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連絡待ちだから、俺にできることはない。が、気になってしまう。
まだ連休は続く。この間にも何かしらの行動を起こしたほうがと考えるけど、何をすればいいのか思いつかない。
結果、時間だけを浪費していく。
「まあまあ、大島君が調べてくれるんだから気長に待とうよ」
自分自身のことなのに、何でそんなに悠長に構えていられるんだ。俺の方が焦っているんだ。
やはり年の功なのだろうか?
けど、それは口にはしないでおく。言えば、響子の気分を害してしまう可能性もあるから。
「ねえ、悠ちゃんと先輩には報告しておいた方がいいんじゃないのかな」
響子言葉はもっともだ。
悠はともかく、先輩にはお世話になっている。もしかしたら今も響子の過去を探そうと骨を折ってくれているかもしれない。
「そうだな」
答えながらスマホを手に。数回のコールで先輩は出てくれる。
「あの先輩、謎が増えました……」
俺の言語能力では電話越しに上手く説明できないけど、それでも耳元で響子に協力してもらい、拙いながらも報告を完了する。自分でも結構あやふやな感じがしたけど、それでも先輩は一応理解してくれた。
『それで、大島くんの叔父さんが戻ってこられるのは何時なの?』
たしか電話では明後日言っていたはず。ああ違う、それは昨日の段階だから。
「明日って言っていましたけど」
『何時ごろになるのかしら』
「さー」
時間までは言っていなかったよな。まあ、四国まで行っているんだから早い時間に帰宅ということはないだろうと思うけど。
『それなら、明後日お会いしたいと伝えてもらえないかな』
「え? 会うんですか?」
先輩が叔父さんと会う必要性が分からない。
『当時を知る人と話すことで解決の糸口が見つかるかもしれないから』
なるほど、それは理解できる。けど……。
「どうやって説明したらいいのか?」
響子のことを話してもまともに取り合ってもらえない可能性も否定できない。
『それなら、こう伝えてももらえないかしら。今度の同人誌で創刊三冊の謎の白紙ページを調べて書くから、そのために当時を知る人に取材したいと』
「分かりました。それじゃそれで叔父さんには連絡しますから」
『もしその日が駄目なら、別の日でも構わないから。都合に合わせるとも言っておいて』
「了解しました」
電話を切る。それじゃ今度は叔父さんに連絡を取らないと。
ああでも、走ると言っていたから今かけても出ない気がするな。それならメールにしておくか。文面は、『女子高生が明後日会いたいって』。詳しくは説明していないけど、まあこれでも伝わるだろ。
「あんな文章で大丈夫なの?」
「上手く説明できないし、文章を書くのも面倒だし。それに絶対にあれでも大丈夫だって」
「本当かな?」
半信半疑の響子。心配するな、お前よりも俺の方が叔父さんとの付き合いは長いから。
メールを送信して数分後、俺の予想よりもはるかに早く叔父さんからの電話が。
「ほら見ろ」
「……男の人って馬鹿なの」
幻滅したような顔をしながら響子が呟く。何がそんなに不満なんだ。連絡が早く返って来たのはいいことだろ。疑問に思うけど、それよりも出ないと。
先輩に言われたように説明する。
『了解了解。その日は別に予定なんか入れてないし、仮に入れてあっても現役の女子高生と話ができるんだから無理にでも空けるからさ』
あっさりと会うことを承諾される。
「大島くん、サイテー」
俺の横で響子がぽつりと呟く。言葉自体は短く、小さなものだったけど、語気に微かな怒りのようなものが感じられた。
今の言葉の一体どこに怒っているのかさっぱりと分からないが、響子が叔父さんに対して少し怒っている姿を見て自分でも理由は分からないけど少しだけ溜飲が下がるような気がした。
再度、先輩に電話。無事にアポが取れたことを伝える。
「ねえ、悠ちゃんには連絡しないの?」
そっか一応部としていくんだか悠にも言わないといけないのか。
けど、悠が一緒に来ても何かの役に立つとは到底思えないんだけど。
だけど、言わないと後で不貞腐れるのも目に見えているし。そうなると面倒くさいことになりそうな予感もあるし。
「それじゃ一応言っておくか」
悠には悠の予定もあるだろう。
来る来ないは悠の自由として一応連絡だけはしないとな。後でうるさいし。




