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翌日になっても二人の話は尽きることがなかった。
このままでは帰れそうにない。
「ならいっそのこと俺じゃなくて叔父さんに憑くか」
皮肉と嫉妬が入り混じったような、時分でもよく理解できない気持ちで響子に提案してみる。
見える人間からすれば十代の少女と中年男、犯罪性を感じさせてしまいそうな組み合わせだが、響子の中身は四十代、つまりは叔父さんと同年代で似合いのはず。
そうなれば、いつでもどこでも思う存分話ができるはず。
物理的な繋がりは不可能でも、心では繋がれるはずだし。
これまで全然浮いた話のなかった叔父さんにもようやく春が。
それに生前では幸せになれなかった響子にも。
だけど、内心では……。
「ううん、いい」
否定の言葉を聞いた瞬間、少しだけ嬉しかった。
だけど、この嬉しさはすぐに後悔へと変わってしまう。
離れていても簡単に話ができる現代、自由自在に俺のパソコンを使用できる響子は叔父さんとスカイプで楽しそうに話をしていやがる。
楽しそうな、嬉しそうな表情を見せるのはいいけど、それは俺に向けられたものじゃない。
少しだけイライラした気分に。
ベッドの上で壁側に寝返りを打ち、つまりパソコンをいじっている響子見ないようにして、俺は二人の話声が聞こえてこないようにイヤフォンをして音楽を流し遮断した。
それでも背中越しに楽しそうな雰囲気は伝わってくる。
そんなもの伝わってこなくてもいいのに。




