DH 暗闇の手 激動(第二部・番外編)
DH 暗闇の手 激動の巻(番外編)
新たなる幕開けと戦いの始まり(5)の藤原とハオと楊が新生中国に向けて出発している場面から。
「それではイザベル、リャンミオさん、スミスさん行ってきます」
「リャンミオ、イザベルさん行ってきます」
イザベルは不満そうにまだ何かを喋っているようだが密閉の高いエアーサンダーの中では聞き取れなかった。
やや顔色の優れないハオだったが窓越しに笑顔で手を振っていた。
(ここからはイザベルとリャンミオの会話)
「リャンミオさん、あの楊さんとかいう女性、私は嫌いなのですが」
「私もです」
リャンミオはまだエアーサンダーの去ったあとの開閉扉を睨んでいる。
「しかし、何かありそうなときは私がどうにかします」
イザベルはサラっとした口調で笑顔になった。
「イザベル様、まさかまた何か発明されたのですか?」
「はい、空間ステルスと内緒の機能を搭載しました」
「楊さんはお気づきになってはないようですがムーブで3人の会話も映像も見れるのですよね」
「いえ、お兄様はわざとムーブを鞄の奥にしまいこんでしまっているようで会話は聞こえますが映像は難しいですね」
「そうですか」
リャンミオの覇気のない返事が返ってくる。
「リャンミオさん、大丈夫です。これを差し上げます」
「これは小さなモニターのようですが」
リャンミオの手に渡されたのは携帯型のモニターのようだ。
「スイッチを入れてみられてください。画面に触れると起動します」
リャンミオがモニター画面を指で触れると画面が立ち上がる。
「これは」
リャンミオが驚いている。
「エアーサンダーに搭載した車内カメラです」
「イザベル様、いつの間に」
「これでお兄様の様子もハオさんの様子も一目瞭然です」
その言葉にリャンミオは言葉が出ない。
「イザベル様、この事は藤原さんにはお伝えしておられるのですか」
「もちろん内緒です。空間ステルスのこともお兄様のピンチが来る時までお伝えしないことにしています」
「その機能は先にお伝えしておいたほうがいいのでは」
「それではお兄様を甘やかしてしまいますので」
「なるほど」
「それにお兄様の判断力や行動力を分析するのも私の楽しみなのです」
「はぁ」
リャンミオには理解出来ない様子だ。
「リャンミオさんはお兄様のどこがお好きなのですか?」
イザベルの突然の切り返しの質問にリャンミオが戸惑う。
「どこでしょうか。多分あの方を見ていると笑顔になれる自分がいるのは確かなのですが」
「自分を冷静に分析できるのがリャンミオさんの凄いところなのですがそれは愛や恋というものと違うものではありませんか?」
「イザベル様は恋愛についてお詳しいのですか?」
「もちろんです。私は私を十分に分析した結果、私はブラコンだということが分かりました」
「私はその分析には同意できません」
「何故ですか?」
「それは」
そこからリャンミオは言葉を発しない。
「リャンミオさん、それは」
イザベルが気になって聞き返す。
「それよりも気になっていることがありますがここでは話せないことなので2人で話したいのですが」
「分かりました」
イザベルはリャンミオの言葉の意味を勘違いしているようだ。
イザベルが自分の部屋に招いたのもその勘違いのせいのようだ。
「リャンミオさん、大切なお話とはなんでしょう」
イザベルが珍しく緊張している。
「藤原さんのことなのですが」
「私は反対です」
リャンミオが最後まで話終える前にイザベルははっきりとした口調で答えた。
「イザベル様、日本のテロ事件の話なのですが」
イザベルは顔を真っ赤にして黙り込む。
「話の続きをしてもよろしいですか?」
「どうぞぅ」
すこしマゴマゴした口調でイザベルが返答した。
「何度か誰かにつけられていました」
真剣な顔でリャンミオが言う。
「それは私です」
真剣な顔でイザベルが答える。
「イザベル様、冗談を言われている場合ではありません」
リャンミオはイザベルの方を真剣な眼差しで見た。
「冗談ではありません」
イザベルもリャンミオの方を真剣な眼差しで見返す。
「この方でした」
リャンミオは自分で作成したと思われる資料をイザベルに出す。
「この方は守屋さんという方なのですか」
イザベルはリャンミオから渡された資料にじっくりと目を通す。
「イザベル様、見かけられたことはありますか?」
「私はありません。ただ、お兄様のムーブの映像記録を辿れば、映っている可能性はあります」
「そんなものがあるのですか」
「もちろんです」
自慢げにイザベルが答えた。
リャンミオはその発言で笑みをこぼした。
「リャンミオさん、笑っている場合ではありません。お兄様を狙うものを捕まえなくては」
「イザベル様、証拠が揃っていません」
「こういう時こそ、私の組織での立場を利用しましょう」
「イザベル様、それでは誤認であった場合、藤原さんに怒られます」
イザベルもリャンミオの言葉に納得したようだがすぐに自分の仕事用の椅子に腰掛けた。
「それでは、徹底的に調べますので15分ほどお待ちください。それからこの資料もお借りします」
イザベルは自分のシステムを使い、独自の捜査をやり始めた。
「私の思い違いであればよろしいのですが」
「その可能性の低さはリャンミオさんの作成された資料が物語っています」
イザベルは作業モードに入ったようだ。
「それから、この方は田中さんという方とも繋がっておられます」
「そのようですね。仲良く歩かれている映像が検索に掛かりました」
「これはいつ頃のものですか」
「田中さんがまだこの組織に入る前の映像だと思います」
「イザベル様のシステムではこのように鮮明に映し出されるのですね」
言葉とは裏腹にリャンミオの表情に驚きはなかった。
「このシステムには日本国民だけではなく、この国に訪問された方々のデータもすべて自動登録されています。整形されたとしても指紋、声紋、血液や骨盤のスキャナなどさまざまなスキャンを通り抜けることが出来なければこのプログラムの検索システムからは逃れることは出来ません。それに基づいて、本人と一致する80%前後の可能性のあるものを導きだします。その中からさらに高い可能性のものに振り分けられこの鮮明な映像は本人として99%の可能性のあるものを本人としてシステムが映像加工したものです」
「ということは映像にあるこの本人は鮮明には映し出された映像ではないということですか」
「そうです。このシステムは明確に本人と確定した上でまず頭部を作り出し、その頭部と上半身、下半身のデータが完全一致を検索し始めます。そのすべてが一致した場合にのみこのような映像として映し出されるようしました。あまり使用はしたくはないシステムなのですがお兄様の検索も出来ますので作成してみました」
「あまり使用したくないシステムなのですか。それはどうしてでしょうか?」
「人の中の悪魔の部分を映し出すことが多いので私は好きになれません」
「しかし、すべての人がそうというわけではありませんよね」
「私が検索しなければならない対象者はその可能性のある人になるので」
「イザベル様、考えずに発言しました。申し訳ありません」
「リャンミオさんのことも検索を掛けたのですが影でどれだけチャン首相やハオさんを守られてきたのか分かりました」
「先程国内と申されていませんでしたか?」
「私に不可能はないのです」
「私ではイザベル様には敵わないということが分かりました」
「守屋さんの検索を開始します」
イザベルはリャンミオの言葉に返答せずまた作業を始めた。
リャンミオはその姿に人とは違う何かを感じていたがそれは藤原に感じたものと同じものだった。
「やはりリャンミオさんの想像通りでした。すぐにスミスさんに連絡します」
焦った様子もなく淡々と冷静に話すイザベル。
「リャンミオさん、ありがとうございました。至急捕縛するようです」
「藤原さんに危険が及ぶことが無くてよかったです」
「それからリャンミオさん、私はあなたには敵いません。心が2つあれば1つは私のものにしたいのですが私はいつまで経っても妹としてしか思っていないようです」
「しかし、私はイザベル様のようにあの人の前では強くなれない」
「リャンミオさん、あなたのその弱さがお兄様の心に入り込むのです。私の分析したところによると男性は強い女性が自分にだけは見せる弱さに心を奪われるとのことです」
リャンミオが不思議な顔をしている。
しかしイザベルの分析は終わらない。
「それから唇を女性から奪う行為も男性の心を虜にするようです」
「あれは」
リャンミオが何かを言おうとしているがさらにイザベルの分析結果は終わらない。
「その様な清楚な姿をしておられるのにその衣服の中に隠された素晴らしいプロモーションも男性の心を惹き付ける武器の1つになるようです」
リャンミオは発言することを止めた。
「さらに」
イザベルがその続きを発言しようとしたとき、スミスから連絡が入った。
「守屋が自害しました。毒薬によるもので私達の動きに気付いたようです」
「そうでしたか」
イザベルの声が沈んでいる。
「イザベル様、申し訳ありません」
「スミスさん、ありがとうございました」
「これから守屋の住んでいた場所と部署を調べるように指示しましたので田中とどのような繋がりを持っていたのか分かってくると思います」
「分かりました。こちらもお手伝いできるようなことがあれば言ってください」
「分かりました。では、私は警護に戻ります」
イザベルの顔色が優れない。
「私はまた潜伏している人を探し出せなかった。しかもお兄様の身の回りは特別に強化しているはずだったのに」
リャンミオもそんなイザベルの表情を心配している。
「イザベル様、それが人というものです。私など自分のミスでハオ様を何度も危ない目に遭わせてしまったことか。自分も何度も死を意識した瞬間を経験しましたし」
「その経験があなたを強くしているのですね」
「そのはずでした」
「お兄様ですか」
「はい」
「お似合いです。でも、私もブラコンの妹としては負けるわけにはいきません」
「ブラコン?」
「はい究極の兄妹の愛の形だということです」
「また調べておきます」
真面目な顔をしてリャンミオがメモを取っている。
「ブラザーコンプレックスです」
イザベルが真面目な顔で補足する。
「ブラザーコンプレックスですね。分かりました。ハオ様のためにも詳しく調査させていただきます」
「リャンミオさん、あとはあの楊さんをあの二人から遠ざける方法を考えましょう」
「イザベル様、それは無理だと思いますが」
「何故無理なのでしょうか?私の立場をもってすれば。立場に頼らずにでしたね」
「はい」
「それから先程から楊さんがお兄様と親しくされていますが何かご伝言はありますか」
会話をしながらも二人はエアーサンダーの中の出来事と会話も気にしていた。
「半殺しくらいで許して差し上げますと言って下さい」
「私にも何か有無を言わせない言葉がないでしょうか?」
「イザベル様の場合、こういう時は立場を利用なさればいいのです」
「なるほど、分かりました」
「それでは私はスミスさんの部隊とは別の方法で見回って参ります。田中、守屋という方の他にもまだ怪しい方がおられるかもしれないので、何かあればすぐにムーブにご連絡ください」
「リャンミオさん、よろしくお願いします」
(その後の会話が新たなる幕開けと戦いの始まり(5)の会話に繋がる)
「お兄様無事に到着されたようですね」
「イザベル。お前こんな時に」
「楊さんと親しく会話をされていたようでリャンミオさんも私もじっくりと拝見させていただいておりました」
「中国の今後について真面目に話をしていただけだ」
「リャンミオさんから伝言がございます。無事に帰ってきたら半殺しさせていただきますとの事です」
「無事に帰ってこれたら覚悟しておきますと伝えてくれ」
「それから私からは無事に帰ってこなければ私が世界を崩壊に導く恐れがありますのでご注意ください」
「おいおい、物騒なことを言うな」
「お兄様のいない世界など私には必要ありません。というのは冗談です。リャンミオさんにアドバイスをいただきました」
「冗談か。お前がいうと本気にしか取れないがリャンミオさんのお怒りは本物だということがよく分かりました」
何故か言葉が丁寧になっている藤原。
「ハオ様、藤原さん。私はこちらでお待ちしております」
リャンミオはそれだけ言うと警護に戻ったらしい。
「リャンミオ」
「リャンミオさん」
ハオと藤原の目に力が入る。
「それでは私はいつでも見ておりますので。追加された機能も楽しみにしてください」
「分かった。イザベル、お前も気をつけるんだぞ」
「こちらは大丈夫です。私の再構築したセキュリティシステムで万全な構えで備えていますので」
「そうだったな。それにリャンミオさんやスミスさんがいればもしもの時も大丈夫だな」
「はい」
「こっちのほうも安全の確認は取れたのでそろそろステルス機能を解除する」
「分かりました。ハオさんが無理しないように楊さん宜しくお願いします」
「承知しました」




