第5話 一目惚れ…じゃないですよ
「社会的にだけどね」
そんな声が聞こえ、青ざめた顔で声のした方を見る。すると170cm程の身長の男の人が立っていた、胸につけているバッチから男の人は3年生だと解る。
「は?あんた何言ってんの?私らはこいつに常識ってもんを教えてるだけ、なぁ?」
いじめっ子Aがいじめっ子BとCに問いかけ、こっちを睨む。勿論いじめっ子BとCは「えぇ」「その通りです」と言った。
男の人が私に近づき、聞いてくる。
「君はどう思うんだ?人に死んでみる?とか聞くのが常識だと思う?」
私は思いっきり首を振った、すると男の人は私から離れ、いじめっ子Aに言う。
「とうの本人はこれは常識だと思わないようだが…?俺も常識とはとても思えない…警察沙汰になりたいんだったらもう少し、なにか話すけど…?なりたくないならわかるよな?」
男の人はそう言い、屋上を後にした、そしていじめっ子達はすぐに屋上から出ていき、私は1人屋上に取り残された。
口に貼られたガムテープをとり、大きくため息をついて「今日はもう帰ろう…」と言い家へと帰った。
それからは特に何も無く、普通に学校で生活をしていた。そして中学を卒業して、私は高校へ入った、中学の時に勉強をしっかりしていたおかげか推薦入学して、新入生代表の言葉を任された。
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聞いたことのあるような言葉を、適当に並べ挨拶の原稿を作る。それを教師に提出しokのサインを貰う。それを入学式で、話す…それだけだ。
私は、あの頃から人の顔を見るのが怖くなった、しかし代表の言葉はしっかりと言えた。
そして入学式から、教室へと移動する途中に私は思った、あの人もこの学校にいるのでは?と…放課後2年生の校舎へ行き、あの男の人を探していた、すると階段の方から大声で「結…結!」と聞こえた、悪いとは解っていてもなんだろうと思い隠れて盗み聞きしてしまった。とその時私の名前が呼ばれた、「新入生代表の天草凛って覚えてるか?」と…しかも、その声はあの日私を助けてくれた彼の声であった、そして彼はこう言った。
「いや、体育館でも教室でもずっと気がついたら 天草さんの事を考えていてな…」
え?…顔が熱くなるのを感じる、聞き間違いかもしれない、そう思い耳を傾け話の続きを聞く。すると結先輩?の友達が「それって一目惚れってやつじゃね?」と言った…やっぱり私の聞き間違いでは無かった。
多分今鏡で自分の顔を見たら耳まで真っ赤であろう。
そして重大な事に気がついた、今日は妹の誕生日なので3時には帰って来なさいと言われていたことに、そして今は2時30分、走れば間に合う、けれど…学校から帰るには下に下りる必要がある。
でも、下に行く階段1つしかなくて、その1つに彼らがいるんですけど…。