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 家に帰ってからもムラムラは治まらなかった。

 女の体なんかこれまで何度も見ている。見るだけじゃない、触れてもいる。それこそ、相手は悠だけど何度も体を重ねて、つまりセックスをしている。

 それなのに、ずっと下半身が反応したまま。

 もしこれでサイクルパンツなんかを着用していたら一発で響子にバレてしまうくらいに下半身に血流が集中している。

 このままでは不味い。一刻も早くいきり立ったものを何とかしないと。

 それには放出が一番だけど。

 ……できない。

 やり方が分からないわけじゃない。それこそ幾度なく経験している。

 だけど、できない。

 その理由は響子だった。

 俺に憑いている。だから、俺から離れられない。つまり、俺の行くところ響子は勝手に付いて来てしまう。

 一人コッソリと処理しようと思ってもできない。響子に見られてしまう。

 ならば、開き直って響子にオカズになってもらい性欲を処理するという方法もあるが、面と向かってそんなこと言えない。

 この先どれくらいの時間憑いているか分からないけど、これがきっかけで関係がおかしくなるような可能性もあるし。

 ……それに、俺もそんな場面を見られ興奮しながら達するなんていう高度の趣味は持ち合わせていないし。

 我慢することにした。

 性欲の一つや二つ、理性で制御できるはずと思っていた。

 甘かった。そんなに簡単に治まらない。いや、むしろ反対に強くなっていくような気が。

 こんな時はさっさと寝てしまおう。それなのに眠れない。

 体は疲れているはずなのに、ムラムラと悶々としたまま朝を迎えてしまった。


 もしかしたら盛大に暴発してしまう可能性もあったけど、幸いにしてそのような不祥事を起こすには至らなかったものの、依然危険な状態であることには変わりない。

 ならば、昨日同様にロードバイクで出かけてスポーツで発散するのはどうか?

 無駄なような気がした。

 そんなことで解消されているのなら、そもそもこんなことになっていない。

 どうしよう?

 このまま響子と一緒にいるのは危険な予感がする。かといって離れることは不可能だし。

 悩んでいる俺に救いの電話がかかってきた。悠からだった。

用件は出された課題を一緒に片付けよう。

 大量とまではいわないけど、それなりの量の課題がこの連休に出されていた。

 悠の狙いはこの課題を助け合いながらこなす、ではなく、俺の解いた問題を横で丸写しする算段なのだろう。

 普段なら、自分でやれと言って拒否するけど、今日は好都合。

 電話が終わると同時に手早く荷物をまとめてバッグの中に放り込み部屋から出る。

「今日も出かけるの?」

 俺が悠と話している間、一人パソコンのモニターに見入っていた響子が言う。

「ああ、悠の家に課題をしに」

 夏服になっただけ、いつもと変わらないはずなのに正面から見ることができずに視線を逸らしながら答える。

「本当? なんか怪しいな。ちゃんと私を見て答えていないし。帰ってきてから様子がなんだかおかしいし」

 ずっとお前を見ているとおかしな感情と性欲が強くなっていくからだよ。

 だけど、そんなことを言えるはずもない。

「……本当だ、嘘じゃない」

 そう、課題をしに行くのは紛れもない事実。

「そうか。それじゃ、お姉さんに任せなさい。なんてたって伊達に二十年以上高校で幽霊していないからね」

 薄い胸を叩いて言う。

 小さな胸なんかにこれまで欲情を覚えたりなんかしなかったのに。貧乳になんか興味なかったはずなのに。

 慌てて視線を響子から外す。

「……別に頼らないよ」

 簡単な会話程度なら問題ないけど、ずっと話していたらヤバイ気持ちが高まっていきそうだ。

 二人きりでいるのはヤバイ。

 だから、悠の提案にのることに。



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