」

 響子一人が憑いているだけでも俺のプライベートが制限されるのに、三人も憑かれた日には一体どうなってしまうのか。

 いや、それよりもさっきの発言は酔った上での冗談なんだろうか? それとも本心だろうか? どう反応していいんだ俺は?


 日が暮れてから先輩と悠はタクシーを呼んでもらい帰宅。

 俺と叔父さんはそのまま。

 俺が帰ると、憑いている響子も一緒に帰ることになるので必然的に。

 叔父さんが残った理由は、祝杯に付き合うため。

 やがて叔父さんは、響子のお父さんと呑みながらやがて轟沈。

 響子のお父さんも同じく、寝てしまう。

 その後俺は響子のお母さんと、響子の間を、言葉で繋げながら、口のリソースを食べることに回すことができ、ようやくお寿司を。

 美味を堪能して、お風呂をいただき、生前響子の生活していた部屋に布団を敷いてもらう。

 布団に入って、ふと思ってしまう。

 そういえば、女子の部屋で寝るのは初めての経験だよな。

 悠とはあんなことをしたけど、行為だけで、その後部屋で眠るなんていう経験はしてないよな。ああ、でも記憶にないだけで小さい頃にはそういうことがあったのかもしれないけど。

 そんなことを考えているうちに、別の考えが頭の中に。

 その考えを響子に告げてみる。

「うん、竜ちゃんに任せるよ」

 そうか、なら明日の朝、響子のお父さんに話してみようか。

 考えているうちに睡魔が。

 それにしても短いのか、長いのか、よく分からない一日だったな。

 目を瞑ると、俺はそのまま夢の中へと。



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