食堂探索お預け
食堂をもっと詳しく探索しよう。
やはり、ここには何かあるのではないか? という気持ちがまだ残っている。しかし、見たところ何もないただの食堂であった。
「何もないなら、どっか別の場所に行こっかな......」
という感じに食堂探索は呆気なく終了する。いずれ探索に行き詰まった時にでも戻ってくるだろう。
とりあえず一階の探索は一通り終えた。
次はようやく二階に突入するのだが......やはり何があるかわからない。ようは怖いのだ。
(二階に上がった瞬間、モンスターとか出てこないかな......)
そんな心配をどうしてもしてしまう。一人でこんな場所に居たらそうなってしまうのも無理は無いだろう。その様な状況に陥ったことが無い者には理解できない感覚である。理解できる事の方が逆に怖い。
なんだかんだで玄関ホールに戻ってきたクロエだった。数時間しかたっていないのに、少しだけ懐かしい。
「本当に誰か居てくれたら心強いんだけどなぁ......」
物語にはフラグという物が存在する。日本語で表すと『言霊』と言う言葉に似た意味がある。
ぎいいいぃぃぃーーーーー......
「ひゃっ......!?」
突然のことに驚いて女の子の様な小さい悲鳴が自分の口から出る。声変わりしていないのだから無理は無い。
そんなことより、誰かが入ってきたのだ。事の重大さに気付くには、少し時間がかかりずぎた。
「だ、誰だ......!!」
カツン、カツン、カツン
靴の音だけが暗闇に響く。
この館は暗い、ある程度の距離がないと顔を確認することすら出来ない。
「ほ、ホントに誰だ!?」
「この声はもしかして......! クロエ?」
「......!?」
聞き覚えのある声。それもそのはず。声の主はビトだった。
「ビト! なんでこんなところに居るんだ?」
「さぁ、僕にもよくわからないんだよね。気がついたらここに居た、と言うことにしておこうかな?」
そう言い切るとビトは柔らかく笑った。
久しぶりに見る友の顔に、顔の筋肉が緩むのがわかった。
「それにしても、この館は何なんだろ? ビトは分かる?」
感傷に浸っている場合ではない。何より場所が場所なのだから。
「いまきたばっかりだって言っただろ? 少し見て回らないと分かるわけ無いよ」
「それもそうだね、一階の探索は終わったから次二階に行こうと思うんだけど......」
「うん、分かった。二階に行ってみようか」
ビトが新たに仲間となり、少し心強くなった。
だが、ホントにビトは偶然ここに来たのだろうか。
このような偶然はあるのだろうか、クロエは考えもしなかった。
【クロエの持ち物:ビー玉】
【仲間:ビト】