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『おい、高井さんは死んでいないぞ』

 いつもは二人だけで楽しそうにスカイプで話しているのに、その内容は小説やマンガはもちろんのことアニメ・ゲームに音楽、スポーツとモータースポーツに当時の社会情勢や芸能関係、それこそ多岐にわたる話題で盛り上がっているのに、珍しく俺までモニター前に呼ばれて何事かと思っていた矢先に出た叔父さんの言葉が先程の言葉。

「「はああああああああああああ」」

 俺と響子の声が見事にハモッてしまう。

 室内に木霊する。

 何言っているんだよ。死んでるから、こんな風に幽霊になって俺に憑いているんだろ。

 それなのに死んでいないって。どういうことなんだ。

「それじゃ幽霊になんかなっていないだろ?」

 疑問を声に変換。

「そうだよ。私は死んだんだから幽霊になってるんだよ。二十年以上も学校で彷徨っていたんだよ。死んでなかったら幽霊なんかになっていないよ」

『そういう意味じゃなくてな、法的にはまだ死んでいないんだよ』

「それは、どういう意味なの?」

 叔父さんの言っている言葉が理解できなかった。

『あのな、市役所で今日子ちゃんのことを調べたんだ』

「市役所で何を調べるの?」

 これは響子の質問。

『うん、お前らの報告では中学に入る前の年齢で死んでいると言っていたよな』

「墓石に名前と享年が刻まれていた」

 そう、ちゃんと見た。俺も響子も、悠も先輩も。

「でも、響子にはその後の記憶もある」

『それでさ、さっきの話に戻るんだけどちゃんとしたというのも可笑しいけど、高井さんの亡くなった日を戸籍上で調べようとしたんだ』

「それって簡単に調べられるものなの?」

 詳しくは知らないが個人情報のなんとかで他人が簡単に入手なんかできないんじゃ。

『まあ、蛇の道は蛇だ。ちょっと非合法の手段でな』

 笑いながら答える。市役所勤めで広い意味では職場の情報だろうけど、叔父さんたしか部署は全然違うよね。

「いいの、それ」

『良くないよ。バレたら一応犯罪だ。最悪俺は公務員を首になる、無職になる。だから入手方法は秘密だ』

「はあー」

「それで。私が死んだのは何時なの?」

『だから高井さんはまだ死んでいないんだ』

「はい?」

 言葉は分かるけど、内容が理解できない。

 それは響子も同じようだった。

「死亡時期を調べたのよね。なのに死んでないってどういうことなの?」

『それが市役所には死亡届が提出されていないんだ。だから法律上はまだ死んでいないことになる』

 謎がまた増えた。



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