一階左側
館の一階左側、おおよその造りは変わらなかったが、少し違う。
右側は角を曲がるとすぐ行き止まりだったが、左側は角を曲がるともう一つ角があった。
「あれ、左右対称ではない? 何でだろう......」
とにかく例の如く奥から見回っていくことにした。
最奥の角を曲がると、目の前は行き止まりで窓ガラスがついていた。外を見てみても暗闇が広がっている。『暗い館』に相応しい。
その右側に扉があり、一つ目の角を曲がった正面にも扉が一つあった。
奥の扉、先程は『花』が彫られていたが、今回は『鳥』。そしてびくともしない。
手前の扉、そこには『風?』 に見える模様が彫られている。
「さっきといい、今回といいここには鍵付き扉が多いな......もしかして『宿泊施設』とかなのかな」
一人しかいない今、どうしても独り言になってしまうのは仕方がない。なにより、そうすることによって自分の精神面を安定させているのだ。
一人でこのような場所にとばされて、冷静でいられる。その方が奇跡なのかもしれない。
「扉に模様があしらわれている。その扉は基本的に開かない。やっぱ鍵が要るんだよな......」
そうとなれば探すしかない、当たり前の事である。
そうときまれば後回し、その前にやることはいくらでもあるだろう。
実際、この二つ以外にももう一つ部屋がある。それが、正面ホールから左側の通路に曲がってすぐ目の前にある扉だ。
扉の場所まで戻る。扉の横に『食堂』の文字がある。
(ここに食堂があるのか、と言うことはやはり何かの宿泊施設か?)
とりあえず調べてみることにした。
中は思っていたより綺麗だった。まるで誰かがまだ使っているかのように。
「蜘蛛の巣の一つもない......誰かが住んでいるのか? まぁその可能性も無いことは無いだろうけど」
考えていても答えはでない。探索しよう。
中央に大きな机があり、横にそこそこ高級そうな椅子がおいてある。
一番奥の席だけ最も高級感を醸し出していた。おそらく館の主人が使っているのだろう。だとしたらここは宿泊施設等ではなく、お屋敷ということになる。
奥の席の前に食器が置かれていた。ナイフ、フォーク、スプーン、どれも三つずつ置かれていた。そして一際目を引いていたのが『銀の器』。
これは聞いたことがある。王族は毒殺を防ぐために銀器を使う。銀は毒に反応して色が変わるのだ。毒を入れようものなら一瞬にしてバレてしまうだろう。
「中に液体が入ってる、色が悪い......銀の器も変色してる。毒がもられているのか......」
何故か嫌な気分になる。誰とも知らない人でも、殺されかけたのだ。全ての人々が仲良く暮らすだなんて、うまくいく事はないのか。自分に置かれている立場を含めて......。
この部屋には調理室が無いみたいだ。どういうことだろう。間違いなく何処かに調理室があるはずだ。
しかしこの館の造りが妙だ。食堂がここにあるというのに、違う階に調理室を造るものか。
(本当に妙な館だな、早くでないと自分が危ないかもしれない......)
【クロエの持ち物:ビー玉】