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部屋に戻って、さっそく同人誌を開く。
俺としては別にもう読む必要性はないけど、叔父さんがかつて所属していたことを確認したから、響子はすごく見たがっているから。
さすがに古い。変な匂いがするし、所々印刷が消えかけている個所も。
それでもなんとか読むことは可能だ。
まあ、俺は読むというよりもページ捲りマシーンだけど。
パラパラと捲っていくと、台詞ばかりにページが目に飛び込んでくる。
ネットなんかでたまに観るSS小説か。
巻頭に戻り、目次をチェック。そのページの担当者は見慣れた名前。
つまり叔父さんの文章だ。けど、何だこれ?
「懐かしい。これテーブルトークRPGのリプレイだ」
「テーブルトーク?」
RPGは分かるけど、テーブルトークって何だ?
「うん、この頃文芸部の男の子たちの間で流行っていたの」
懐かしそうに響子が説明してくれるけど、あまり要領を得ない。それでもなんと理解できたことは、非電源ゲームで会話によって展開していき、そして変な形のサイコロを振る、大人のごっこ遊び。
それって面白いのか? 今一よく分からない。今度叔父さんに訊いてみよう。
面白さが理解できずに、さらに身内の書いた文書を読むという恥ずかしさも加えて、読み飛ばす。
学生の創った同人誌、ついでを言えば創刊号。薄くて面白くない。
あっという間に終わりまで。
あれ、何だこれ?
最後の数ページが白紙だった。
印刷ミスだろうか? でも、数ページに渡りミスを連続するなんてことはあるのだろうか? でも、創ったのは素人、案外こんな失敗をしでかしてしまうのかもしれない。
「……どうして?」
疑問に思ったのはどうやら響子も同じだったらしい。
俺はさっき頭の中に浮かんだ見解を言う。
「分からない、次の号も見てみようよ」
どうやら賛同を得られなかったみたいだ。響子には別の考えがあるみたいだけど、それは口にせずに別の指示を出してくる。
二号目を捲っていく。またしても最後数ページが白紙状態。
三号目、今度は巻頭、目次以降の数ページが白紙。
最初の二冊は俺の考えでも説明が付くけど、これは無理。
いくら素人でも、絶対にこんなミスはしないはず。
目を凝らしてよく見てみる。もしかしたら、印刷が消えてしまったという可能性もあるし。
違う、最初から白紙のようだった。
「どうして、なんで消えているの?」
今にも消えそうな、哀しそうな響子の声がした。




