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 溜まりに溜まったものを外へと放出したいという一心だった。

 感じているのだろうか、荒い息交じりで悠が何かを言っていたような気がするけど、気にせずに腰を振り続ける。

 肉付きのいいお尻に叩きつ続ける。

 我慢して、溜まり続けていた性欲を吐き出す。

 腰が抜けるかと思うくらいの射精の後に出てきたのは後悔の二文字。

 しまった。

 悠を押し倒したことをじゃない。響子がいるのに行為に至ったことを。

 なんで俺は誘惑に負けてしてしまったんだ。その寸前までは確実に響子の目があるから自重しようと思っていたのに。

 反省の二文字が追加される。いくら後悔や反省をしても、してしまったことをなかったことなんかにできないのに。

 溜息が勝手に出てしまう。

 萎びた性器を外に出して項垂れている俺。さぞかし間抜けな姿に見えるだろうな。

 穴があったら入りたい、という言葉があるけど、まさにその心境。

 多分俺の傍にいるはずの響子の顔を絶対に見れない。

「……竜ちゃん」

 組み伏せていた悠が俺の名前を呼ぶ。けど、視線は俺に向けられていない。

「……何だ?」

「さっきのずっと見られていたよ」

 そりゃそうだろ。俺には響子という幽霊が憑いているんだから。

 はあ? ちょっと、待て。

「……誰に?」

 そう、誰にだ? 響子は俺にしか見えないはず。それなのに悠は誰かに見られていたと言う。

「竜ちゃんの後ろにいる髪の長い女の子」

 首を曲げて後ろを見る。響子がそこに浮いていた。

「悠、お前見えるのか?」

「うん、見えるけど。……これってあたしだけじゃなかったんだ。している最中に何度も言ったけど、全然聞いてくれなくて見えているのはあたしだけなのかと思った」

 行為の全てを目撃されたにも関わらず、いつものような軽い口調で言う。

 恥ずかしくなかったのか。

 いや、それよりも。

「お前本当に見えるんだな?」

「あ、響子ちゃんっていうんだ。こんにちは、あたしは悠です」

 悠が律儀に挨拶し、頭を下げる。

「……あ、はい、こんにちは……高井響子です」

 突然のことで戸惑ったのか、しばし時間を空けてから響子が返す。

「響子ちゃんっていうんだ、よろしくね」

 見えるだけじゃなくて、声まで聞こえるのか。

 何でだ、どうして突然そんなことが可能になったんだ? する前までは見も聞こえもしなかっただろう。なのにどうして?

 ……原因はやっぱりアレだろうか?



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