魔法少女 店員になる。~その4~ 休憩室での会話
タイトル通りで休憩室での会話です。主にユーリとシャルとの会話がメインとなります。
カノンが休憩室に入るとユーリ、セレスそしてシャルの3人が和やかに会話を楽しみにつつ、食事を取っていた。机は大きな円卓上なのでユーリを真正面にしてセレスとシャルが両隣に座っている。
ユーリはフランスパンの卵サンドとブレンドコーヒー、どちらもここで出しているメニューでフランスパンの表面はカリッと中はふんわりと食べてみると大麦畑を想像してしまう。ブレンドコーヒーはユーリがその日一番良さそうな豆を挽いて出している。先程エーデルから聞いた話だと今日のはフルーティーな香りと強い酸味と苦みの強い豆を合わせているらしい。
シャルは手製の小さな容器の2段弁当。上に卵やベーコンのアスパラ巻き、プチトマトなど色取り豊かになっていて下は小さなおにぎりが2つ入っている。飲み物は水筒を持参してきているようで中身はお茶のようだ。
そしてセレスが食べているのは四角の箱に入っているサンドイッチ。具材は卵・チーズ・ハム・レタスで食べやすい大きさでパンは三段重ねになっている。飲み物はユーリと同じでブレンドコーヒー。
カノンが入ってきたのを最初に気づいたのはユーリだった。布巾を口に押さえて、速やかに食べ物を飲み込み穏やかな顔でカノンを見ながら話しかける。
「カノンさん。お疲れ様。さぁ好きな席にどうぞ。お客様の反応すごく良かったよ。私も鼻が高いよ。ある程度の予想はついていたのだけど、初日からここまでの働きをしてくれるとは思わなかった。引き続いてこの調子でホールの方よろしくね。」
「ありがとうございます。店長。でもまだまだですよ。少しずつ精進していきたいと思います。」
カノンは店長の言葉に反応し答えた。カノンとしてはまだまだオーダーを取るのもお客との会話も表情には出さないようにはしているだけでまだ不安だらけなのだ。
「健気だね。そういう人、私は好きですよ。不安な所とか、わからないことがあれば、すぐに聞いてください。私で答えられれば答えますから。といっても聞きやすいのはエーデルさんやセレスさんなのかな?」
カノンとユーリの会話を食事をしながら聞いていたセレスがすぐに反応した。
「店長、少なくとも私は店長の背中を見ながら接客とか学んできたつもりですので店長が答えられないことを答える自信ありませんよ。」
少し呆れ顔でユーリの方を見るセレス。その時シャルが会話に入ってきた。
「セレス先輩でも答えれること、、あると思います。異性では相談しにくい、、こともあると、、思うから。私もエーデル先輩やセレス先輩には、、色々相談乗って貰っているから。」
思わぬ方向からの援護射撃にセレスの顔が少し赤らめる。どうやら事実のようだった。ただその状態もすぐに回復して,セレスは荷物からセレスが食べているのと同じ四画の箱を取り出しカノンに渡した。中身はセレスと同じものなのだろう。セレスは席を立ちコーヒーカップを取り出してコーヒーを注ぎ,カノンの目の前に置いた。机の上にはシュガーポットと小瓶に入ったミルクが置いてある。
カノンはセレスにお礼を述べた後、一口目は何も入れずに口に含んだ。魔法界でも飲んだことのないような味だった。すぐにユーリに感想を述べる。
「店長、コーヒーとてもおいしいです。うまく表現できないのですが苦みはあるんですけど、後味にならない。すっきりとした喉越し。匂いも果物のような匂いがしてリラックスを感じます。」
その答えを聞いてユーリは少し照れくさそうに答えた。お礼を述べた。
その後、少し話は続いたが10分を過ぎた所でユーリとセレスは交代の時間のようでお店の方に戻っていった。残されたシャルとカノンは話題が出てこず、時間だけが過ぎていった。
やがて休憩時間もわずかになってきた所でカノンは口火を切る。人と仲良くなるには歩みよることが大切。相手が話にくいなら自分から話しかけないでどうする。
「シャルちゃんは今高校生?」
シャルは少し驚いた様子で頷いた。カノンはその答えを聞いて「そうかぁ、高校生なんだ。一番良い年頃
だよね。」と返した。その返答にシャルは疑問符を頭にたてながら、シャルの話の続きを待った。
「高校生って子供でも無ければ大人でもない、いわば中間なんだよ。そういう意味では社会と大きく関われるから自分の未来像を本格的に決めることも出来る。勉強・部活・アルバイト、中学では無かった選択がある。といっても実感するのはその高校時代を終わった後が多いんだけどね。」
その話を聞いてシャルは言葉を紡ぐ。
「私、、夢はあるんです。でもまだ、、悩んでいてそんな時、、両親と知り合いだったユーリさんのお店で働かないかというお誘いを受けたんです。口下手な私でも、、こういうお仕事につけば、、少しは改善できるかもしれない、、と思ったから。」
カノンはシャルの告白に驚いた。たぶん昔の自分ならそんなこと絶対しないと言い切れてしまったから。
カノンは無意識にシャルの両手を握っていた。
「シャルちゃんは偉いね。自分の苦手な部分と戦っている。真似できないことだよ。だから私はそれを応援する。そして辛くなったら遠慮なく弱音を吐いて良いんだよ。人は精神的に強い人ばかりじゃないから。」
その言葉を聞いたシャルは目に涙を潤わせてカノンの胸の中で嗚咽を零しながら泣いた。
嗚咽は少しの間で収まり、最後にシャルは「カノンさん、ありがとうございます。」と少し照れを残しはにかんだ。
その時のシャルの表情はカノンには忘れられないものとなった。
ここまで読んでくださりありがとうございます。人は誰しも心に何かしら抱いていると聞きます。
しかし人は時間をかけることでわかりあえる。理想論かもしれませんが、私はそう信じています。