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翌日、午後に校門前に集合。
この時間になったのはその後の取り決めで悠が昼からがといい言い出し、ならばお昼を食べてからなら余計な出費はしなくても済むわねと先輩が同意し、そういうことと相成った。
悠に合わせて通学用の自転車で学校までやって来た。これが俺一人、正確には響子が憑いているから二人だけど、ならばロードバイクに乗ってきて最後の坂も軽々と超えることができたのに、ギア比はそこまでじゃないけどまあまあ重たい車体では疲れる。
俺は降りることなく上りきったけど、悠は早々に諦めて坂の最初から自転車を押している。
初夏とはいえ、今日も結構暑い。日差しなんか夏そのものじゃないかと錯覚するくらいに。
まだ何もしていない、高校まで来ただけなのに汗をかいた。
先輩はもうすでに校門の前で俺達を待っていた。
遅れちゃダメ、と響子に急かされて集合時間よりも十分も前に着いたのに。この人一体いつからここにいたんだろ。そういえば部活でもいつも先に来ているよな。
「それじゃ全員集合したから、行きましょうか」
「行くって? さっき着いたばかりなのに」
そんなに運動強度はないはずなのに息が絶え絶えで悠が。
「そういえば何をするのか、まだ聞いていませんよね」
昨日の話では集合時間と場所しか話していない。
響子の痕跡を探すこと。それ以外の具体的なことは分からない。
「響子さんと一緒にこの周辺を適当に歩き回るの」
そう言いながら先輩は自分のスマホの地図アプリを広げて言う。
画面を見る。この辺と軽く言うけど結構な広さだ。
「あ、もしかしてこれってこの高校に進学できる範囲」
響子の言葉を先輩へと。
「うん、そう。幽霊になる前の記憶もあんまりないから、進学できる中学の校区を歩いていたら引っかかるようなものに遭遇しないかなと思って」
そういえば、学校の外に出られるようになってからは初日に寄り道した程度で後は家と高校の往復だったよな。
「あ、でも。なんで歩きなんですか? 別に自転車でもいいんじゃ」
「自転車の速度じゃ見逃してしまうんじゃないかと思って。……後は、私が自転車じゃないから。今日は車で送ってきてもらったから」
自転車でも大丈夫ですよと反論しようとしたけど、その後の言葉で撤回。
それじゃ仕方がありませんね。
「今日はこの高校の北側を歩いてみようと思うの。私は階段で下りるから。下りた先にあるお店の前で再集合ね」
「だったら最初からそのお店の前集合でよかったんじゃ。こんなに疲れる目に合わなくても」
その通り。悠にしては珍しく正論だ。
「あっ、……ごめんなさい」
指摘に気が付いたのか、先輩は俺と悠に向かってこちらが恐縮するくらいに頭を下げて謝罪した。




